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同じて和せず-1
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「ちょうどよかった。真柴、ちょっといい?」
白鷺に呼ばれたのは、一日の半分以上を終えた昼休みのことだった。購買の惣菜パンを食べ切った頃、教室の前扉から顔を出した白鷺がこちらを見て手招きしている。
一体なんだろうと不思議に思いつつ、一緒にいた二人に手を振って教室を出る。促されるまま廊下の端まで来ると、白鷺は軽く周囲を見回してから口を開いた。
「生徒会の集まり、今日でしょう。大丈夫そう?」
「あー、はい。まあなんとか」
「本当はもっと早く声かけられたらよかったんだけど、ごめんね」
「……先生が謝ることはないんじゃ?」
急な謝罪に首を傾げていると、白鷺は小さく苦笑をこぼす。
「一応、生徒会の顧問なのよ」
「へ?」
初耳だった。そもそも生徒会に顧問がいることすら知らなかった。ただまあ、考えてみれば確かに生徒会とはいえ、生徒だけで運営させるわけはないだろう。学校である以上、どこだって教師の監督は必要だ。
「今日は顔合わせくらいだし、大した問題はないと思うけど。何かあったら遠慮なく言いなさい」
「ありがとうございます」
「真柴のことはあまり心配してないんだけど、周りがね……」
白鷺はどこか遠くを見ながら呟く。
「今の生徒会もなかなかだけど、また個性的なのが集まっちゃったから」
「個性的?」
「……まあ、すぐにわかるでしょう。顧問としては、アンタみたいな子がいてくれて安心したわ」
頑張ってね、と軽く肩を叩かれた。激励のつもりだとは思うが、不安を煽っているように感じるのは考えすぎだろうか。
「あの、ひとつ聞いてもいいですか?」
「なに?」
「新生徒会役員の中で、先生が思う一番個性的な人って誰ですか?」
「……難しい質問ね」
白鷺は難しい顔をして腕を組んだ。そんなに難しい質問だったろうか。確かに主観が大いに含まれる言葉ではあるし、だからこそ質問したのだけれど。
「でも、一番と言われたら皇か」
「皇……って、副会長の?」
「ええ。教師としては一番厄介なタイプね」
「そういう意味の個性的ですか?」
「……個性的は個性的よ」
やや面倒臭そうにため息混じりでそう言うと、ひらりと手を振って踵を返す。
「ま、色んなタイプがいるから頑張りなさい」
結局、それを言いたかっただけなのだろうか。わざわざ呼び出すほどの用件とも思えないのだが……。いまいち意図がつかめないまま、鳴り始めた予鈴の音を背景に颯爽と去っていく白鷺の後ろ姿を見送った。
教室に戻ると、湊と辰巳はまだオレの席で駄弁っているようだった。
「おかえり」
「おー、ただいま」
「先生なんだって?」
人の席を占領したまま机に突っ伏している湊が顔だけ上げて聞いてくる。
「生徒会頑張れよって」
「それだけ?」
「それだけ」
難しい顔をした湊は、もしかしたら数分前の自分と同じようなことを思っているのかもしれない。思わず笑ってしまったオレを見て湊が眉を寄せた。
「なに」
「いや、なんでミナがそんな顔すんだろって思って」
「……別に」
それきり口をつぐんだ湊はそのまま自分の席へ戻っていった。
「どうしたんだ、あれ」
ようやく空いた席に腰を下ろして前に座る辰巳を見れば、なんとも言い難い笑みを浮かべていた。
「心配なんだよ、湊も」
「……オレ、そんな信用ない?」
「信用してるから口に出さないんじゃない」
「ふーん?」
思ったことを口に出さないのが信用によるものなら、聞きたいことは直接聞けばいいのに、と思ってしまうのは信用していないことになるのだろうか。どうにも納得いかなくて眉根が寄っていくのが分かる。頭上でふっと息が漏れたのを感じて視線を上げると、緩やかに微笑む辰巳がこちらを見ていた。
「なんだよ」
「なんだかんだ似たもの同士だよね」
「……」
「口尖ってるよ」
「……うるせー」
