1 / 9
もう頑張らなくて良いんです①
しおりを挟む
とある町の、とある小さな喫茶店。
こじんまりとした店内は、ちょっとだけ暗くて、暖かくも寒くもない普通の温度。
木を基調としたナチュラルカラーなインテリア。
室内の一角に緑の観葉植物。
キッチンの天端の一角には、ハーブや野菜のちょっとした水耕栽培スペース。
また、別の一角には、みずみずしい季節の生のフルーツが、ちょっとずつだけ飾ってある。
店内は、入り口側にテーブルが一つに、椅子が二席。導線を邪魔しない壁に雑貨棚。
奥側、カウンターに椅子が三席。
お店の外側には壁付けの小さな看板。
玄関の扉は、上部に丸みがある形。扉の隣には大きな丸い窓が二つ。
その扉を大きく開けて、レースカーテンも緩く止める。
誰でも気軽に入れるように。
「こっち、OK」
出入口の準備を終えて、中に向かってそう声をかけたのは、やや癖のある焦げ茶の髪に、細い丸フレームの眼鏡を掛けた若い男性。
緩い黒シャツに黒のカフェエプロン。黒のストレッチパンツ、スニーカーも黒。
「じゃ。今日も一日お願いしまーす!」
カウンターの奥、高い位置にあるその神棚に向かって、女性が二礼四拍手一礼をした。
いつもの挨拶を済ませたのは、てっぺんよりやや下にお団子でひとまとめにした茶髪に、ナチュラルメイクの若い女性。
男性と同じく、こちらもシャツから靴まで全て、黒で統一されていた。
「今日は誰が来るかしら」
「さぁな」
カウンターに二人で入り、それぞれが準備をする。
その視線は、開け放たれた扉の光る先。
◇◆◇◆◇◆◇
とぼとぼと、女性が歩いていた。
ーー帰りたくない。
ガラガラと、押して歩くベビーカー。
前に座る我が子は、目についた物に届かない手を伸ばして、きゃっきゃと楽しそうに笑っていた。
ーー可愛い。そう。見てる分には可愛い。
けれど。
「帰りたくない……」
だって、家に帰れば……。
もうすぐおやつ時の時間だろう、昼下がり。
ぼんやりと見上げた空は、少し風が冷たくなった秋晴れの綺麗な青。
風が吹く度に、舞踊る枯れた葉が視界に入って。
通路の隅、山のように重なる落ち葉たちが。
「……っ」
女性は目頭が熱くなって、目を擦った。
重なった落ち葉の山がまるで重たくのし掛かった自分のようで。
今日帰ったら、明日が来る。明日の次は、そのまた明日。
毎日毎日、続いていく……。
こんなつもりではなかったはずで、でもどうしたら良いのか分からなくて。
ただ、ガラガラとベビーカーを押して歩いていた。
こじんまりとした店内は、ちょっとだけ暗くて、暖かくも寒くもない普通の温度。
木を基調としたナチュラルカラーなインテリア。
室内の一角に緑の観葉植物。
キッチンの天端の一角には、ハーブや野菜のちょっとした水耕栽培スペース。
また、別の一角には、みずみずしい季節の生のフルーツが、ちょっとずつだけ飾ってある。
店内は、入り口側にテーブルが一つに、椅子が二席。導線を邪魔しない壁に雑貨棚。
奥側、カウンターに椅子が三席。
お店の外側には壁付けの小さな看板。
玄関の扉は、上部に丸みがある形。扉の隣には大きな丸い窓が二つ。
その扉を大きく開けて、レースカーテンも緩く止める。
誰でも気軽に入れるように。
「こっち、OK」
出入口の準備を終えて、中に向かってそう声をかけたのは、やや癖のある焦げ茶の髪に、細い丸フレームの眼鏡を掛けた若い男性。
緩い黒シャツに黒のカフェエプロン。黒のストレッチパンツ、スニーカーも黒。
「じゃ。今日も一日お願いしまーす!」
カウンターの奥、高い位置にあるその神棚に向かって、女性が二礼四拍手一礼をした。
いつもの挨拶を済ませたのは、てっぺんよりやや下にお団子でひとまとめにした茶髪に、ナチュラルメイクの若い女性。
男性と同じく、こちらもシャツから靴まで全て、黒で統一されていた。
「今日は誰が来るかしら」
「さぁな」
カウンターに二人で入り、それぞれが準備をする。
その視線は、開け放たれた扉の光る先。
◇◆◇◆◇◆◇
とぼとぼと、女性が歩いていた。
ーー帰りたくない。
ガラガラと、押して歩くベビーカー。
前に座る我が子は、目についた物に届かない手を伸ばして、きゃっきゃと楽しそうに笑っていた。
ーー可愛い。そう。見てる分には可愛い。
けれど。
「帰りたくない……」
だって、家に帰れば……。
もうすぐおやつ時の時間だろう、昼下がり。
ぼんやりと見上げた空は、少し風が冷たくなった秋晴れの綺麗な青。
風が吹く度に、舞踊る枯れた葉が視界に入って。
通路の隅、山のように重なる落ち葉たちが。
「……っ」
女性は目頭が熱くなって、目を擦った。
重なった落ち葉の山がまるで重たくのし掛かった自分のようで。
今日帰ったら、明日が来る。明日の次は、そのまた明日。
毎日毎日、続いていく……。
こんなつもりではなかったはずで、でもどうしたら良いのか分からなくて。
ただ、ガラガラとベビーカーを押して歩いていた。
1
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる