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嬉しいお話
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私が慌てて、言い争いをしているお姉様とスワルス様の前に飛び出ると、二人の視線が瞬時に私の腫れた頬に向けられました。そして、お母様と同じようにお姉様も、怒りで眉を吊り上げ、顔を歪ませたのでした。
「君はこれでも平気なのか!?こんな!!・・・こんなこと君は、許せるのか!?」
いつも穏やかなスワルス様が真っ赤な顔をして、私の頬に手を伸ばし大きな声で怒鳴ったものだから、驚いた私の肩がビクッと飛び跳ねてしまいました。
お姉様は、そんな私を自分の方へ引き寄せ、腕で庇いながらスワルス様を責めるように睨みつけました。
「私だって許せないわ!でも、だけど・・・まだ可能性があるなら、もう少しだけ―――」
「だから!それは一体なんなんだ!それは、ユニにとって本当に幸せなことなのか!?ずっと見てきたけれど、僕の目には決してそうは映ってなかった。こんなに長い間チャンスを与え続けたにもかかわらず、結局こうなってしまったじゃないか!相手がその器じゃない証拠だろう!!」
二人の怒鳴り合いは、騒ぎを聞きつけたお父様が来るまで続きました。私の名前をチラチラ出しているところを見ると、二人の喧嘩の原因はどうやら自分のようです。自分のせいで仲の良い二人がこんなに揉める姿を見て、私は、申し訳なくて涙が出そうでした。
「二人共、少し落ち着いてくれないか? ユニが可哀想で見ていられないよ。」
お父様の声で二人の視線が私に向きますが、目に涙をいっぱい溜めて、オロオロと二人を見ている私に気付いたらしく、二人の怒鳴り声は一瞬で静まりました。
その後、私達はお父様の執務室に呼ばれました。そこでスワルス様が、なんと私に希望をくださったのです。
「ユニ、嫌じゃなければ、僕の従弟と会ってみてはどうかな?彼は現在、リヴェル辺境地で騎士団に所属しているんだ。年齢は君の―――」
「えっ!!?? リヴェル辺境地!? えっ!?アーレン辺境伯のおられる!? えっ?本当ですか!?辺境地?本当に!?」
「えっと・・・え?どうしたの? そうだけど・・・やっぱり駄目だった?」
「行きますっ!! 辺境地!! 行きますわ!!いつですか?明日?明後日ですか? さあ、では、すぐに準備しなくては!!大変だわ!!ああ、どうしましょう!!」
「あれ?・・・えっと・・・ミズリー?これは?」
先ほどまでベソベソ泣いていた私の、あまりの喰いつきに驚いたスワルス様がお姉様に助けを求めています。
「ああ、ユニはアーレン辺境伯のファンだから・・・それも怖いくらいの大ファンよ。」
お姉様がお父様の方を向いて、目で合図を送ると、お父様は一つ頷いて話始めました。
「ああ、そうだったね・・・。まだ10歳くらいの頃だったかな、アーレン閣下と結婚するにはどうしたらいいか毎日毎日、しつこくしつこく、手当たり次第に周りの大人に聞いていたね・・・。壁に閣下の新聞の切り抜き貼ったりして。」
「そうそう!あの怖い顔の姿絵が載ってる新聞ですわ。私、その前を通り過ぎるたびにアーレン閣下に凄まれている気がして、毎日ビクビク生活していたのよ・・・。それでね、その時アーレン閣下はすでに結婚されてて・・・そしたら、どこで覚えてきたのか、今度は妾になると騒ぎだして・・・、ねぇ、お父様?」
「ああ、幼い娘から妾の話をされて、私はしばらくユニの顔を見る度に涙が出たよ・・・。」
そう言ったお父様は、当時を思い出しているのか、遠くを見つめて瞳を潤ませているのでした。
「二人共、やめてください!!そんな昔のこと。あの時は幼かったのです。そうです! 今は違います・・・。そんな、まさか!未だに狙ってるなんて!妾じゃなくても、せめてアーレン閣下のお傍に仕えたいとか・・・。ええ、思ってませんとも!」
それを聞いたお姉様は、眉を下げて首を傾げたかと思うと、残念な者を見るような目で私を見ていましたし、お父様などは、窓の外を眺めて現実から目を逸らしております。
「え・・・ちょっと待って・・・ユニ? まさかとは思うけど、会いたいのは僕の従弟じゃなくて、アーレン閣下だったりするのかな?」
「んっ!? いやっ、まあ、何でしょう・・・そんな・・・ことは・・・ないような・・・気がしないような・・・。あー・・・えっと・・・。」
