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IFルート 絶望的な運命に立ち向かうダークファンタジー
IF早過ぎたラグナロク7話 3級神消失事件3
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ウルド姉様の館にある客室で、私は衝撃的な言葉を聞いたまましばし呆然としていた。
「……エリカがユーミルを?」
驚きすぎて呼吸が詰まるような感覚。自分の耳を疑いたくなる。まさか、エリカとユーミルにどんな因縁があったというのだろう。あのか弱いユーミルがエリカに襲いかかるなど、普通では考えられないし、いざこざを起こす接点も思い当たらない。
しかし、ウルド姉様が嘘をつくはずがない。何より“過去視”が、それを証明している。
「あ、ああ。ゆ、ユーミルがエリカに襲い掛かって、そ、それに反撃して殺してしまったようだ。し、死体はバラバラにして、に、人間界に投げ捨てたようだ」
彼女の言葉は、まるで頭上から冷水を浴びせられたような衝撃を伴って突き刺さる。死体をバラバラにして、人間界へ投げ捨てた……。そこまでやるとなれば、もはや不可抗力という言葉では片づかない。
その非道さは、かつての“人間の頃のエリカ”を想起させる。もし記憶が戻ったのだとしたら、あの恐ろしい冷酷さが蘇っていてもおかしくない。
「ユーミルがなぜそんな事を?」
声が震える。あの頼りないユーミルが、積極的に誰かを襲うなんて想像できない。それでもウルド姉様の“過去視”が告げるならば、事実なのだろうが……。
「そ、それはわからん。わ、私は映像しか見えないからな」
姉様の返答は、困惑とも苛立ちとも取れるニュアンスだ。過去視は万能ではない。今わかるのは、ただ“ユーミルがエリカに襲い、エリカが反撃して殺害し、死体を残酷に処理した”――それだけ。
「死体をバラバラにして、人間界に投げ捨てるなんて……」
私は頭を抱えそうになる。エリカがそんな非道を……と震える一方で、人間の頃に見せた彼女の“残酷さ”が脳裏をよぎった。あるいは、記憶が戻らずとも、潜在的にその性質が消えていないのかもしれない。
「お、オーディン様が知ったら、ゆ、許さないだろうな」
ウルド姉様は吐息まじりに言う。もし不可抗力であれば、いくらか同情の余地があったはずだ。しかし死体をバラバラにして捨てたとなれば、オーディン様やフレイア様が厳罰を下すのは想像に難くない。
私は、そのまま呆然と椅子に深く腰かけたまま、しばらく考え込む。
どうすれば、エリカを救えるのか。彼女がやった行為は重い罪だし、フレイア様は間違いなく見逃さない。
「姉様、私はエリカの助命を願い出るつもりです」
心に浮かぶのはスクルドの顔。あの妹はエリカをとても大切に思っている。もしエリカが処刑されるようなことになれば、スクルドの嘆きは計り知れないだろう。
「ほ、ほう。そ、それでもオーディン様は許さないかもしれんぞ」
「わかっています。でも、エリカはユーミルを憎くて殺したわけではないはず。襲われて反撃した結果だというなら、まだ同情の余地もあります」
ウルド姉様の目には、微かな躊躇が混じる。彼女がエリカをよく思ってはいないことを知っているが、だからといって見捨てるほどではないはずだ。私は深く息を吸って説得を試みる。
「そこで、姉様にも一緒に願い出てほしいのです。エリカの処遇を、どうか少しでも軽くできるように」
「ふ、ふむ……あ、あまり気乗りしないが、す、スクルドも悲しむだろうしな。い、いいだろう」
「姉様、ありがとうございます」
その返事に思わず胸をなでおろした。運命の3女神で嘆願すれば、オーディン様の心を動かせるかもしれない。私は椅子から立ち上がり、エリカを捕らえに向かおうと決意を固める。
「と、捕らえに行くのか?」
ウルド姉様が疲れた声で問う。過去視の消耗が大きいのだろう。
「はい。エリカには自分の行いをオーディン様の前で説明してもらわないと」
ここで逃げられるわけにはいかない。できるだけ穏便に捕らえたいが、あのエリカが従ってくれるかどうか……。嫌な予感が頭の片隅をかすめる。
