銀河のかなたより

羽月蒔ノ零

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銀河のかなたより

その3

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 マーリの希望で、4人は公園へとやってきた。ブランコや鉄棒、ジャングルジムなどが置かれている。彼らの星にはないもののようで、みんなまるで子供のように目をキラキラさせながら遊具を眺めている。

「これはなんだろう。オブジェのようなものだろうか。お、あそこに椅子らしきものがある。ここに座って眺めるのかな?」
 フィーモはベンチに腰掛け、すぐそばにあるブランコを眺めていた。

「違うよ違うよ。ここに座って遊ぶんだ」

 ブランコの乗り方を人に説明するのはこれが初めてだ。言葉で説明するのは意外に難しいのでとりあえずやって見せることにした。

「まずここに座って、ここを持って、地面を蹴って後ろへ、あとは足を伸ばしたりしながら漕ぐんだ。初めてだと難しいかもしれないな」

「ほお。そのように使用するのか。私もやってみよう」
 フィーモが異星人初のブランコに挑戦することになった。
「お、フィーモ、頑張れよ!」
「船長頑張って!」
ユイカリアとマーリが船長の勇敢なる姿を応援していた。

「よし、頑張るぞ! まずはここに座って、ここを持って、地面を蹴って、足を伸ばして……。おお! これは爽快だ! 風を切って飛んでいくような気分を味わえる。漕げば漕ぐほど、どんどん高くまで上昇するぞお! ……あれ? いや待って、なんだこりゃ。ちょっと高すぎない? 高いんですけど……。あれ? うわああ! いつの間にかこんな高さに! ぎゃあああ! 落ちるう! 落ちるう! おおおおお! ヒナタよ、どうすれば止まるのだあ?」

「そのまま何もしなければ、そのうち止まるはずだよ。しっかり捕まっててね!」

「なるほど。よし、静かにその時を待とう」
 フィーモはブランコのチェーンをギュッと握りしめながら、目を閉じ、ブランコが止まるのを待っていた。

「ほお。やっと止まった。なかなかスリルのある乗り物だ。これはなんという乗り物なのだ?」
「これはブランコっていう乗り物だよ。2人もやってみなよ!」

「よし! 私たちも挑戦してみよう」
 ユイカリアとマーリも、ブランコに挑戦してみることとなった。
 日奈太の説明と動作を思い出しながら、2人はブランコを漕いだ。

「うわあああ! すごい! これは楽しい! 実際に空を飛ぶのとは全然違う楽しさだねえ! あれ? マーリ、なんかすごい上手だね! もうフィーモよりも高い所まで行ってる。怖くないの?」

「うん。全然怖くないですよ! 捕まってれば落ちないし。すごい楽しいなあ。星のみんなにも紹介してあげたいな。工務店のチカゴローさんに頼んで作ってもらおうかな」

「あー、チカゴローさんは新しい物大好きだから、喜んで作ってくれるかもねえ」

 異星人たちはブランコを存分に楽しんでいた。

「楽しんでくれて僕も嬉しいよ。ブランコがないってことは、ジェットコースターなんかもないのかな?」

「ん? なんだそれは?」

「遊園地っていう、公園の規模を更に大きくしたようなところがあって、そこにブランコよりもっとすごいものがあるんだ」

「公園よりも大きく、ブランコよりももっとすごいものが? とても興味がある。そのユーエンチとは一体どのあたりに存在するのだ?」

「んー、いろんなところにあるけど、ここから一番近いのは、『リードセルワールド』かなあ。行ってみる?」

「うん。ぜひ行ってみたい!」
「わたしも! 楽しそうだなあ!」
「よし! では4人でそのリードセルワールドへ向かおう!」
 3人とも子供のようにワクワクしている。

「近いと言っても少し遠いかな。電車やバスで行くとなると1時間くらいかかるかも」
「よし、それでは我らの宇宙船で行こう」
 
 人気のない場所へ移動し、フィーモがカバンから宇宙船を取り出した。

「念のため、『電磁波透過装置』を作動させよう。よし、これで大丈夫。ヒナタよ、我々の宇宙船へようこそ!」
 何が起きたのかよくわからなかったが、何もない空間がいきなりドアのように開いた。
「うわあ! なんだこれ!?」
「先程話した『電磁波透過装置』を作動させているのだ。なので、外からはこの宇宙船の姿は見えない」
「はあ~なるほど。ほんとに、完全に透明になるんだねえ」
 
 4人は宇宙船へと乗り込んだ。
「みんなはどのくらいの時間をかけて地球までやってきたの?」
「地球の時間で、およそ3年ほどだ」
「へえ~。結構な長旅だったんだねえ。けど地球の技術だと、たった3年じゃ太陽系を脱出することすらできないや。どんな技術を使ってるの?」
「『フォトンルートショートカット』という技術を使っているんだ。『FRS』と呼ばれている。電磁波の△×○△□○×□、ん? 電磁波の△×○△□○×□、ありゃ、どうもこれに関しても地球の言葉には置き替えられないようだ。まあ簡単に言うと、光の速度を超えることなく光よりも速く移動できる方法なのだ。お、これは言えた!」
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