私が、しどろもどろになりながらも、なんとか答えようと言葉を選び悩んでいると、
「はぁー・・・。」
と、私以外の三人から溜息のようなものが聞こえました。
が、知らんぷりしましょうかね・・・。
「君はこれでも平気なのか!?こんな!!・・・こんなこと君は、許せるのか!?」
いつも穏やかなスワルス様が真っ赤な顔をして、私の頬に手を伸ばし大きな声で怒鳴ったものだから、驚いた私の肩がビクッと飛び跳ねてしまいました。
お姉様は、そんな私を自分の方へ引き寄せ、腕で庇いながらスワルス様を責めるように睨みつけました。
「私だって許せないわ!でも、だけど・・・まだ可能性があるなら、もう少しだけ―――」
「だから!それは一体なんなんだ!それは、ユニにとって本当に幸せなことなのか!?ずっと見てきたけれど、僕の目には決してそうは映ってなかった。こんなに長い間チャンスを与え続けたにもかかわらず、結局こうなってしまったじゃないか!相手がその器じゃない証拠だろう!!」
二人の怒鳴り合いは、騒ぎを聞きつけたお父様が来るまで続きました。私の名前をチラチラ出しているところを見ると、二人の喧嘩の原因はどうやら自分のようです。自分のせいで仲の良い二人がこんなに揉める姿を見て、私は、申し訳なくて涙が出そうでした。
「二人共、少し落ち着いてくれないか? ユニが可哀想で見ていられないよ。」
お父様の声で二人の視線が私に向きますが、目に涙をいっぱい溜めて、オロオロと二人を見ている私に気付いたらしく、二人の怒鳴り声は一瞬で静まりました。
その後、私達はお父様の執務室に呼ばれました。そこでスワルス様が、なんと私に希望をくださったのです。
「ユニ、嫌じゃなければ、僕の従弟と会ってみてはどうかな?彼は現在、リヴェル辺境地で騎士団に所属しているんだ。年齢は君の―――」
「えっ!!?? リヴェル辺境地!? えっ!?アーレン辺境伯のおられる!? えっ?本当ですか!?辺境地?本当に!?」
「えっと・・・え?どうしたの? そうだけど・・・やっぱり駄目だった?」
「行きますっ!! 辺境地!! 行きますわ!!いつですか?明日?明後日ですか? さあ、では、すぐに準備しなくては!!大変だわ!!ああ、どうしましょう!!」
「あれ?・・・えっと・・・ミズリー?これは?」
先ほどまでベソベソ泣いていた私の、あまりの喰いつきに驚いたスワルス様がお姉様に助けを求めています。
「ああ、ユニはアーレン辺境伯のファンだから・・・それも怖いくらいの大ファンよ。」
お姉様がお父様の方を向いて、目で合図を送ると、お父様は一つ頷いて話始めました。
「ああ、そうだったね・・・。まだ10歳くらいの頃だったかな、アーレン閣下と結婚するにはどうしたらいいか毎日毎日、しつこくしつこく、手当たり次第に周りの大人に聞いていたね・・・。壁に閣下の新聞の切り抜き貼ったりして。」
「そうそう!あの怖い顔の姿絵が載ってる新聞ですわ。私、その前を通り過ぎるたびにアーレン閣下に凄まれている気がして、毎日ビクビク生活していたのよ・・・。それでね、その時アーレン閣下はすでに結婚されてて・・・そしたら、どこで覚えてきたのか、今度は妾になると騒ぎだして・・・、ねぇ、お父様?」
「ああ、幼い娘から妾の話をされて、私はしばらくユニの顔を見る度に涙が出たよ・・・。」
そう言ったお父様は、当時を思い出しているのか、遠くを見つめて瞳を潤ませているのでした。
「二人共、やめてください!!そんな昔のこと。あの時は幼かったのです。そうです! 今は違います・・・。そんな、まさか!未だに狙ってるなんて!妾じゃなくても、せめてアーレン閣下のお傍に仕えたいとか・・・。ええ、思ってませんとも!」
それを聞いたお姉様は、眉を下げて首を傾げたかと思うと、残念な者を見るような目で私を見ていましたし、お父様などは、窓の外を眺めて現実から目を逸らしております。
「え・・・ちょっと待って・・・ユニ? まさかとは思うけど、会いたいのは僕の従弟じゃなくて、アーレン閣下だったりするのかな?」
「んっ!? いやっ、まあ、何でしょう・・・そんな・・・ことは・・・ないような・・・気がしないような・・・。あー・・・えっと・・・。」
私が、しどろもどろになりながらも、なんとか答えようと言葉を選び悩んでいると、
「はぁー・・・。」
と、私以外の三人から溜息のようなものが聞こえました。
が、知らんぷりしましょうかね・・・。
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