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IFルート 絶望的な運命に立ち向かうダークファンタジー
IF早過ぎたラグナロク21話 運命の女神1
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生まれた後、すぐに私はスクルドに出会った。
小柄で、私とほとんど身長が変わらないくせに、出会ったときから偉そうで姉ぶった態度を取ってくる。正直言って、最初は面倒な奴だと思っていた。私の前に頻繁に現れては、小言を言ったり、騒いだり、怒ったり……理知的な私とは対照的な性格なのだ。
しかし、生まれた時からずっと側にいてくれたのはスクルドだけだった。姉のようでもあり、妹のようでもあり、母のようでもあり、友のようでもある存在――それが彼女だ。悲しい時も、楽しい時も、苦しい時も、いつの間にか当たり前のように傍にいてくれた。
(彼女が困っていれば助けたい。苦しんでいるのなら、その原因を排除しなければ気が済まない)
いつからだろう。スクルドが私の心の中に入り込み、その大部分を占めるにまでなってしまった。だから、彼女の障害になるものはすべて取り除く、どんな手段を使っても。
昔はヴェルザンディ、ノルン、ウルド、トール、そしてスクルドがいた。
あの頃の日常を思えば、みんなが揃っていて賑やかで、懐かしくかけがえのない時間だった。それを守るために私は“敵”を葬り、ラグナロクで待ち受けるスルトに対抗できる力を得てきた。
最初はスクルドたちを守るために、ラグナロクで敵となる者を次々と始末していた。だが次第に、運命は私の想定外の方向に動き出してしまった。ユーミルを殺したことでヴェルザンディと対立し、やむを得ず彼女も殺した。ヴェルザンディを殺したことで、ウルドも同様に……。
そうして私が守りたかったはずの日常は、音を立てて崩れていった。ついにはトールまで殺してしまい、今ではスクルドしか守るべきものは残っていない。
(もう、私にはスクルドしかいないの)
どんな犠牲を払おうとも、彼女だけは守り抜く。私はそう決意した。たとえこの手が血まみれになろうと、彼女を生かすためなら何もかも捧げよう。
---
私の家のベッドにスクルドを寝かせてやる。
何日も不眠不休で“運命の糸”を紡いでいたらしい彼女は、もはや瀕死に近い衰弱状態だった。あの白い束――人間たちの運命の糸を織り続ける使命をスクルドは果たそうとしていたのだろう。それが、私がヴェルザンディとウルドを殺したことで、スクルド1柱にのしかかった形になった。
(スクルドの身に降りかかった重荷は……私のせいだ)
思うと、胸が痛む。だが今は自分を責めている場合ではない。スクルドの衰弱は尋常ではない。私が能力を酷使した時の症状と似ているし、未来視を休みなく使い続ければ、これほどまでに衰弱して当然かもしれない。
「無理をせずに休めば治るはずよ」
自分に言い聞かせるように囁く。私にはヘルの超再生があるが、スクルドにはない。だからこそ、余計に彼女を休ませなければ死んでしまう可能性がある。
手持ちの薬で使えるのは栄養剤と睡眠薬くらい。彼女が意識を失っているせいで、飲ませるのもひと苦労だ。ため息をつき、私は口に薬を含み、スクルドに口移しで流し込む。
「……仕方ないわね」
彼女はかろうじて飲みこんでくれた。呼吸も浅いが、これでしばらく眠り続けてくれるだろう。また運命の糸を紡ぎ始めないよう、しばらく薬で眠らせるしかない。
(でも、それは根本的な解決にはならない)
スクルドが回復し目覚めれば、また使命感に駆られて糸を紡ぎ、未来視を酷使して衰弱死しかねない。それを止める手段は……運命の糸を何とかする以外にない。そう思い立ち、私は家を出る。
---
世界樹の泉は静かだった。
巨大な樹は昔から変わらない威容を誇り、その根元には透き通った泉がある。私はスクルドが作業していたあたりを探り、やがて、根の付近から白い束が伸びているのを発見する。
「あった!」
そこから先が何処へ向かうのかは見えない。これこそ人間たちの運命の糸だ。スクルドが倒れるまで紡ぎ続けたものだ。
私は全斬丸で斬りかかる。
「みじん斬り!」
刃が空を切り裂くように振るわれ、確かに糸が断ち切れた……はずだった。だが、白い束は瞬く間に元の姿を取り戻す。あたかも不死であるかのように再生し、まったく斬る意味がない。
「……ダメね」
手で触れようとしても、触れることさえできない。運命の女神以外は触れられないのだろう。
さらに追撃しようと考えたが、無駄だと悟る。きりがない。ならば、世界樹を焼き払えば糸も消えるかもしれない。
「世界樹を燃やすか……」
自分でつぶやいた言葉にゾッとする。もし世界樹がなくなれば、全ての世界が崩壊してしまう。元も子もない。
私は息を呑み、森のあたりを歩き回りながら考え込む。糸は斬れない、触れられない、世界樹も燃やせない。ならば、スクルドを縛って運命の糸に近づけないようにするか?
