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わたしのひいひいひいおばあちゃんは、おじいちゃんとすっごくラブラブ夫婦だったらしい。もうずっとずっと昔に亡くなっているのにいまだに親戚が集まるとエピソードに事欠かないってすごくない?
その話何度も聞いたよ!って笑うけど、でもみんな嫌な顔なんてしない。実際あまあまな手紙とかいっぱい残ってるし、むしろ微笑ましくなる。
ていうかよく考えなくてもすごいよね。大正とか戦前の人のいちゃいちゃ具合が後世まで伝わってるって、あれ、これちょっとやばいのかな。
―――けど、いいなあ。憧れる。
ところでこの春入学した大学の同級生にものすごいきらきらした人がいる。
大澤流星くん。
系譜を辿ると華族とかに繋がる由緒正しいお家柄だそうなんだけど、そんなことより見た目がやばい。かっこいいっていうよりキレイ系のイケメンで、メイクしなくても雰囲気のある目元が本当に色っぽい。すごくSNS映えしそう。
でもかっこいいのはわかるんだけど、あんまりタイプではないんだよね。
「ゆめ」
キャンパスのカフェでぼんやりしてると友達がやってきた。
雪村羽白ちゃん。
黒髪ストレートできりっとした目元がかっこかわいい女の子。大学で一番の仲良しだ。
いろいろ話をしながらご飯を食べていると、ふっと影が落ちる。「あ」という声に顔を上げるとそこにはあの流星くんが。
「その、指輪」
「え?」
一度首を傾げて、ああと思う。
わたしの右手の中指には、ひいひいひいおばあちゃんの大切にしていた指輪がある。
小さすぎて誰にも合わなかったみたいで「ちょうだい」と言ったらすぐにもらえた。大事に保管されていたようできれいだし、なによりこのレトロさが可愛い。
「つけてくれてるんだ」
「うん。お気に入りなの」
そんな会話をして「「あれ?」」とお互いに首を傾げる。
「何、いまの。大澤くんがくれたみたいな言い方」
「ごめん。なんか無意識で」
くすくす笑えば、流星くんは目をぱちぱちさせて謝ってくる。ちょっとかわいい。
向かいに座っていた羽白ちゃんが「座れば?」と言って、流星くんはわたしの隣に腰を下ろした。
「はじめましてだよね?大澤流星です。オレのこと知ってた?」
「まあ有名人だから。添島ゆめです。よろしく」
流星くんは「ゆめちゃん」とにっこりする。
うわあ、兵器だ。顔面が兵器並みの威力。
すごいなあと思っていると、羽白ちゃんと流星くんも自己紹介し合っていた。
それからよく流星くんに話しかけられるようになった。
いつも会えばにこりと笑って「ゆめちゃん」と呼ばれる。講義が重なれば隣に座るし、カフェで会っても同じテーブルにつく。大体いつも羽白ちゃんといっしょにいるのだけど、そのうち遠慮されて、流星くんと二人きりになることが多くなった。
「流星くんどうしていつもこっちくるの?」
「え、だめ?ゆめちゃんといっしょにいたいんだけど」
きょとんとされるとなんだか愛嬌があって強く出られない。それにだめっていうわけじゃなくて。
「うーん、いいんだけどなんでかなって思って」
流星くんも「うーん」と唸った。
「ゆめちゃんのその真珠の指輪がすっごく気になったっていうのも本当なんだけどさ、はじめてゆめちゃんを見たとき、ぴぴっ!ときたんだよね」
「ぴぴ?」
なにそれ。
「うん。なんか『運命だ!』って思った」
華やかなイケメンが目をきらきらさせながらそんなことを言うものだから、とてもびっくりして、そしてちょっとどきどきしてしまった。
「そ、そうなんだ」
かっこよくて人気者の流星くんに運命なんて言われたら、わたしだって意識してしまう。好みじゃないとか思っていたのになんてちょろいのか。
……まあ、流星くんが恋愛的な意味で運命を感じているかはわからないけど。
事実はどうあれ、流星くんが自分から関わる女の子はわたしだけで、ちょっと浮かれていたのは事実。
「その指輪かわいいよね。ちょっと見せて?」
カフェで隣の席に座った女の子からそう声をかけられて、わたしは「うん、いいよ」と右手を差し出した。
「そうじゃなくて、外してほしいの」
「え?外すの?」
