格闘ゲーマーの異世界転生 チートスキルの封印術~あれ?思ってたのとなんか違う~

tatamiya

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第3章 旅立ち

第24話 もう一回

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「兄ちゃん、そろそろ準備いいか?」

 俺は両手で頬っぺたを叩き気合いを入れる。

「ああ、いいぞ。一応聞くが俺は本気でいく、いいな?」

「なにいってるん、ウチはいつも本気や。本気やない勝負なんてオモシロクないやろ。」

 屈託のない笑顔を見せる女の子。ちょっと罪悪感もあるけど、そちらが加護の恩恵を受けてる分、こちらがユニークスキルを使用しても公平だよな。一回だけ、一回だけ勝って五万をてに入れるんだ。オッサンから巻き上げた金が俺の物になるだけだ。

「じゃ、いつでもいいぜ。」
「ほな、始めよか。」

 右手を組む、俺の手が少し汗ばんでいる。握った女の子の手から凄い力を感じる、やはりレベル8相当だ。
 俺も右手に意識を集中させ、バレないように小声で封印術を発動させる。

「レディーゴゥ!」
「フウインジュツ」

 女の子が力を入れる前に封印術を発動。先程の威圧感が消える。

 セキア  ♀  鬼人族  ??歳
 スキル  【スキル封印中 残9分58秒】
 ユニークスキル  【スキル封印中 残9分58秒】
 加護称号  鬼神の加護

もう普通の女の子だ。

「え?あれ?」
 女の子は一生懸命力を入れているけど、全然俺の腕は傾かない。逆に俺が力を徐々にいれていく。二人の腕が女の子の方に傾く。

「がぁぁ!」
 大きな果実がブルンと震える。
 気合いを入れているけどそんなことでは挽回出来ない。俺は今、心が鬼になっている。

「あぁん。」

 女の子の手の甲がテーブルに着く。初めて負けたのか凄く悔しそうにしている。

「勝負ありだな。五万貰っていっていいか?」

「今のはちょっと調子が悪かっただけや!もう一回、もう一回勝負や!」

「いや、俺はもういいよ。」

「アカン、勝ち逃げは許さへんで!」

 俺の右手を取りテーブルへと乗せる。

「さぁ、次こそは本気や!」

「しゃーねぇなぁ、もう一回だけだぞ。」

 テーブルの上にはまだ3、40万くらいありそうだ、あと10万くらいいいだろ。 

「レディゴウ!」
 先程よりスタートが早く気合いが入っているのがわかる。でも、まだスキルの封印は続いている。

「あああぁぁ!」
 可愛い顔を紅潮させて腕を倒しに来る。そんなピンク色になった顔に見とれながらも俺は容赦なく彼女の手の甲をテーブルに叩き付ける。

「はぁ、はぁ、はぁ。」
 肩で息をするとそれに併せて大きな胸も揺れる。周りのオッサン達から口笛が飛ぶ。

「もう満足しただろ、俺はもういくぞ。」

 これ以上は流石に罪悪感が。お金はもう充分だ。

「ちゃうねん、いま手に汗かいてて滑ってん。もう一回や。」

「いやいや、もう止めとこうよ、次負けたら20万だぞ。」

「テーブルの上のカネ、かき集めたら20万くらいあるで!だからもう一回や!」

「いやぁ、あるとかないとかじゃなくてぇ、、」

 俺が及び腰でいると、周りのオッサンからヤジが入る。 

「男前の兄ちゃん、彼女からの熱烈なラブコールに答えてやれよ!」
「そうだそうだ、女の子からお願いされて断るなんて男の恥だぜぇ!」

 こいつら、女の子の揺れる胸が見たいだけの癖に。でも、俺と女の子を囲み、逃がしてくれなさそう。

「さぁ、もう一回や!」

 うーん、やるしかないのか。これが終わればお金も無くなるし諦めるか。俺が女の子から巻き上げた感じになるけど、向こうからの挑戦だし、しかたがないよな。

 俺はテーブルに腕を起き女の子の手を握る。女の子は握りを確認し、合図を出す。

「レディー、ゴウ!」

 左手でテーブルの端を掴み両手の力で俺に勝とうとする。全力できているのか、段々体が汗ばんでいる。顔だけでなく、胸周りもピンクに色づいてきて、オッサンたちがざわめいている。
 これ以上女の子に恥ずかしい姿を晒させては駄目だな。ここは勝って後でお金を返せばいいか。俺は一気に力を入れ勝負をつける。

「もういいだろ、もう止めとこう。」

「はぁはぁ、違う、ウチはまだ負けてへん。」

 アカン、この子ギャンブルをしたら駄目なタイプだ。

「いやいやいや、もう三回は負けてるって!掛けるお金もないし、もうお開きだ。少しお金も返すし、な?」

「お金返すぅ、負けたお金恵んで貰うほどウチは落ちぶれてへん!ウチは勝負に勝って取り戻すんや!」

「でも、もうお金ないだろ?」

「うっ、ちょっと待ちぃ」
 後ろに立て掛けてあった彼女の身長くらいある大剣を指差して、

「これウチの家宝や!ホンマは、いくらお金積んでも売りに出さへんけど、35万でいい!これでもう一勝負するでぇ!」

「俺、大剣使えないんだけど、、、」

「要らんかったら売ったらええ、かなりの金額になるはずや。」

 大剣の相場がわからないけど、家宝って本当かなぁ。触って鑑定してみるか。

『覇山剣』  鬼神ウルヴァスが打った山をも斬る大剣。腕力に応じて攻撃力が上がる。

 おおう?本物の家宝じゃん、家宝どころか国宝クラスじゃね?これ35万じゃないだろ、億はこえるよぉ。

「あわわわ、駄目だって、これ家宝でしょ、そんなもの勝負に掛けたらご先祖様悲しむよぉ。」

「勝てばええねん!勝てば官軍や、オトンも言ってたわ。」

「君のお父さんもギャンブルしたら駄目な人かぁ。」

「さぁ、やるで。これが最後や。」

「はぁ、ホントに最後だよ。」

「レディィィゴゥゥ。」

 女の子は前屈みになって体重も掛けてくる。俺に女の子の顔と胸が肉薄する。いい匂いがする、女の子の汗の匂い。少しクラっときて力が抜け劣勢になるけど負けるわけにはいかない。俺もテーブルの端を掴み一気に挽回する。そのまま女の子を倒し勝利を納める。

 力尽きたのか、膝から崩れ落ち地面に座り込む。顔を覗きこんだら涙を流している。女の子を泣かすつもりはなかったんだけど、ちょっとやり過ぎたかな、途中で強引にでも止めておけばよかった。大剣は置いていこう。

「ほら、もういいだろ、家宝の大剣はいいから、俺はもういくぞ。」

 この気不味い空気の中から早く脱け出したい。ささっとこの輪から出るため振り向き行こうとすると、服の裾を捕まれる。

「最後に、最後にもう一回、兄ちゃん、一生のお願いやぁ。」
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