考えながら自分でも感じたことを、そのまま言われてしまうと返す言葉もない。捨て台詞とともに顔を背けたのと同時に授業開始の鐘が鳴った。
白鷺に呼ばれたのは、一日の半分以上を終えた昼休みのことだった。購買の惣菜パンを食べ切った頃、教室の前扉から顔を出した白鷺がこちらを見て手招きしている。
一体なんだろうと不思議に思いつつ、一緒にいた二人に手を振って教室を出る。促されるまま廊下の端まで来ると、白鷺は軽く周囲を見回してから口を開いた。
「生徒会の集まり、今日でしょう。大丈夫そう?」
「あー、はい。まあなんとか」
「本当はもっと早く声かけられたらよかったんだけど、ごめんね」
「……先生が謝ることはないんじゃ?」
急な謝罪に首を傾げていると、白鷺は小さく苦笑をこぼす。
「一応、生徒会の顧問なのよ」
「へ?」
初耳だった。そもそも生徒会に顧問がいることすら知らなかった。ただまあ、考えてみれば確かに生徒会とはいえ、生徒だけで運営させるわけはないだろう。学校である以上、どこだって教師の監督は必要だ。
「今日は顔合わせくらいだし、大した問題はないと思うけど。何かあったら遠慮なく言いなさい」
「ありがとうございます」
「真柴のことはあまり心配してないんだけど、周りがね……」
白鷺はどこか遠くを見ながら呟く。
「今の生徒会もなかなかだけど、また個性的なのが集まっちゃったから」
「個性的?」
「……まあ、すぐにわかるでしょう。顧問としては、アンタみたいな子がいてくれて安心したわ」
頑張ってね、と軽く肩を叩かれた。激励のつもりだとは思うが、不安を煽っているように感じるのは考えすぎだろうか。
「あの、ひとつ聞いてもいいですか?」
「なに?」
「新生徒会役員の中で、先生が思う一番個性的な人って誰ですか?」
「……難しい質問ね」
白鷺は難しい顔をして腕を組んだ。そんなに難しい質問だったろうか。確かに主観が大いに含まれる言葉ではあるし、だからこそ質問したのだけれど。
「でも、一番と言われたら皇か」
「皇……って、副会長の?」
「ええ。教師としては一番厄介なタイプね」
「そういう意味の個性的ですか?」
「……個性的は個性的よ」
やや面倒臭そうにため息混じりでそう言うと、ひらりと手を振って踵を返す。
「ま、色んなタイプがいるから頑張りなさい」
結局、それを言いたかっただけなのだろうか。わざわざ呼び出すほどの用件とも思えないのだが……。いまいち意図がつかめないまま、鳴り始めた予鈴の音を背景に颯爽と去っていく白鷺の後ろ姿を見送った。
教室に戻ると、湊と辰巳はまだオレの席で駄弁っているようだった。
「おかえり」
「おー、ただいま」
「先生なんだって?」
人の席を占領したまま机に突っ伏している湊が顔だけ上げて聞いてくる。
「生徒会頑張れよって」
「それだけ?」
「それだけ」
難しい顔をした湊は、もしかしたら数分前の自分と同じようなことを思っているのかもしれない。思わず笑ってしまったオレを見て湊が眉を寄せた。
「なに」
「いや、なんでミナがそんな顔すんだろって思って」
「……別に」
それきり口をつぐんだ湊はそのまま自分の席へ戻っていった。
「どうしたんだ、あれ」
ようやく空いた席に腰を下ろして前に座る辰巳を見れば、なんとも言い難い笑みを浮かべていた。
「心配なんだよ、湊も」
「……オレ、そんな信用ない?」
「信用してるから口に出さないんじゃない」
「ふーん?」
思ったことを口に出さないのが信用によるものなら、聞きたいことは直接聞けばいいのに、と思ってしまうのは信用していないことになるのだろうか。どうにも納得いかなくて眉根が寄っていくのが分かる。頭上でふっと息が漏れたのを感じて視線を上げると、緩やかに微笑む辰巳がこちらを見ていた。
「なんだよ」
「なんだかんだ似たもの同士だよね」
「……」
「口尖ってるよ」
「……うるせー」
考えながら自分でも感じたことを、そのまま言われてしまうと返す言葉もない。捨て台詞とともに顔を背けたのと同時に授業開始の鐘が鳴った。
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