「た、戦うことになるかもしれん。ぶ、部下は多めに連れていけ。あと、せ、接近戦は絶対にさけろ」
ウルド姉様の声音には、姉としての心配がにじむ。私だって極力戦いたくはない。だが、何が起きるかわからないのがエリカという存在なのだ。
「きっと私がエリカを説得し、投降させてみせます。……万が一の時は、姉様の言う通り、接近戦はさけますね」
もし彼女が記憶を失ったままなら説得の余地はある。そう信じたい。きっと、隊員をできるだけ多く連れていけばエリカもあきらめるだろう――私はそう自分に言い聞かせる。
「わ、私も行こうか?」
「いえ、姉様は過去視でずいぶん消耗されているでしょう。休んでいてください。私がなんとかします」
私の言葉に、ウルド姉様は安堵とも不安とも取れる表情で小さくうなずく。
「そ、そうか……ゆ、油断だけはするなよ」
「もちろんです。任せてください」
私はそれだけ言い残し、館を出た。落ち込みそうな気持ちを押しとどめ、治安維持部隊を率いてエリカの家へ向かう準備を始めた。
---
月が低く垂れる頃、私たち治安維持部隊は総勢20柱となってエリカの家を取り囲んだ。木造の家は小さく、周囲は薄暗い闇に沈んでいる。
数柱の隊員は以前からエリカに恨みめいた感情を抱いていたらしく、“生意気な女神”に制裁を与えたいという声が小さくささやかれている。もちろん表向きには“隊長を心配してついてきた”という名目だが……。
(これだけの人数で取り囲めば、さすがにエリカも抵抗できないはず)
私はそう思いたいが、胸の奥に不安な鼓動が鳴り響く。彼女はあのユーミルを殺し、しかも死体をバラバラにした。それほどまでの冷酷さを持つ相手が、本当に大人しく投降するだろうか――疑念が拭えない。
ドアに向かい、私は意を決して声を上げる。
「エリカ、いるか?」
夜の静寂に私の呼びかけがこだまする。家の中はうす暗いが、神の気配があるようにも思える。しんとした空気に隊員たちの緊張した呼吸が混じり、やや息苦しいほどだ。
すると、ドアが開いて、そこにエリカが現れた。
「ヴェルザンディ、またなの? 今度は何の用よ?」
イライラを隠そうともしない声音。薄暗い灯りに照らされて、エリカの目には怪しげな光が宿っている。ドアの外にいる隊員たちを見渡し、彼女はわずかに驚いたように目を見開く。
「ユーミルを殺した容疑でお前を捕らえにきた。同行してもらえるか?」
私は治安維持部隊の隊長として、できるだけ冷静に、そして事務的に告げる。周囲の隊員が武器を構え、じりじりと警戒態勢を取るのがわかる。反撃さえしてこなければ、こちらとしては戦闘を避けたいのだが……。
「……ウルドの過去視を使ったのね。それで、隊員全てを連れてきたってわけ?」
エリカはちらりと周囲を見渡し、口の端に皮肉そうな笑みを浮かべる。その笑顔はまるでこの状況を楽しんでいるかのようで、私には不気味に映る。
「そうだ。抵抗しないでほしい」
私の声が微かに震えたのを自覚する。エリカがどう応じるか、予断を許さないからだ。しかし彼女は投降どころか、まるで事態を面白がっているかのようだった。
「大人しくしたところで、オデンが私を許すとは思えないけど?」
唐突に軽口を叩くエリカ。オーディン様を侮蔑するかのような呼び方に、隊員たちが息を呑む。私は眉をひそめながら、かぶりを振る。
「私たち運命の3女神でお前の助命を願い出るつもりだ。安心してくれ」
説得を試みるが、エリカはまじまじと私の顔に目をやったあと、不敵な笑みを深めるだけ。
「……へえ、優しいのね。私が3級神たちを皆殺しにしたと言っても、同じことをしてくれるのかしら?」
その一言が胸を刺す。まるで冗談か挑発のようだけれど、嫌な寒気を覚える。隊員たちの何人かがざわめきだし、私に視線を寄こす。
「こんな時に、そんな冗談はやめるんだ」
喉が渇く。まさか、3級神たちの失踪とエリカが関係しているのか……? 逃げ場のない疑念が頭を巡る。エリカは相変わらず薄暗い笑みを浮かべながら、楽しげに言葉を継ぐ。
「ふふふ、抵抗したらどうするの?」
背後に隠された凶気が急に膨れ上がる気配がした。私がそれを感じ取った瞬間、彼女の瞳から剣呑な光が滲み出す。囁くような低い声が、戦闘開始を告げるかのように響いた。
「ヴェルザンディ以外、全員殺すしかないようね」
「……エリカがユーミルを?」
驚きすぎて呼吸が詰まるような感覚。自分の耳を疑いたくなる。まさか、エリカとユーミルにどんな因縁があったというのだろう。あのか弱いユーミルがエリカに襲いかかるなど、普通では考えられないし、いざこざを起こす接点も思い当たらない。
しかし、ウルド姉様が嘘をつくはずがない。何より“過去視”が、それを証明している。
「あ、ああ。ゆ、ユーミルがエリカに襲い掛かって、そ、それに反撃して殺してしまったようだ。し、死体はバラバラにして、に、人間界に投げ捨てたようだ」
彼女の言葉は、まるで頭上から冷水を浴びせられたような衝撃を伴って突き刺さる。死体をバラバラにして、人間界へ投げ捨てた……。そこまでやるとなれば、もはや不可抗力という言葉では片づかない。
その非道さは、かつての“人間の頃のエリカ”を想起させる。もし記憶が戻ったのだとしたら、あの恐ろしい冷酷さが蘇っていてもおかしくない。
「ユーミルがなぜそんな事を?」
声が震える。あの頼りないユーミルが、積極的に誰かを襲うなんて想像できない。それでもウルド姉様の“過去視”が告げるならば、事実なのだろうが……。
「そ、それはわからん。わ、私は映像しか見えないからな」
姉様の返答は、困惑とも苛立ちとも取れるニュアンスだ。過去視は万能ではない。今わかるのは、ただ“ユーミルがエリカに襲い、エリカが反撃して殺害し、死体を残酷に処理した”――それだけ。
「死体をバラバラにして、人間界に投げ捨てるなんて……」
私は頭を抱えそうになる。エリカがそんな非道を……と震える一方で、人間の頃に見せた彼女の“残酷さ”が脳裏をよぎった。あるいは、記憶が戻らずとも、潜在的にその性質が消えていないのかもしれない。
「お、オーディン様が知ったら、ゆ、許さないだろうな」
ウルド姉様は吐息まじりに言う。もし不可抗力であれば、いくらか同情の余地があったはずだ。しかし死体をバラバラにして捨てたとなれば、オーディン様やフレイア様が厳罰を下すのは想像に難くない。
私は、そのまま呆然と椅子に深く腰かけたまま、しばらく考え込む。
どうすれば、エリカを救えるのか。彼女がやった行為は重い罪だし、フレイア様は間違いなく見逃さない。
「姉様、私はエリカの助命を願い出るつもりです」
心に浮かぶのはスクルドの顔。あの妹はエリカをとても大切に思っている。もしエリカが処刑されるようなことになれば、スクルドの嘆きは計り知れないだろう。
「ほ、ほう。そ、それでもオーディン様は許さないかもしれんぞ」
「わかっています。でも、エリカはユーミルを憎くて殺したわけではないはず。襲われて反撃した結果だというなら、まだ同情の余地もあります」
ウルド姉様の目には、微かな躊躇が混じる。彼女がエリカをよく思ってはいないことを知っているが、だからといって見捨てるほどではないはずだ。私は深く息を吸って説得を試みる。
「そこで、姉様にも一緒に願い出てほしいのです。エリカの処遇を、どうか少しでも軽くできるように」
「ふ、ふむ……あ、あまり気乗りしないが、す、スクルドも悲しむだろうしな。い、いいだろう」
「姉様、ありがとうございます」
その返事に思わず胸をなでおろした。運命の3女神で嘆願すれば、オーディン様の心を動かせるかもしれない。私は椅子から立ち上がり、エリカを捕らえに向かおうと決意を固める。
「と、捕らえに行くのか?」
ウルド姉様が疲れた声で問う。過去視の消耗が大きいのだろう。
「はい。エリカには自分の行いをオーディン様の前で説明してもらわないと」
ここで逃げられるわけにはいかない。できるだけ穏便に捕らえたいが、あのエリカが従ってくれるかどうか……。嫌な予感が頭の片隅をかすめる。
「た、戦うことになるかもしれん。ぶ、部下は多めに連れていけ。あと、せ、接近戦は絶対にさけろ」
