転生令嬢はゆめかわいいをお望み

しおだだ

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◇◇◇

6 閑話

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「マリー、わたくしはゆめかわいいものが好きなの」

「はい、お嬢様。ところでゆめかわいいとはどういったものでしょう?」

「そうね、少し定義が難しいのだけど、共通するものがあるわ」

「それはなんですか?」


「わたくしがときめくかどうかよ!マリー、この部屋はゆめかわいくないわ!模様替えをしましょう!」


レイラは自室を見渡して宣言した。
侍女のマリーは「かしこまりました」と了承する。


「まずは壁紙を変えたわ。基本のピンクよ!最高!」

「さすがお嬢様、仕事が早いです」

「それから床ね。お父様におねだ…いいえ、お願いして、毛足の長い白のラグを用意してもらったわ」

「素晴らしい手触りですね」

「次にカーテンよ。お母様に相談して、ピンク系のものを探してもらったの」

「ローズピンクですね。金糸の織りが美しいです」

「すこし渋いのよね、もう少し淡い色がよかったわ」

「こちらも素敵ですよ、お嬢様」

「それからベッド。天蓋もベッドカバーもライラック色に染めさせたわ。なかなかでしょう?それから、これよ」

「これはなんですか?」

「ガーランドよ。このビジューをこうしてぶら下げるの」

「っ、お嬢様!きらきらしています!」

「ふふ、マリーもようやくわかってくれたみたいね」

「この大きな花輪は…?」

「生花を編んだのよ。壁にかけるの。花瓶に生けた花より素敵じゃない?」

「素晴らしいです!お嬢様!」

「それから仕上げにこのランプを……」

「お嬢様、これは……!!」



「レイラ、いるー?」

ノックをして、姉の部屋の扉を開いたトマは目を見開いた。

「なんだこの部屋、目がチカチカする…!!」




「マリー、わたくしはゆめかわいいものが好きなの」

「はい。存じております」

「フルーツ柄もかわいいわよねえ」

「お嬢様、御令嬢の嗜みといえば刺繍です。刺繍のモチーフにするのはいかがですか?」

「いいわね!さっそく先生をお呼びして!」

「かしこまりました」


侍女マリーの手配で、レイラの元にすぐさま刺繍の先生がやってきた。


「よろしくお願いしますね、レイラさん」

「はい、先生。このハンカチに刺繍すればいいのかしら?糸の種類が少ないわね」

「レイラさんはなにを刺すのでしょうか?」

「まずはいちごね」

「まあかわいらしいピンクのいちご」

「次はぶどうよ」

「水色のぶどうですか」

「次はオレンジ」

「薄緑と薄い黄色の…ライムかしら」

「どうですか?先生」

「うーん…」

「先生?」

「ええ、決してうまくはないのですが…。なんでしょう、歪みまで計算されたようなこの仕上がりは!」

「自分でいうのもあれだけど、へたうまってやつね!」

「素晴らしいです!お嬢様!」

「やめてちょうだいマリー、照れるわ」



「最近みんなエプロンやハンカチーフに刺繍を入れてるんだけど…」

トマは屋敷の使用人たちに流行っている刺繍のモチーフに首を傾げた。

「なんで果物があんなへんてこな色合いなんだ!?そして絶妙に下手!」




「ふつうの刺繍も飽きたわね。もっとかわいいのがいいわ。ビーズ刺繍にしましょう」

「ビーズ刺繍…ですか?」

「あら?ビーズはないのかしら?じゃあ小さなビジューを縫いつけて…でもこれ…やだちょっと…」 

「お嬢様、新作ですか?いちごの種がきらきらしていますね、とても素敵です!」

「あらロイド。でもちがうの、本当はビーズ刺繍がしたかったのよ。でもわたくしには難しくて…これをね、こうして…」

「ほう、ほうほうほう!なるほど!創作意欲が沸き立つようです!」


その後ロイドが作り上げた大作を見て、刺繍の先生は目を回した。


「なんでしょうこの芸術は!素晴らしいです!ええぇ、これが刺繍なんですか!?これは必ず流行りますよ!旦那様!奥様ぁー!!」

「きゃあああ!これ本当に素敵、次の夜会用のドレスに採り入れたいわ!」

「お母様、いくら小さいとはいえビジューですから、ドレスにこれだけの量を縫いつけたら重たくて動けません。だから夜空のように散らばる程度にしましょう」

「まあああ、素敵!レイラ素敵!」

「お父様、今後のために軽量化したものを作りましょう。ガラスでいいのです。けれど極小のものがいいですわ」

「簡単に言うけど、相当な技術が要るよね。まあいいか。あてがないわけじゃない、聞いてみよう」



「お母様の先日の夜会のドレス、きらきらしていてきれいだったなあ…」

トマは侯爵邸の廊下に飾られたロイドの大作絵画を見上げる。

「このモザイク画も見事だよなー。これを描けるすごい人がなんで姉様、ごほん、レイラに一目置くんだろう?」




「マリー、わたくしはゆめかわいいものが好きなの」

「はい。ビーズ刺繍はもうされないんですか?」

「ビジューね。ええ、あれはどちらかというとゴージャスかわいいで、わたくしが求めているものとは違うわ」

「そうでしたか。さて今度はなにを?」

「すこし気分転換してみようと思って」

「その心は?」

「マリー、ヘアアレンジよ!」


レイラとマリーは次から次へと新しい髪型に挑戦していた。ロイドの髪で。


「うーん、お嬢様むずかしいです」

「ここはもう少しゆるく結った方がいいわね」

「…あの、お嬢さん方?なぜ私が練習台になっているんですかね?」

「もちろんお嬢様のためです!!」

「あのね、マリー」

「いいじゃない。ロイドも似合ってるわよ」

「お嬢様までそんな、いてててて」

「あ、失礼しました。すこし加減がわからなくて。お嬢様の御髪でなくてよかったです」

「ちょっとマリー!?」

「ふふ。ロイドもマリーも仲良しね」



「おはようレイラ。今日も凝った髪型だなあ。夜会用かよ?早くない?」


毎朝顔を合わせる度にトマにそう言われ、レイラはついに爆発した。


「ちがうのよ!わたくしが追い求めているのはゆめかわいいであって、ゴージャスかわいいじゃないのよおおおお!!」
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