(監禁? 彼女をずっと監禁して、使命を果たせないように?)
確かに時間稼ぎにはなるかもしれないが、彼女の心が壊れてしまうだろう。スクルドは優しい女神だ。使命を果たせない自分を責め続けて、余計に衰弱してしまう可能性が高い。それでは何にもならない。
「何か良い方法は……」
世界樹を見上げても、答えは返ってこない。風が揺らす枝葉の音だけが、ざわざわと私を嘲笑うかのようだ。
頭を抱えかけたとき、不意に閃く。運命の糸が人間たちの命運を決定しているのなら、人間そのものが存在しなければ糸を紡ぐ必要もなくなる。
(人間さえいなくなれば、スクルドが苦しむことも……)
一瞬、トールの言葉が脳裏を横切る。「スクルドがそんな事を望んでいると本気で思っておるのか?」。もちろん望んでないだろう。怒られるかもしれないし、軽蔑されるかもしれない。
でも、私にはもう他の手段が思いつかない。世界樹を焼くわけにも、スクルドを監禁するわけにもいかないなら、運命を紡ぐ対象を消し去るしかない。
私は背に黒い羽を生やし、人間界を目指し飛びたつ。
「人間たちを皆殺しにするしかないわね」
小柄で、私とほとんど身長が変わらないくせに、出会ったときから偉そうで姉ぶった態度を取ってくる。正直言って、最初は面倒な奴だと思っていた。私の前に頻繁に現れては、小言を言ったり、騒いだり、怒ったり……理知的な私とは対照的な性格なのだ。
しかし、生まれた時からずっと側にいてくれたのはスクルドだけだった。姉のようでもあり、妹のようでもあり、母のようでもあり、友のようでもある存在――それが彼女だ。悲しい時も、楽しい時も、苦しい時も、いつの間にか当たり前のように傍にいてくれた。
(彼女が困っていれば助けたい。苦しんでいるのなら、その原因を排除しなければ気が済まない)
いつからだろう。スクルドが私の心の中に入り込み、その大部分を占めるにまでなってしまった。だから、彼女の障害になるものはすべて取り除く、どんな手段を使っても。
昔はヴェルザンディ、ノルン、ウルド、トール、そしてスクルドがいた。
あの頃の日常を思えば、みんなが揃っていて賑やかで、懐かしくかけがえのない時間だった。それを守るために私は“敵”を葬り、ラグナロクで待ち受けるスルトに対抗できる力を得てきた。
最初はスクルドたちを守るために、ラグナロクで敵となる者を次々と始末していた。だが次第に、運命は私の想定外の方向に動き出してしまった。ユーミルを殺したことでヴェルザンディと対立し、やむを得ず彼女も殺した。ヴェルザンディを殺したことで、ウルドも同様に……。
そうして私が守りたかったはずの日常は、音を立てて崩れていった。ついにはトールまで殺してしまい、今ではスクルドしか守るべきものは残っていない。
(もう、私にはスクルドしかいないの)
どんな犠牲を払おうとも、彼女だけは守り抜く。私はそう決意した。たとえこの手が血まみれになろうと、彼女を生かすためなら何もかも捧げよう。
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私の家のベッドにスクルドを寝かせてやる。
何日も不眠不休で“運命の糸”を紡いでいたらしい彼女は、もはや瀕死に近い衰弱状態だった。あの白い束――人間たちの運命の糸を織り続ける使命をスクルドは果たそうとしていたのだろう。それが、私がヴェルザンディとウルドを殺したことで、スクルド1柱にのしかかった形になった。
(スクルドの身に降りかかった重荷は……私のせいだ)
思うと、胸が痛む。だが今は自分を責めている場合ではない。スクルドの衰弱は尋常ではない。私が能力を酷使した時の症状と似ているし、未来視を休みなく使い続ければ、これほどまでに衰弱して当然かもしれない。
「無理をせずに休めば治るはずよ」
自分に言い聞かせるように囁く。私にはヘルの超再生があるが、スクルドにはない。だからこそ、余計に彼女を休ませなければ死んでしまう可能性がある。
手持ちの薬で使えるのは栄養剤と睡眠薬くらい。彼女が意識を失っているせいで、飲ませるのもひと苦労だ。ため息をつき、私は口に薬を含み、スクルドに口移しで流し込む。
「……仕方ないわね」
彼女はかろうじて飲みこんでくれた。呼吸も浅いが、これでしばらく眠り続けてくれるだろう。また運命の糸を紡ぎ始めないよう、しばらく薬で眠らせるしかない。
(でも、それは根本的な解決にはならない)
スクルドが回復し目覚めれば、また使命感に駆られて糸を紡ぎ、未来視を酷使して衰弱死しかねない。それを止める手段は……運命の糸を何とかする以外にない。そう思い立ち、私は家を出る。
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世界樹の泉は静かだった。
巨大な樹は昔から変わらない威容を誇り、その根元には透き通った泉がある。私はスクルドが作業していたあたりを探り、やがて、根の付近から白い束が伸びているのを発見する。
「あった!」
そこから先が何処へ向かうのかは見えない。これこそ人間たちの運命の糸だ。スクルドが倒れるまで紡ぎ続けたものだ。
私は全斬丸で斬りかかる。
「みじん斬り!」
刃が空を切り裂くように振るわれ、確かに糸が断ち切れた……はずだった。だが、白い束は瞬く間に元の姿を取り戻す。あたかも不死であるかのように再生し、まったく斬る意味がない。
「……ダメね」
手で触れようとしても、触れることさえできない。運命の女神以外は触れられないのだろう。
さらに追撃しようと考えたが、無駄だと悟る。きりがない。ならば、世界樹を焼き払えば糸も消えるかもしれない。
「世界樹を燃やすか……」
自分でつぶやいた言葉にゾッとする。もし世界樹がなくなれば、全ての世界が崩壊してしまう。元も子もない。
私は息を呑み、森のあたりを歩き回りながら考え込む。糸は斬れない、触れられない、世界樹も燃やせない。ならば、スクルドを縛って運命の糸に近づけないようにするか?
(監禁? 彼女をずっと監禁して、使命を果たせないように?)
確かに時間稼ぎにはなるかもしれないが、彼女の心が壊れてしまうだろう。スクルドは優しい女神だ。使命を果たせない自分を責め続けて、余計に衰弱してしまう可能性が高い。それでは何にもならない。
「何か良い方法は……」
世界樹を見上げても、答えは返ってこない。風が揺らす枝葉の音だけが、ざわざわと私を嘲笑うかのようだ。
頭を抱えかけたとき、不意に閃く。運命の糸が人間たちの命運を決定しているのなら、人間そのものが存在しなければ糸を紡ぐ必要もなくなる。
(人間さえいなくなれば、スクルドが苦しむことも……)
一瞬、トールの言葉が脳裏を横切る。「スクルドがそんな事を望んでいると本気で思っておるのか?」。もちろん望んでないだろう。怒られるかもしれないし、軽蔑されるかもしれない。
でも、私にはもう他の手段が思いつかない。世界樹を焼くわけにも、スクルドを監禁するわけにもいかないなら、運命を紡ぐ対象を消し去るしかない。
私は背に黒い羽を生やし、人間界を目指し飛びたつ。
「人間たちを皆殺しにするしかないわね」
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