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IFルート 絶望的な運命に立ち向かうダークファンタジー
IF早過ぎたラグナロク5話 3級神消失事件1
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私はヴェルザンディ。2級神で現在を司る女神だ。
神界では治安維持部隊の隊長を務めている。この世界が平和だから、私の仕事は基本的に見回りをするだけ。でも、最近その「平和」という前提が少しずつ崩れはじめている。
人間界のように殺人事件などの凶悪犯罪が起きることは、神界ではほとんど考えられない。寿命という概念がない神々にとって、わざわざ他者を殺す動機など普通は生じないからだ。とはいえ、まったく例外がないわけでもない。フレイア様とエリカ――この2柱だけは危険なほどの攻撃性を持っていると思う。
フレイア様の場合、自分の正義に反するものに対して一切容赦がない。その性格ゆえに、粛正された神もいたらしい。
そしてエリカ。3級神なのにどこか偉そうで、すぐに刀を抜こうとする悪癖がある。いつか本当に誰かを殺してしまいそうで、見ているこちらがひやひやする。もっとも、エリカが“人間”の頃に比べれば、大分温和になったのは事実だが……。
なぜなら、人間だったときのエリカは、いまの姿が想像もできないほどの圧倒的な強さと、強力な道具を駆使していた。そして何より恐ろしいまでの冷酷さを醸し出していた。スクルドは強さにしか目を向けていなかったみたいだが、私にはエリカが秘める“邪悪さ”のほうが不気味に映ったものだ。
大魔族アスタロテも恐るべき脅威だったが、エリカはそれを超えるほどの存在に感じられた。わずか12歳という年齢で、どれだけの命を奪ってあの“邪悪さ”を身につけたのか――その異世界がどれほど恐ろしい場所なのか想像もつかない。
だからこそ、エリカが異世界に帰ったと聞いたとき、私は心底ほっとした。あのまま人間界にとどまっていたら、アスタロテ以上の脅威になっていたかもしれないし、ひょっとすると神界にとっても大きな害になる恐れすらあったからだ。私はバルキリーとして多くの英雄を見てきたが、エリカほど規格外の存在はいなかった。
ところが、そんなエリカは再び私の目の前に現れた――女神として。
幸いなことに、人間の頃の記憶を失っているようで、あの邪悪さは消え去っていた。魔族以外に、生まれた瞬間から邪悪な者などいないのだろう。それなら、あの邪悪な心を持たないように導けばいい。スクルドがその役目を担っているわけだが、正直、私はまだエリカを完全には信用できていない。
この平和な神界が、いまおかしな様相を呈している。いつもふらふらしていたユーミルが行方不明になったのだ。目が見えないから迷子になる可能性はあるかもしれないが、これまでこんなに長い不在はなかった。私が町を探し、スクルドには町の外を探してもらったが、一向に手がかりすら見つからない。
可能性としては世界樹の森で迷っているか、あるいは誤って大陸の端から落ちたかだ。どちらにせよ、神界から神が消えるなんてそうある話ではない。オーディン様をはじめ、周囲が黙っているはずがない。
場合によっては、ウルド姉様に過去視で調べてもらうしかないのかもしれない。だが、あの能力の使用には相応の負担がかかるので、そう易々とは頼めない。私自身も「遠見」の能力を持っているが、かなり消耗する。
遠くを見通すほど負担が大きくなるし、ユーミル捜索のためにかなり使ってしまったせいで、いまはひどく消耗していた。
「ふう……」
治安維持部隊の詰所で、私は木製の椅子に腰を下ろしてため息をつく。いまは昼時で、ほかの隊員はすでに巡回に出ている。ユーミルは依然見つからない。次はどこを探すべきか――頭を悩ませていた、そのときだ。
「隊長、大変です! 3級神がいません!」
焦りとともに駆け込んできた隊員を見て、私は嫌な胸騒ぎを覚える。
いま神界ではユーミル行方不明という不穏要素がすでにあるが、この報せはそれをさらに上回る何かを予感させる。
「誰がいなくなったのだ?」
私が問いただすと、隊員は深刻そうな顔で答えた。
「町の3級神が誰もいません! 探しても、区画に1柱もいないんです!」
「は? そんな事ありえんだろう!」
一瞬、耳を疑う。嘘だろう、と言いかけるが、隊員は真剣な目で首を横に振る。
昨日の夜までいつも通りだったのに、今日の朝になってみたら誰もいないという。頭がぐらりと揺れた。
「何……だと……?」
ユーミルどころの話ではない。3級神たちが一晩で一斉に姿を消すなど、神界の歴史でも聞いたことがない大事件だ。
私は震える足取りを奮い立たせ、部下を連れて3級神の区画へ走った。
---
「ここもダメか……」
何軒目だろう。どの家を覗いても、人影すら見当たらない。まるで時間が止まってしまったようだ。昨日までは通りを歩けば、活気ある売り声や雑談が飛び交っていたはず。それが一夜にして消え去った――嫌な冷気が背筋を這いまわる。
「一体何が起きているんだ?」
口に出してみても、当然誰も答えない。静まり返った区画には、生活の痕跡だけが残っていて、神々だけが忽然と消えている。
別の隊員がやって来て報告をくれるが、どこを探しても誰もいないという結果ばかりだ。食料を売っていた神も、道具を売っていた神も、馴染みの顔も――皆が一夜にしていなくなるなんて。
原初の時から、神界でこんな事件が起こるなど前代未聞だ。考えられるのは魔族の仕業だろうか?