やだな、と思ったけど、知らない子だし「見るだけだよ」と注意して指から抜こうとして――大きな手が重なった。
その話何度も聞いたよ!って笑うけど、でもみんな嫌な顔なんてしない。実際あまあまな手紙とかいっぱい残ってるし、むしろ微笑ましくなる。
ていうかよく考えなくてもすごいよね。大正とか戦前の人のいちゃいちゃ具合が後世まで伝わってるって、あれ、これちょっとやばいのかな。
―――けど、いいなあ。憧れる。
ところでこの春入学した大学の同級生にものすごいきらきらした人がいる。
大澤流星くん。
系譜を辿ると華族とかに繋がる由緒正しいお家柄だそうなんだけど、そんなことより見た目がやばい。かっこいいっていうよりキレイ系のイケメンで、メイクしなくても雰囲気のある目元が本当に色っぽい。すごくSNS映えしそう。
でもかっこいいのはわかるんだけど、あんまりタイプではないんだよね。
「ゆめ」
キャンパスのカフェでぼんやりしてると友達がやってきた。
雪村羽白ちゃん。
黒髪ストレートできりっとした目元がかっこかわいい女の子。大学で一番の仲良しだ。
いろいろ話をしながらご飯を食べていると、ふっと影が落ちる。「あ」という声に顔を上げるとそこにはあの流星くんが。
「その、指輪」
「え?」
一度首を傾げて、ああと思う。
わたしの右手の中指には、ひいひいひいおばあちゃんの大切にしていた指輪がある。
小さすぎて誰にも合わなかったみたいで「ちょうだい」と言ったらすぐにもらえた。大事に保管されていたようできれいだし、なによりこのレトロさが可愛い。
「つけてくれてるんだ」
「うん。お気に入りなの」
そんな会話をして「「あれ?」」とお互いに首を傾げる。
「何、いまの。大澤くんがくれたみたいな言い方」
「ごめん。なんか無意識で」
くすくす笑えば、流星くんは目をぱちぱちさせて謝ってくる。ちょっとかわいい。
向かいに座っていた羽白ちゃんが「座れば?」と言って、流星くんはわたしの隣に腰を下ろした。
「はじめましてだよね?大澤流星です。オレのこと知ってた?」
「まあ有名人だから。添島ゆめです。よろしく」
流星くんは「ゆめちゃん」とにっこりする。
うわあ、兵器だ。顔面が兵器並みの威力。
すごいなあと思っていると、羽白ちゃんと流星くんも自己紹介し合っていた。
それからよく流星くんに話しかけられるようになった。
いつも会えばにこりと笑って「ゆめちゃん」と呼ばれる。講義が重なれば隣に座るし、カフェで会っても同じテーブルにつく。大体いつも羽白ちゃんといっしょにいるのだけど、そのうち遠慮されて、流星くんと二人きりになることが多くなった。
「流星くんどうしていつもこっちくるの?」
「え、だめ?ゆめちゃんといっしょにいたいんだけど」
きょとんとされるとなんだか愛嬌があって強く出られない。それにだめっていうわけじゃなくて。
「うーん、いいんだけどなんでかなって思って」
流星くんも「うーん」と唸った。
「ゆめちゃんのその真珠の指輪がすっごく気になったっていうのも本当なんだけどさ、はじめてゆめちゃんを見たとき、ぴぴっ!ときたんだよね」
「ぴぴ?」
なにそれ。
「うん。なんか『運命だ!』って思った」
華やかなイケメンが目をきらきらさせながらそんなことを言うものだから、とてもびっくりして、そしてちょっとどきどきしてしまった。
「そ、そうなんだ」
かっこよくて人気者の流星くんに運命なんて言われたら、わたしだって意識してしまう。好みじゃないとか思っていたのになんてちょろいのか。
……まあ、流星くんが恋愛的な意味で運命を感じているかはわからないけど。
事実はどうあれ、流星くんが自分から関わる女の子はわたしだけで、ちょっと浮かれていたのは事実。
「その指輪かわいいよね。ちょっと見せて?」
カフェで隣の席に座った女の子からそう声をかけられて、わたしは「うん、いいよ」と右手を差し出した。
「そうじゃなくて、外してほしいの」
「え?外すの?」
やだな、と思ったけど、知らない子だし「見るだけだよ」と注意して指から抜こうとして――大きな手が重なった。
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