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打たねば鳴らぬ-1
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解散、という声と共に賑やかさを取り戻した室内でひっそりと息を吐き出した。
引き継ぎといっても今日は大まかなスケジュールや仕事の確認程度で、時間にしたら三十分も経っていない。特別気を引き締める必要もないのだけれど、個人的な理由から集中力を欠いてしまったが故の気疲れがどっと体を襲う。
にこやかに手を振る双子へ手を振りかえし、のろのろと支度をする。早く出なければ、という思いは隅の方にあるものの、他にリソースを割きすぎてそこまで頭が回らない。
不意に隣の椅子が引かれて、誰かが腰を下ろした。
ハッとして周囲を見回すと、目に映る範囲には誰もいない。残っているのは自分と隣にいる人物だけのようだった。
「お疲れ」
低い、けれど爽やかな声が耳に届いてぎくりと体が強張る。振り向く必要もない。顔を向けながら慌てて立ち上がる。
「す、すいません! すぐ出ます!」
「ああいや、そういうわけじゃない」
そこに座っている人物、永瀬は悪い悪いと軽い調子で笑って手を振る。
「ちょっと話したくて。昨日は時間なかったし」
「はあ……」
そう言われてしまうと拒否することもできず、立ち上がったばかりの椅子に腰を下ろす。勢いで少し後ろにずれたオレの方を向くように、永瀬が軽く椅子を引く。
「改めて、昨日はごめんな。いきなり仕事おしつけて」
「いえ、全然……! 結果的に、オレが行ってよかったのかもなと思ったんで」
「どうして?」
「顔合わせができて役職も共有できて、そのまま解散になったんで。時短になったのかなって」
永瀬はきょとんと目を丸くして、ふ、とふき出した。
「ふ、ははは! あー、うん……、く、ふはっ」
「え、え? 先輩?」
今度はこちらがきょとんとする番だった。突然笑い出したのにあっけにとられているうちに、笑いの波が落ち着いたらしい永瀬は大きく息を吐き出す。
「あー、ごめんな。重ね重ね。でも、真柴でよかったよ」
「……それなら、よかったっす」
「本来は全員集まらないといけないんだけどな」
それはそうだろう。ため息混じりに言う永瀬から、これまで経験した数々の苦労が垣間見えた気がした。
「で、生徒会メンバーはどうだ? 上手くやっていけそうか?」
「そうですね」
頷きながら、昨日今日と顔を合わせたメンバーを思い浮かべる。合う合わないは相性の問題があるものだが、上手く付き合っていくという面で見る場合、それは結局自分次第だ。
永瀬は少しばかり目を瞠って、それから柔らかく相槌を打った。
「そうか。結構癖強いのが揃ってるから心配だったけど、それならよかった」
そういえば、と思い出す。昨日の昼、白鷺に呼び出された時のことだ。彼は個性的な生徒が集まったと言っていた。その中でも特に厄介なのが皇だ、とも。後者にはある程度納得できたけれど、他のメンバーにはあまり当てはまらないように思えたので気にしていなかったのだが。
「あの、そんなに個性が強い感じなんすか?」
「他のメンバーがってこと?」
永瀬はそうだなあ、と視線を斜め上へやりながら顎に手を当てている。
「基本的に個人の感じ方次第だからな。変わってるとか扱いづらいとか思うのは」
「それは……、そっすね」
「それに、知り合ったばかりなら、付き合っていくうちに印象が変わることもあるだろ」
小刻みに頷くと「真柴もさ」と名前を出されて反射的に返事をする。
「そういうとこ。ぱっと見やんちゃしてそうだけど、意外と礼儀正しいというか、律儀な子だなーと思ったし」
「あー……」
自覚があるだけに否定はできない。というか、言っていることにいちいち納得できる。
「まあだから、俺がどう思うかより、真柴がどう思うかが大事だろって話」
永瀬は穏やかに微笑んでそう言った。
引き継ぎといっても今日は大まかなスケジュールや仕事の確認程度で、時間にしたら三十分も経っていない。特別気を引き締める必要もないのだけれど、個人的な理由から集中力を欠いてしまったが故の気疲れがどっと体を襲う。
にこやかに手を振る双子へ手を振りかえし、のろのろと支度をする。早く出なければ、という思いは隅の方にあるものの、他にリソースを割きすぎてそこまで頭が回らない。
不意に隣の椅子が引かれて、誰かが腰を下ろした。
ハッとして周囲を見回すと、目に映る範囲には誰もいない。残っているのは自分と隣にいる人物だけのようだった。
「お疲れ」
低い、けれど爽やかな声が耳に届いてぎくりと体が強張る。振り向く必要もない。顔を向けながら慌てて立ち上がる。
「す、すいません! すぐ出ます!」
「ああいや、そういうわけじゃない」
そこに座っている人物、永瀬は悪い悪いと軽い調子で笑って手を振る。
「ちょっと話したくて。昨日は時間なかったし」
「はあ……」
そう言われてしまうと拒否することもできず、立ち上がったばかりの椅子に腰を下ろす。勢いで少し後ろにずれたオレの方を向くように、永瀬が軽く椅子を引く。
「改めて、昨日はごめんな。いきなり仕事おしつけて」
「いえ、全然……! 結果的に、オレが行ってよかったのかもなと思ったんで」
「どうして?」
「顔合わせができて役職も共有できて、そのまま解散になったんで。時短になったのかなって」
永瀬はきょとんと目を丸くして、ふ、とふき出した。
「ふ、ははは! あー、うん……、く、ふはっ」
「え、え? 先輩?」
今度はこちらがきょとんとする番だった。突然笑い出したのにあっけにとられているうちに、笑いの波が落ち着いたらしい永瀬は大きく息を吐き出す。
「あー、ごめんな。重ね重ね。でも、真柴でよかったよ」
「……それなら、よかったっす」
「本来は全員集まらないといけないんだけどな」
それはそうだろう。ため息混じりに言う永瀬から、これまで経験した数々の苦労が垣間見えた気がした。
「で、生徒会メンバーはどうだ? 上手くやっていけそうか?」
「そうですね」
頷きながら、昨日今日と顔を合わせたメンバーを思い浮かべる。合う合わないは相性の問題があるものだが、上手く付き合っていくという面で見る場合、それは結局自分次第だ。
永瀬は少しばかり目を瞠って、それから柔らかく相槌を打った。
「そうか。結構癖強いのが揃ってるから心配だったけど、それならよかった」
そういえば、と思い出す。昨日の昼、白鷺に呼び出された時のことだ。彼は個性的な生徒が集まったと言っていた。その中でも特に厄介なのが皇だ、とも。後者にはある程度納得できたけれど、他のメンバーにはあまり当てはまらないように思えたので気にしていなかったのだが。
「あの、そんなに個性が強い感じなんすか?」
「他のメンバーがってこと?」
永瀬はそうだなあ、と視線を斜め上へやりながら顎に手を当てている。
「基本的に個人の感じ方次第だからな。変わってるとか扱いづらいとか思うのは」
「それは……、そっすね」
「それに、知り合ったばかりなら、付き合っていくうちに印象が変わることもあるだろ」
小刻みに頷くと「真柴もさ」と名前を出されて反射的に返事をする。
「そういうとこ。ぱっと見やんちゃしてそうだけど、意外と礼儀正しいというか、律儀な子だなーと思ったし」
「あー……」
自覚があるだけに否定はできない。というか、言っていることにいちいち納得できる。
「まあだから、俺がどう思うかより、真柴がどう思うかが大事だろって話」
永瀬は穏やかに微笑んでそう言った。
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