3級神を一晩で消すなんて、大胆な手口としか思えないが、ただ痕跡がまるでないのが腑に落ちない。捕らえたのか殺したのか、それすらもわからない。
私は必死に頭を働かそうとするが、もともとそこまで頭が切れる方ではない。姉のウルドなら、もっと合理的に推理して手がかりを見つけるかもしれない。そして、妹のスクルドは優しくて、周囲を助けるのが得意だ。しかし、こういう捜査には向いていないだろう。
(正直、私の手には負えないかもしれない……)
これは完全に私の手に余る事件だ。こうなると、ウルド姉様に知恵を借りるしかない。場合によっては過去視を頼んででも真相を暴かねばならないだろう。ユーミルも行方不明のままだし、これほど短期間に神々が連続して消えるなんて尋常ではない。
「待てよ……エリカは無事なのか?」
私の脳裏に、あの生意気な女神の顔が浮かぶ。なにしろ3級神だ。もしエリカまで消えてしまっていたら、スクルドがどれほど悲しむことだろう。
私は隊員たちを町の調査に残したまま、単独で空を飛んでエリカの家へ向かうことにした。
広がる神界の空は今日も白く澄みきっているはずなのに、私の視界には不吉な闇がちらついているようだった。まさかこんな事件が起こるなんて――まるで悪夢を見ているかのような感覚に、胸が苦しくなる。
(どうか、無事でいてくれ……)
そう祈るような気持ちで、私は速度を上げる。エリカの家がある郊外へと、ひたすらに風を切りながら飛んでいった。
神界では治安維持部隊の隊長を務めている。この世界が平和だから、私の仕事は基本的に見回りをするだけ。でも、最近その「平和」という前提が少しずつ崩れはじめている。
人間界のように殺人事件などの凶悪犯罪が起きることは、神界ではほとんど考えられない。寿命という概念がない神々にとって、わざわざ他者を殺す動機など普通は生じないからだ。とはいえ、まったく例外がないわけでもない。フレイア様とエリカ――この2柱だけは危険なほどの攻撃性を持っていると思う。
フレイア様の場合、自分の正義に反するものに対して一切容赦がない。その性格ゆえに、粛正された神もいたらしい。
そしてエリカ。3級神なのにどこか偉そうで、すぐに刀を抜こうとする悪癖がある。いつか本当に誰かを殺してしまいそうで、見ているこちらがひやひやする。もっとも、エリカが“人間”の頃に比べれば、大分温和になったのは事実だが……。
なぜなら、人間だったときのエリカは、いまの姿が想像もできないほどの圧倒的な強さと、強力な道具を駆使していた。そして何より恐ろしいまでの冷酷さを醸し出していた。スクルドは強さにしか目を向けていなかったみたいだが、私にはエリカが秘める“邪悪さ”のほうが不気味に映ったものだ。
大魔族アスタロテも恐るべき脅威だったが、エリカはそれを超えるほどの存在に感じられた。わずか12歳という年齢で、どれだけの命を奪ってあの“邪悪さ”を身につけたのか――その異世界がどれほど恐ろしい場所なのか想像もつかない。
だからこそ、エリカが異世界に帰ったと聞いたとき、私は心底ほっとした。あのまま人間界にとどまっていたら、アスタロテ以上の脅威になっていたかもしれないし、ひょっとすると神界にとっても大きな害になる恐れすらあったからだ。私はバルキリーとして多くの英雄を見てきたが、エリカほど規格外の存在はいなかった。
ところが、そんなエリカは再び私の目の前に現れた――女神として。
幸いなことに、人間の頃の記憶を失っているようで、あの邪悪さは消え去っていた。魔族以外に、生まれた瞬間から邪悪な者などいないのだろう。それなら、あの邪悪な心を持たないように導けばいい。スクルドがその役目を担っているわけだが、正直、私はまだエリカを完全には信用できていない。
この平和な神界が、いまおかしな様相を呈している。いつもふらふらしていたユーミルが行方不明になったのだ。目が見えないから迷子になる可能性はあるかもしれないが、これまでこんなに長い不在はなかった。私が町を探し、スクルドには町の外を探してもらったが、一向に手がかりすら見つからない。
