15 / 49
第2章 幼年期
第15話 二人の子供
しおりを挟む
俺は這う這うの程で村へ帰ってきた。柵を這いずりながら潜ると俺の異変を感じてか家畜たちが騒ぎだす。
その騒ぎを聞きつけた母さんが家から出てきて、柵近くに倒れている俺を見つける。
「イズミ!」
俺の名前を呼び、此方に駈けてくる。血を流しているのを見て怪我を確認し顔色が変わる。
「ごめんお母さん。」
「イズミ何がどうなって、、、いえ、先に回復魔法を、、、私の回復魔法では駄目だわ、シスターの所へ行かないと。」
初めは焦っていたが流石元冒険者、すぐに冷静になり怪我の具合を確認して自分では直せないと判断する。母さんは俺を抱き抱え教会へと走る。
教会では父さんとシスターが話していた。でも母さんに抱き抱えられた血塗れの俺をみると血相を変える。
「ケイト!イズミはどうなっている!」
「わからないわ、柵の近くで倒れていて見たら大怪我をしていて、、、シスター!回復魔法をお願い!」
「はい、わかりました!テーブルの上に寝かせてください!」
シスターはテーブルに寝かされた俺の脇腹あたりの血だらけの服を破り、傷口に手を当てて魔法を唱える。
「ハイヒール。」
神聖術レベル4の高位回復魔法だ。
回復魔法を掛けられている腹部が熱を帯び、痛みがぶり返してくる。痛みで体が跳ねるが父さんと母さんが押さえつけている。その間にシスターは更に魔力を込めて回復していく。
傷口が塞がってきたのか徐々に痛みが薄らいでいく。
「お父さん、シスター。迷惑を掛けてごめんなさい。」
「イズミ、まだ喋るな。」
「イズミ君、大丈夫よ。」
血を流しすぎていたけど少し回復してきたのが感じられる。
シスターが父さんと母さんに「傷は塞がったからもう大丈夫です。」と言っているのを聞いて俺は安心して意識を手放した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
気が付くと自室のベッドに寝ていた。体が気だるいけど上半身を起こして周りをみる。
どのくらい寝てたのだろうか、もう夜になっていた。
部屋は暗くなっているけど、キッチンの方から灯りが洩れている。聞き耳をたてると父さんと母さんの話し声が聴こえる。俺の怪我の話をしていた。
俺は怪我をした理由の説明と迷惑を掛けた謝罪をする為にベッドを降りる。一本角に突き刺された腹部の痛みは全くないけど、関節の節々が痛む。ベッドからキッチンへ少し歩くと俺の気配を感じたのか、母さんがこちらの部屋にくる。
「イズミ!目が覚めたのね、良かった!」
母さんは優しく抱き締めてくれる。
「母さん、おはよう。」
「馬鹿、もう夜中よ。元気そうでホント良かった。」
そうだよね、おはようはおかしいか。ごめんなさい、と先に言えばよかったかな。
「ほら、まだ起きなくていいからね、お水を飲むコップを取ってくるわ。」
そういや喉が渇いているな。母さんはありがとうと言う俺をベッドへ座らしてキッチン戻る。
入れ替り父さんが部屋に入ってきて『ライト』を唱える。今まで寝ていた俺の目に配慮してか、光量の少ないライトだ。
「イズミ、大丈夫か?」
いつもの大雑把な父さんと思えないほど優しい抑揚で声を掛けてくれる。
「うん、心配を掛けてごめんなさい、お父さん。」
「いや、気にするな、大丈夫ならそれでいい。今は休め。」
母さんがコップに水を入れて戻ってくる。俺はコップを受け取り一気にその水を飲み干すと少し気管に入ったのか咳き込んでしまう。
「ゴホッ、ゴホッ。」
「ほらほら、ゆっくり飲まないと。」
背中を擦ってくれる。そして俺の咳が落ち着くとベッドに寝かし頭を撫でてくれる。
父さんも母さんもなぜ怪我をしてたのか聞いてこない。さっきまで怪我の話をしていたはずなのに俺に負担をかけまいとしている。
俺は二人の優しさに目に涙を浮かべる。でも、甘えてばかりではいけない。全部本当の事は言えないけど説明をしないと。
「お父さん、お母さん、ごめん。オレ、一人で森に入ってたんだ。」
俺は魔物の森であったことを、封印術と神眼を伏せて話した。スキルが身に付いて魔物に勝てると思ってたこと、魔法を使ってみたかったこと、実際に魔物と対峙して魔法が通じなくて怖かったこと、そして腹を突き刺され死にかけたこと。