ウルド姉様の声音には、姉としての心配がにじむ。私だって極力戦いたくはない。だが、何が起きるかわからないのがエリカという存在なのだ。
「きっと私がエリカを説得し、投降させてみせます。……万が一の時は、姉様の言う通り、接近戦はさけますね」
もし彼女が記憶を失ったままなら説得の余地はある。そう信じたい。きっと、隊員をできるだけ多く連れていけばエリカもあきらめるだろう――私はそう自分に言い聞かせる。
「わ、私も行こうか?」
「いえ、姉様は過去視でずいぶん消耗されているでしょう。休んでいてください。私がなんとかします」
私の言葉に、ウルド姉様は安堵とも不安とも取れる表情で小さくうなずく。
「そ、そうか……ゆ、油断だけはするなよ」
「もちろんです。任せてください」
私はそれだけ言い残し、館を出た。落ち込みそうな気持ちを押しとどめ、治安維持部隊を率いてエリカの家へ向かう準備を始めた。
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月が低く垂れる頃、私たち治安維持部隊は総勢20柱となってエリカの家を取り囲んだ。木造の家は小さく、周囲は薄暗い闇に沈んでいる。
数柱の隊員は以前からエリカに恨みめいた感情を抱いていたらしく、“生意気な女神”に制裁を与えたいという声が小さくささやかれている。もちろん表向きには“隊長を心配してついてきた”という名目だが……。
(これだけの人数で取り囲めば、さすがにエリカも抵抗できないはず)
私はそう思いたいが、胸の奥に不安な鼓動が鳴り響く。彼女はあのユーミルを殺し、しかも死体をバラバラにした。それほどまでの冷酷さを持つ相手が、本当に大人しく投降するだろうか――疑念が拭えない。
ドアに向かい、私は意を決して声を上げる。
「エリカ、いるか?」
夜の静寂に私の呼びかけがこだまする。家の中はうす暗いが、神の気配があるようにも思える。しんとした空気に隊員たちの緊張した呼吸が混じり、やや息苦しいほどだ。
すると、ドアが開いて、そこにエリカが現れた。
「ヴェルザンディ、またなの? 今度は何の用よ?」
イライラを隠そうともしない声音。薄暗い灯りに照らされて、エリカの目には怪しげな光が宿っている。ドアの外にいる隊員たちを見渡し、彼女はわずかに驚いたように目を見開く。
「ユーミルを殺した容疑でお前を捕らえにきた。同行してもらえるか?」
私は治安維持部隊の隊長として、できるだけ冷静に、そして事務的に告げる。周囲の隊員が武器を構え、じりじりと警戒態勢を取るのがわかる。反撃さえしてこなければ、こちらとしては戦闘を避けたいのだが……。
「……ウルドの過去視を使ったのね。それで、隊員全てを連れてきたってわけ?」
エリカはちらりと周囲を見渡し、口の端に皮肉そうな笑みを浮かべる。その笑顔はまるでこの状況を楽しんでいるかのようで、私には不気味に映る。
「そうだ。抵抗しないでほしい」
私の声が微かに震えたのを自覚する。エリカがどう応じるか、予断を許さないからだ。しかし彼女は投降どころか、まるで事態を面白がっているかのようだった。
「大人しくしたところで、オデンが私を許すとは思えないけど?」
唐突に軽口を叩くエリカ。オーディン様を侮蔑するかのような呼び方に、隊員たちが息を呑む。私は眉をひそめながら、かぶりを振る。
「私たち運命の3女神でお前の助命を願い出るつもりだ。安心してくれ」
説得を試みるが、エリカはまじまじと私の顔に目をやったあと、不敵な笑みを深めるだけ。
「……へえ、優しいのね。私が3級神たちを皆殺しにしたと言っても、同じことをしてくれるのかしら?」
その一言が胸を刺す。まるで冗談か挑発のようだけれど、嫌な寒気を覚える。隊員たちの何人かがざわめきだし、私に視線を寄こす。
「こんな時に、そんな冗談はやめるんだ」
喉が渇く。まさか、3級神たちの失踪とエリカが関係しているのか……? 逃げ場のない疑念が頭を巡る。エリカは相変わらず薄暗い笑みを浮かべながら、楽しげに言葉を継ぐ。
「ふふふ、抵抗したらどうするの?」
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