可能性としては世界樹の森で迷っているか、あるいは誤って大陸の端から落ちたかだ。どちらにせよ、神界から神が消えるなんてそうある話ではない。オーディン様をはじめ、周囲が黙っているはずがない。
場合によっては、ウルド姉様に過去視で調べてもらうしかないのかもしれない。だが、あの能力の使用には相応の負担がかかるので、そう易々とは頼めない。私自身も「遠見」の能力を持っているが、かなり消耗する。
遠くを見通すほど負担が大きくなるし、ユーミル捜索のためにかなり使ってしまったせいで、いまはひどく消耗していた。
「ふう……」
治安維持部隊の詰所で、私は木製の椅子に腰を下ろしてため息をつく。いまは昼時で、ほかの隊員はすでに巡回に出ている。ユーミルは依然見つからない。次はどこを探すべきか――頭を悩ませていた、そのときだ。
「隊長、大変です! 3級神がいません!」
焦りとともに駆け込んできた隊員を見て、私は嫌な胸騒ぎを覚える。
いま神界ではユーミル行方不明という不穏要素がすでにあるが、この報せはそれをさらに上回る何かを予感させる。
「誰がいなくなったのだ?」
私が問いただすと、隊員は深刻そうな顔で答えた。
「町の3級神が誰もいません! 探しても、区画に1柱もいないんです!」
「は? そんな事ありえんだろう!」
一瞬、耳を疑う。嘘だろう、と言いかけるが、隊員は真剣な目で首を横に振る。
昨日の夜までいつも通りだったのに、今日の朝になってみたら誰もいないという。頭がぐらりと揺れた。
「何……だと……?」
ユーミルどころの話ではない。3級神たちが一晩で一斉に姿を消すなど、神界の歴史でも聞いたことがない大事件だ。
私は震える足取りを奮い立たせ、部下を連れて3級神の区画へ走った。
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「ここもダメか……」
何軒目だろう。どの家を覗いても、人影すら見当たらない。まるで時間が止まってしまったようだ。昨日までは通りを歩けば、活気ある売り声や雑談が飛び交っていたはず。それが一夜にして消え去った――嫌な冷気が背筋を這いまわる。
「一体何が起きているんだ?」
口に出してみても、当然誰も答えない。静まり返った区画には、生活の痕跡だけが残っていて、神々だけが忽然と消えている。
別の隊員がやって来て報告をくれるが、どこを探しても誰もいないという結果ばかりだ。食料を売っていた神も、道具を売っていた神も、馴染みの顔も――皆が一夜にしていなくなるなんて。
原初の時から、神界でこんな事件が起こるなど前代未聞だ。考えられるのは魔族の仕業だろうか?
3級神を一晩で消すなんて、大胆な手口としか思えないが、ただ痕跡がまるでないのが腑に落ちない。捕らえたのか殺したのか、それすらもわからない。
私は必死に頭を働かそうとするが、もともとそこまで頭が切れる方ではない。姉のウルドなら、もっと合理的に推理して手がかりを見つけるかもしれない。そして、妹のスクルドは優しくて、周囲を助けるのが得意だ。しかし、こういう捜査には向いていないだろう。
(正直、私の手には負えないかもしれない……)
これは完全に私の手に余る事件だ。こうなると、ウルド姉様に知恵を借りるしかない。場合によっては過去視を頼んででも真相を暴かねばならないだろう。ユーミルも行方不明のままだし、これほど短期間に神々が連続して消えるなんて尋常ではない。
「待てよ……エリカは無事なのか?」
私の脳裏に、あの生意気な女神の顔が浮かぶ。なにしろ3級神だ。もしエリカまで消えてしまっていたら、スクルドがどれほど悲しむことだろう。
私は隊員たちを町の調査に残したまま、単独で空を飛んでエリカの家へ向かうことにした。
広がる神界の空は今日も白く澄みきっているはずなのに、私の視界には不吉な闇がちらついているようだった。まさかこんな事件が起こるなんて――まるで悪夢を見ているかのような感覚に、胸が苦しくなる。
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