父さんと母さんは驚いていた。
「一人で森に近づいちゃダメって言ってたのに、、、それにイズミがもう魔法を使えるなんて。」
母さんは色々戸惑っている。子供が教えてもいない魔法を修得してるんだもんね。
「そうか、一人で森に入りホーンラビットと戦ってきたのか。負けはしたが生きて戻ってきたか、流石俺の息子だ。」
うぅん?てっきり怒られるかと思っていたけど変に褒められたぞ。
「あなた!」
母さんがキッと父さんを見る。
「いやいや、イズミは十分反省をしているし、同じ過ちを犯さない聡明な子供だ。それに俺も一人で魔物と戦うのは禁止されていたが勝手にいったものさ。ま、俺は勝ったけどね。」
と言うと父さんはニヤリと笑う。
「もう、あなたったら。」
父さんに呆れたのか、母さんはもう何も言ってこない。そんな母さんをみて父さんが冒険者時代の話を始める。主に自慢話だった。
俺は初めて聞く父さんと母さんの冒険者時代の話に興味津々で聞き入ってしまう。
多分、初めての戦闘で負けたり、色々反省している俺を元気づけようと話をしてくれている父さん。
その間も俺の体を気遣ってくれている母さん。
俺には前世があり、本当の二人の子供ではないと思っていたけど、でも二人は本当の子供として接していてくれる。愛情を持って俺にふれあってくれる。
二人の子供に生まれてきて本当に良かった。
その騒ぎを聞きつけた母さんが家から出てきて、柵近くに倒れている俺を見つける。
「イズミ!」
俺の名前を呼び、此方に駈けてくる。血を流しているのを見て怪我を確認し顔色が変わる。
「ごめんお母さん。」
「イズミ何がどうなって、、、いえ、先に回復魔法を、、、私の回復魔法では駄目だわ、シスターの所へ行かないと。」
初めは焦っていたが流石元冒険者、すぐに冷静になり怪我の具合を確認して自分では直せないと判断する。母さんは俺を抱き抱え教会へと走る。
教会では父さんとシスターが話していた。でも母さんに抱き抱えられた血塗れの俺をみると血相を変える。
「ケイト!イズミはどうなっている!」
「わからないわ、柵の近くで倒れていて見たら大怪我をしていて、、、シスター!回復魔法をお願い!」
「はい、わかりました!テーブルの上に寝かせてください!」
シスターはテーブルに寝かされた俺の脇腹あたりの血だらけの服を破り、傷口に手を当てて魔法を唱える。
「ハイヒール。」
神聖術レベル4の高位回復魔法だ。
回復魔法を掛けられている腹部が熱を帯び、痛みがぶり返してくる。痛みで体が跳ねるが父さんと母さんが押さえつけている。その間にシスターは更に魔力を込めて回復していく。
傷口が塞がってきたのか徐々に痛みが薄らいでいく。
「お父さん、シスター。迷惑を掛けてごめんなさい。」
「イズミ、まだ喋るな。」
「イズミ君、大丈夫よ。」
血を流しすぎていたけど少し回復してきたのが感じられる。
シスターが父さんと母さんに「傷は塞がったからもう大丈夫です。」と言っているのを聞いて俺は安心して意識を手放した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
気が付くと自室のベッドに寝ていた。体が気だるいけど上半身を起こして周りをみる。
どのくらい寝てたのだろうか、もう夜になっていた。
部屋は暗くなっているけど、キッチンの方から灯りが洩れている。聞き耳をたてると父さんと母さんの話し声が聴こえる。俺の怪我の話をしていた。
俺は怪我をした理由の説明と迷惑を掛けた謝罪をする為にベッドを降りる。一本角に突き刺された腹部の痛みは全くないけど、関節の節々が痛む。ベッドからキッチンへ少し歩くと俺の気配を感じたのか、母さんがこちらの部屋にくる。
「イズミ!目が覚めたのね、良かった!」
母さんは優しく抱き締めてくれる。
「母さん、おはよう。」
「馬鹿、もう夜中よ。元気そうでホント良かった。」
そうだよね、おはようはおかしいか。ごめんなさい、と先に言えばよかったかな。
「ほら、まだ起きなくていいからね、お水を飲むコップを取ってくるわ。」
そういや喉が渇いているな。母さんはありがとうと言う俺をベッドへ座らしてキッチン戻る。
入れ替り父さんが部屋に入ってきて『ライト』を唱える。今まで寝ていた俺の目に配慮してか、光量の少ないライトだ。
