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二人
小さな邦陽
先に休暇に入っていた邦陽に案内されて、着いた家は海側の小さな古びた一戸建てだった。
庭が手入れされてなくて枝木が生い茂り、草ぼうぼうだった。
表門の木戸を潜ると春臣が、ガタピシさせて玄関の引き戸を開けている。
「この家、建て付けが悪いな。修繕かリフォームしたら」
「古いからね。歪みがでてる」
「お前には思い出の家かもしれないけど、ボロ屋にしか思えない」
「思い出なんか無いよ。憶えてないし」
「親のことは? 」
「憶えてないよ。ばあちゃん位かな。うっすら印象が残ってる」
建物内の一通りの探索が済んで、居間で休憩していたら鞄の中身を思い出した。
「ああ、そうだ。他に渡したいものがあった」
「前言ってた旨い酒? 」
「いや、お袋から預かってきた。お前のだって」
邦陽に厚手のビニールの袋に入ったものを押し付けた。
「小母さんに、ここに来るって言ってるんだ? 」
「まぁ、しばらくこっちに居るつもりだし。一応な」
「そういうところはまだ良い子なんだ」
邦陽は揶揄するが実はちょっと違う。
「親父もあんなだったし、俺もこんなだし。譲れるところは良い子でいようと思ってる」
夫は不倫三昧に隠し子発覚。
息子はその隠し子と発展中。
いくらなんでも知ったら卒倒するんじゃないかと思う。
まあ、知らない女の子より男の方が嫉妬はされない気がする。
邦陽はふーんと言いながら、袋から中身を取り出した。
「何これ、日記みたいだ」
「親父の日記だ。叔母さん、お前の母親の事が書いてある。勝手な親父の思い込みかもしれないけど、結構せつない」
「えー何か重い。一緒に見てってよ」
親父が異母妹と会った時の衝撃。
お互い家庭を持った後での過ち。
どうでもいいと思ってた男の隠された思い。勝手な妄想交じりかもしれないけど切なかった。
この休暇の間に一緒に読んで二人で語り合いたいと思った。
「そういえば、小父さんと二人だけで食事に行ったことがあった。俺の顔ばかり見てた」
「何か思うことがあったんだろうな」
親父は邦陽の顔の中に何を見出していたのだろうか。
「なんで俺の顔ばかり、見てくんの」
「今思ったんだけど、お前がどんな本が好きとか、どんな音楽が好きだとか、どんなものが好きなのか殆ど知らない」
「やってるだけで、ほとんど話ししなかったから。昔は俺に興味無かっただろ」
成長した邦陽は全く鈍くない。
むしろ鋭すぎて刺さりまくる。
「……お前こんなところに黒子あったっけ? 」
「話しを逸らしたな」
邦陽に仕返しとばかりにわき腹をくすぐられた。
止めて。
腹は止めて。
「はぁ、まぁ、いろいろ教えてよ」
「わかった」
向き合わなかった時間、離れていた時間、無駄に過ごしてしまった時間を取り戻すかのように、つかの間の休暇中の俺たちは家の手入れをして、しゃべりまくって、遊びまくって、抱き合った。
時折見える小さな邦陽は、嬉しそうに見えた。
仲良くするのは意外と簡単だった気がする。
今だったら頭を撫でて髪をぐしゃぐしゃにするかな。
そう思うと小さな邦陽がぶうたれたような顔した気がした。
庭が手入れされてなくて枝木が生い茂り、草ぼうぼうだった。
表門の木戸を潜ると春臣が、ガタピシさせて玄関の引き戸を開けている。
「この家、建て付けが悪いな。修繕かリフォームしたら」
「古いからね。歪みがでてる」
「お前には思い出の家かもしれないけど、ボロ屋にしか思えない」
「思い出なんか無いよ。憶えてないし」
「親のことは? 」
「憶えてないよ。ばあちゃん位かな。うっすら印象が残ってる」
建物内の一通りの探索が済んで、居間で休憩していたら鞄の中身を思い出した。
「ああ、そうだ。他に渡したいものがあった」
「前言ってた旨い酒? 」
「いや、お袋から預かってきた。お前のだって」
邦陽に厚手のビニールの袋に入ったものを押し付けた。
「小母さんに、ここに来るって言ってるんだ? 」
「まぁ、しばらくこっちに居るつもりだし。一応な」
「そういうところはまだ良い子なんだ」
邦陽は揶揄するが実はちょっと違う。
「親父もあんなだったし、俺もこんなだし。譲れるところは良い子でいようと思ってる」
夫は不倫三昧に隠し子発覚。
息子はその隠し子と発展中。
いくらなんでも知ったら卒倒するんじゃないかと思う。
まあ、知らない女の子より男の方が嫉妬はされない気がする。
邦陽はふーんと言いながら、袋から中身を取り出した。
「何これ、日記みたいだ」
「親父の日記だ。叔母さん、お前の母親の事が書いてある。勝手な親父の思い込みかもしれないけど、結構せつない」
「えー何か重い。一緒に見てってよ」
親父が異母妹と会った時の衝撃。
お互い家庭を持った後での過ち。
どうでもいいと思ってた男の隠された思い。勝手な妄想交じりかもしれないけど切なかった。
この休暇の間に一緒に読んで二人で語り合いたいと思った。
「そういえば、小父さんと二人だけで食事に行ったことがあった。俺の顔ばかり見てた」
「何か思うことがあったんだろうな」
親父は邦陽の顔の中に何を見出していたのだろうか。
「なんで俺の顔ばかり、見てくんの」
「今思ったんだけど、お前がどんな本が好きとか、どんな音楽が好きだとか、どんなものが好きなのか殆ど知らない」
「やってるだけで、ほとんど話ししなかったから。昔は俺に興味無かっただろ」
成長した邦陽は全く鈍くない。
むしろ鋭すぎて刺さりまくる。
「……お前こんなところに黒子あったっけ? 」
「話しを逸らしたな」
邦陽に仕返しとばかりにわき腹をくすぐられた。
止めて。
腹は止めて。
「はぁ、まぁ、いろいろ教えてよ」
「わかった」
向き合わなかった時間、離れていた時間、無駄に過ごしてしまった時間を取り戻すかのように、つかの間の休暇中の俺たちは家の手入れをして、しゃべりまくって、遊びまくって、抱き合った。
時折見える小さな邦陽は、嬉しそうに見えた。
仲良くするのは意外と簡単だった気がする。
今だったら頭を撫でて髪をぐしゃぐしゃにするかな。
そう思うと小さな邦陽がぶうたれたような顔した気がした。
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