格闘ゲーマーの異世界転生 チートスキルの封印術~あれ?思ってたのとなんか違う~

tatamiya

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第3章 旅立ち

第18話 模擬戦

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 右手には片刃の鉄剣、左腕には腕に填めるタイプの円形小盾、革の軽鎧と本気装備で父さんと対峙している。

 父さんも鎧や盾こそ装備していないが、狩りで使うミスリルの剣を持っている。でも、こちらの攻撃を剣ひとつで捌く気か。くそぉ、舐められてるな。今日こそは一太刀浴びせたい。

「いくよ、父さん!」

「何処からでもかかってこい。」

 力んでる俺の上段からの初撃は自然体の父さんに軽く避けられる。後ろに避ける父さんを追い、二撃、三撃と連続で攻撃を放つ。四撃目の右上からの袈裟斬りにミスリルの剣戟を合わされ弾かれる。
 力と技術の差からノックバックを与えられ、出来た硬直に回し蹴り。急いで盾で防ぐも蹴りの威力により2メートルほど飛ばされる。

 左腕の痺れで攻撃に移れないでいると、父さんは一気に距離を詰め、右肩を狙った突きを繰り出す。鉄剣で弾くも少しだけ肩をかすり服が切れる。
 切れた服をチラッと見て冷や汗が流れるけど、突きが弾かれ体勢を崩した父さんにお返しと言わんばかりかの渾身の突きを、でもただの突きでは防がれるので、認識阻害系スキル【幻影Ⅰ】ミラージュを重ね鉄剣を二本に見せ掛ける。
 見た目ではどちらが本物かわからない蜃気楼を帯びた突きを対処すべく【剣術Ⅱ】ソードアクセルを発動、父さんの元々の剣速と相まって凄まじい速さで二本の幻影を打ち破る。
 
 しかしこの武技、三秒間の剣速上昇の後に20/60秒=20フレームの硬直がある。追撃用にと左手で準備していた炎の矢をその硬直に合わせて解き放つ。

「フレイムアロー!」

 肩口に肉薄する矢の先端、ダメージが確定する!と勝利に息を飲む。

「ッ!」

 しかし時間が少し足りなかったのか、父さんは強引にそのばでスウェー、顔のすぐ目の前を炎の矢が通りすぎる。炎がギリギリだった為少し前髪が焼ける、焦げた匂いが香る。

「おっしぃ~」

 外野から声が漏れ、場の緊張が解ける。

 無くなった前髪を確認しながら父さんは声を掛けてくる。

「イズミ。」

「うん?」

「とっても強くなったね。俺は親として息子の成長を大変喜ばしく思う。」

 笑顔で俺の成長を祝ってくれている、と思いきや目が全然笑ってない。前髪が無くなったオデコには青筋が立っている。あ、前髪無くなって怒ってるなぁ。

 父さんはいい意味で少年の心を忘れない、悪い意味で大人げない、負けずぎらいな人だ。

「そんなイズミにお父さんの偉大さを見てもらおうと思う。」

「イエイエ、オトウサマノイダイサ、ワカッテイマス。」

「いくぞ!五連切り唐竹締め!」

 五連切り唐竹締め、、、父さんをギルド最強と言わしめた二つある必殺技のひとつ。【剣術Ⅴ】の武技『四連撃』の三撃目の後にあるキャンセルポイントで強引にキャンセルし、【大剣Ⅲ】の連続唐竹割りを繋げ繰り出す。シビアなタイミングが求められる、父さんにしか出来ない必殺技。父さんって性格は大雑把だけど技術に関しては凄く繊細、、だけれども、、。

「ちょっと待ってって!必殺技はダメだって!」

 俺の制止を全く聞かず武技の準備、ミスリルの剣が恍恍と光る。上級魔物すら屠る剣技への防御に意識を集中させる。

「くそぉっ!」
 迫る脅威に口調が荒くなる。

「【回避術】ソードダッジ。」
 一撃目は鉄剣で攻撃を逸らす。
「【軽盾術】ファジーガード。」
二撃目には円刑小盾がなんとか剣戟に追い付き防ぐ。
「【反撃術】ウエポンバッシュ!」
三撃目、剣の根元で父さんの攻撃を弾く、が鋭い攻撃に鉄剣が折れる。
 剣術レベル7、大剣術レベル6のシステムサポートを得た連続攻撃は俺の許容を越えている。もう防ぐ武技がない。しかし次にくるのは上段からの二連撃、上部に小盾を構え猛攻に備える。

 四撃目を気合いで円刑小盾で捉えるもその威力に膝が地面につく、盾の耐久度を越えたのか、小盾は砕けてしまう。
 最後の五撃目がくる、対応できる武技も魔法もない。防げる武器も防具もない、八方塞がりだ。ダメージを覚悟、体が硬直し目を瞑ってしまう。

「これで終わりだぁ!」

「なにが『終わりだ』ですか!ウォーターバレット!」
「プロテクション!」

 俺の目の前に魔力でできた透明な盾が現れミスリルの剣を弾く。弾かれてよろけた父さんに無数の水の弾丸が飛翔し吹き飛ばす。

「大丈夫ですか?イズミ君。」

「大丈夫だよ、ありがとうエステル母さん。」

 心配してくれるシスターに笑顔で応える。

「子供の人生終わらせてどうするんですか、まったくあなたわ。」

「いててて、、いや、全然本気ではなかったぞ、峰打ち、、、そう峰打ちだ!」

「あなたの剣、両刃じゃないですか、、、」

 父さんの言い訳に呆れる母さん。その横にいるやんちゃそうな笑顔をしている女の子が俺に話しかけてくる。

「あとちょっとで父さんやっつけれたのに、おしかったな、にいちゃん!」

「いや全然ダメだったよ、父さんをやっつけるのはフランに任せるよ。」

 さっきの外野から聞こえた声は妹のフランチェスカ。金色の髪を剣術の邪魔だと言いショートカットにしている。『剣術で一番強くなるんだ!』と、何故か父さんをライバル視している。

「にいさん、怪我してない?ヒールしとこうか?」

「お願いしようかな、ありがとう、マルカ。」

 フランの後ろにいたマルカの肩まである紫の髪を撫でながら回復魔法をかけてもらう。弟のマルカは優しくおとなしい、いつも怪我してまわるフランにヒールをかけている。


 この模擬戦は明日村を発つ俺が最後に、と、父さんに頼んだ。俺の実力では父さんに本気を出させることは出来なかった、必殺技の五連切り唐竹締めは餞別といったところだろう。

 向こうでシスターに回復されている父さんに改めて向き直る。

「父さん、手合わせありがとう。まだまだ父さんの足下にも及ばないよ。」

「いや、イズミは充分強いさ。イズミは自己評価が低い、もっと自信を持て。でも過信はするなよ。」と、 ニヒルに笑いアドバイスをくれる。こういうトコはカッコいいんだけどねぇ。

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