「イズミ、大丈夫か?」
いつもの大雑把な父さんと思えないほど優しい抑揚で声を掛けてくれる。
「うん、心配を掛けてごめんなさい、お父さん。」
「いや、気にするな、大丈夫ならそれでいい。今は休め。」
母さんがコップに水を入れて戻ってくる。俺はコップを受け取り一気にその水を飲み干すと少し気管に入ったのか咳き込んでしまう。
「ゴホッ、ゴホッ。」
「ほらほら、ゆっくり飲まないと。」
背中を擦ってくれる。そして俺の咳が落ち着くとベッドに寝かし頭を撫でてくれる。
父さんも母さんもなぜ怪我をしてたのか聞いてこない。さっきまで怪我の話をしていたはずなのに俺に負担をかけまいとしている。
俺は二人の優しさに目に涙を浮かべる。でも、甘えてばかりではいけない。全部本当の事は言えないけど説明をしないと。
「お父さん、お母さん、ごめん。オレ、一人で森に入ってたんだ。」
俺は魔物の森であったことを、封印術と神眼を伏せて話した。スキルが身に付いて魔物に勝てると思ってたこと、魔法を使ってみたかったこと、実際に魔物と対峙して魔法が通じなくて怖かったこと、そして腹を突き刺され死にかけたこと。
父さんと母さんは驚いていた。
「一人で森に近づいちゃダメって言ってたのに、、、それにイズミがもう魔法を使えるなんて。」
母さんは色々戸惑っている。子供が教えてもいない魔法を修得してるんだもんね。
「そうか、一人で森に入りホーンラビットと戦ってきたのか。負けはしたが生きて戻ってきたか、流石俺の息子だ。」
うぅん?てっきり怒られるかと思っていたけど変に褒められたぞ。
「あなた!」
母さんがキッと父さんを見る。
「いやいや、イズミは十分反省をしているし、同じ過ちを犯さない聡明な子供だ。それに俺も一人で魔物と戦うのは禁止されていたが勝手にいったものさ。ま、俺は勝ったけどね。」
と言うと父さんはニヤリと笑う。
「もう、あなたったら。」
父さんに呆れたのか、母さんはもう何も言ってこない。そんな母さんをみて父さんが冒険者時代の話を始める。主に自慢話だった。
俺は初めて聞く父さんと母さんの冒険者時代の話に興味津々で聞き入ってしまう。
多分、初めての戦闘で負けたり、色々反省している俺を元気づけようと話をしてくれている父さん。
その間も俺の体を気遣ってくれている母さん。
俺には前世があり、本当の二人の子供ではないと思っていたけど、でも二人は本当の子供として接していてくれる。愛情を持って俺にふれあってくれる。
二人の子供に生まれてきて本当に良かった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで
六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。
乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。
有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。
前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。
異世界へ転生した俺が最強のコピペ野郎になる件
おおりく
ファンタジー
高校生の桜木 悠人は、不慮の事故で命を落とすが、神のミスにより異世界『テラ・ルクス』で第二の生を得る。彼に与えられたスキルは、他者の能力を模倣する『コピーキャット』。
最初は最弱だった悠人だが、光・闇・炎・氷の属性と、防御・知識・物理の能力を次々とコピーし、誰も成し得なかった多重複合スキルを使いこなす究極のチートへと進化する!
しかし、その異常な強さは、悠人を巡る三人の美少女たちの激しい争奪戦を引き起こすことになる。
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
転生したら王族だった
みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。
レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる