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②
しおりを挟む「いらっしゃいませー」
「……あ」
声に気付いて、私は顔を上げた。知らぬ間にお店に入っていたらしい。ベビーカーのタイヤが、中に乗りいっていた。
「あ、すみませんっ。その、入るつもりはなくて……」
後方を見ながら、慌てて出ようとした。
けれど、僅かな段差でタイヤがもたついしてしまった。
「大丈夫ですよ、どうぞ。雑貨もあって、見るだけの方もいますし。ベビーカーのまま入れますから。
今、他のお客様も居ないので、ほんとに気にしないでください」
「……じゃ、ちょっとだけ」
もうすでに入り口まで、入ってしまっていた。
さらに「どうぞ」と再度、目の前でにこやかな笑顔の男性に促されては、断りづらい。
ーースッと一周したら、外に。
そう思って、店内へ私は足を踏み入れた。
とてもこじんまりとした店内だった。
パッと見ただけで、店内が見渡せるほど。
テーブル一組と奥にカウンターが三席。
けれど、ベビーカーは左右をぶつける心配がなく、とても通りやすかった。
寒かった外と違い、中はほんのり暖かく木のいい匂いがした。
ホッと肩の力が抜けて、私は無意識に息をついた。
入って目についた、棚を見る。
ーーこれが店員さんの言っていた雑貨。
子連れ客も来るのか、ハンカチやはがき、ストラップの文具等の他、ガラガラや歯固め等もあって驚いた。
「……すみません。試飲お願いしても良いですか?」
「え?」
「あ!すみません、突然。もしかして、アレルギー何かありました?」
カウンターからお盆を持った女性がそっと出て話しかけてきた。
突然で私が驚いていたら、それをアレルギーがあるからだと女性は受け取って、さらに心配をされた。
「いえ、アレルギーないですけど……」
「じゃ良かったらどうぞ。秋のブレンドティーなんです。うち、そこのアシと二人経営なので。雑貨見てくれる人にも、試飲出したりさせてもらってるんです」
へにゃりと笑っていう彼女は生き生きとしていて、今の私には眩しかった。
どうぞと勧められて、気付けば言われるがままカウンター席に案内される。
ベビーカーは、カウンターに横付けが出来た。
「荷物、良かったら。こちらお使いください」
と、籠を男性から勧められ、お言葉に甘えさせてもらった。
「荷物大きいと大変でしたよね、今日はお出掛けですか?」
「いえ、今日は検診で……」
女性に聞かれて、私は気まずくなってしまって、勧められた紙コップのブレンドティーを飲んだ。
ーーっ!
何のブレンドティーなのだろうか、ティーとつくから紅茶かと思って飲むと、とても甘くて濃厚な味がした。
「……美味しい、です」
「良かったです!ありがとうございます。
……アシはなに出しても、うまいしか言ってくれないので、新作の試行錯誤が大変で」
「美味しいものを美味しいと、言ってるだけだろう」
「作る身にもなってよ!それだけじゃ分かんないわよ」
店員さんたちのアットホームなやり取りが、私にはとても眩しくて、羨ましかった。
ーーああ、この子ともそうだったら。
「……作るの、大変ですよね」
ポロリと溢れたのは、私の本心だった。
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