花言葉は「私のものになって」

岬 空弥

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 ライナーは、周りの人間に知らしめるかのように、「ユニ」と親しげに呼ぶと、ユニーナを庇うように腕の中に包み込んでいる。

(これではまるで、あいつがユニーナの婚約者みたいじゃないか!!ユニーナもなぜ安心しきった顔であいつの腕に抱かれているんだ!!)

今のアレイドにとって、婚約者という肩書きだけが、ユニーナとの唯一の繋がりだった。しかし、今はそれすらもライナーに奪われてしまうように思えて、自分の気持ちを抑えることができなくなってしまっていた。そうして怒ったアレイドが怒鳴りながらライナーとユニーナを引き剝がすと、何を勘違いしたのか、それを見ていた令嬢達も再度騒ぎ出し、それに伴い周囲の関係ない者達も好き勝手言い始めた。

しかし、そんな騒音の中、アレイドの後ろから「パン!」と普段聞きなれない音が響くと、その場が一瞬で静まり返った。咄嗟に後ろを振り返ると、震える手を自分の頬に当てて、驚いた顔で目の前の令嬢を凝視しているユニーナが目に入った。ユニーナの前に立つ令嬢は、興奮で顔を赤くして、自分の立場をわきまえろなどと言っている。しかも、もう一度殴りつけるつもりなのか、右手を振り上げていた。

アレイドは、驚きながらも、ユニーナと令嬢の間に入ろうとした。しかし、アレイドよりもライナーの方が早く、すぐにユニーナの腕を取ると自分の胸に抱きかかえてしまった。ライナーの動きに怒りを覚えたアレイドだったが、仕方がなく令嬢の振り上げた手を掴み、上に捻り上げた。ユニーナに手を上げた令嬢への怒りと、ユニーナを抱きしめているライナーへの怒りでアレイドの腕にもぎりぎりと力が入っていた。

 それからは、思い出したくもないことばかりだった。
自分には、もう利用価値がないからさっさと解放してくれと言うユニーナに、彼女の気持ちも考えろとライナーが恋人面して言っていた。あのお茶会でアレイドとユニーナの仲を壊した友人二人が、ミズリーはもう諦めろなどとほざいて、誤解を更に悪化させていた。

アレイドが正気に戻った時には、ライナーに暴力を振るい、情けなくユニーナに追いすがった後だったのだ。



「・・・・ふむ。」

 ここまで聞いたスワルスは、疲れた様子で頷くと、両手で自身のこめかみを押さえた。男爵もミズリーも眉を下げてどうしていいかわからないような引きつった笑みを浮かべている。アレイドの父親ですら、あまりに残念すぎる息子から視線を逸らし、何もない天井をただ見上げているのだった。

「・・・うん。まず君は、非常に嫉妬深く、見た目からは想像できないほど単純な性格。その上、要領もとびきり悪いと・・・。一方、ユニは・・・、思い込みがひど過ぎて取り付く島もない。と、まあ、そんな感じの解釈でいいだろうか。」

その場の全員が、スワルスの方を向いて何も言わずに頷いている。

「ふむ。まあ、なんとなく解ったかなぁ・・・。しかしなぁー・・・、ユニを守る為に令嬢達の相手をするって、どうしたらそんな発想になるんだ?それじゃあ、ユニに全く気持ちが伝わらないだろう?・・・意味が解らないな。 あと、ユニは君の話を聞いてないんじゃなくて、ただ無視してるってことだから、聞こえてはいるんだろう?だから、君が話続けていれば、誤解が解ける日は必ず来るだろう?」

スワルスが厳しい顔をアレイドに向けると、それまで黙って話を聞いていたミズリーが二人の話に入ってきた。

「あの、その説明は私がするわ。実は、学園に入学してからね、先ほどの話にもあったように、ユニは何人ものご令嬢達から、随分といろいろ言われていたらしいの。私達に心配かけないようにユニは何も言ってこなかったんだけど・・・、私の友人の妹さんが、ユニのことを心配して私によく教えてくれていたの。ユニはなんでもないように振舞っていたんだけど、やっぱり辛かったのでしょうね。爵位の高い令嬢達に随分と頻繁に呼び出されていたようで、入学してからできた友人も皆、離れて行ってしまったそうよ。学園ではいつも独りぼっちで行動しているって教えてもらったわ。そのうち、だんだん食欲もなくなってきて、家族の前でも笑えなくなってしまってね、理由を聞いても教えてくれないから、私達家族も本当に心配していたの・・・。」

ミズリーは当時のことを思い出しながら、ゆっくり話始めた。
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