花言葉は「私のものになって」

岬 空弥

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花言葉は「私のものになって」

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「ですが、あの時、私は確かに聞きました! それに、その時頂いたブローチだって!お姉様は、真っ赤な薔薇を贈られて愛の告白を受けたではありませんか!
・・・私のは、草でしたけど。」

そう息巻く私に、お姉様はどこか寂しそうに、そして憐れむような視線を向けてきたのです。

「ねぇ、ユニ・・・。14、15歳の男の子が、赤い薔薇の花言葉を意識しながらブローチを選んで、大勢の人の前で自分の気持ちを相手に伝えようとするかしら? しかも薔薇の花束でもなく、ブローチよ? 考えてみて? 当時のアレイドって、今のリョシューと同じくらいの年齢よ?」

「うっ・・・・。」

(リョシュー? くっ・・・それは・・・ないわ。そもそもあの子、花言葉なんて一つも知らないんじゃないかしら・・・。でも、薔薇の花言葉くらいなら知っているかしら?でも、知っていたとしてもお姉様のお友達や、他の人がたくさん居る前で告白なんて・・・ない・・・かもしれない。)

「それとね、あなたは当時から、草とか雑草なんて言って、プレゼントされたブローチにケチをつけていたけれど、あれは四葉のクローバーよ? ユニ、四葉のクローバーが幸運の象徴なのは知っているわよね?では、四葉のクローバーの花言葉は知ってる?」

(ん? 花言葉って花だから存在してるものでしょう?草に花言葉なんてあるのかしら? ぺんぺん草とか?オオバコとかも?)

首を傾げてお姉様の顔をじっと見ていると、お姉様はにっこり微笑み教えてくれました。

「幸運と、もう一つの意味は、 【私のものになって】 」

「あなたが、そんなに花言葉を意識するなら、あなたが貰った四葉のクローバーの意味も、ちゃんと知っておかないとね! あと、アレイドが教えてくれたんだけれど、当時の彼は花言葉に興味はなかったようね。でも、自分の瞳の色は意識して渡したって言っていたわよ。」

(私のものになって・・・。緑の瞳・・・。本当にそうだったの?でも、)

「随分前にアレイド君に聞いた話だが、お茶会でお前たち姉妹の話を持ち出したのは、当時、何度もユニに釣書を送ってきた子爵家の子息なんだよ。ユニにはアレイド君がいたから、その都度断っていたのだけれど、彼からしたら、アレイド君にもユニにもあまり良い印象を持っていなかったのかもしれないね。これがどういう意味なのか、今のユニならわかるね? このことを踏まえて、当時のことを思い出してごらん? ユニが偶然聞いてしまった話にアレイド君の声はあったかい?」

「そんな・・・わからないわ。」

お父様の話に、私が青い顔でふるふると首を振ると、

「あらあら、あの頃のユニなら、大好きなアレイドの声くらいすぐにわかるわよね?」

それまで黙って話を聞いていたお母様が、いたずらに目を瞬きながら得意げな顔で私を見てきました。

「ユニ?何故アレイド君からではなく、私達四人から彼の話をされるのか、理由がわかるかい? ユニには心当たりがあるのではないかい?」

お父様が優しく訪ねてきましたが、その優しい声と表情はなぜか一致していませんでした。

(お父様、目が怖い・・・。はっ!!お姉様も!? えっ!?お母様まで!!)

優しそうな微笑みを称えて家族が私の方を見ていますが、皆、目が笑っていません。

(怖い。どうしよう・・・。)

私は、忙しなく目を泳がせながら返事をしました。

「はい・・・。何度も婚約者様は言っていました。誤解だと・・・。ですが―――」

「信じることが怖かった?」

お母様の言葉がナイフのように胸に刺さるのを感じました。

「はい・・・。それを信じて裏切られた時、私はもう、生きて行けないと思いました。」

「ユニ、なぜそこまで・・・。」

スワルス様が、信じられないと言うように、まるで痛みを耐えるような顔で私を見つめていました。

「・・・私には、自信がありませんでした。あの時の私は、彼に裏切られる現実からひたすら逃げ回っていたのです。」

「ユニ、あなた、まだそんなに・・・。」

お母様も痛ましそうに呟いています。

「私はお姉様が大好きです。絶対嫌いになどなりたくない・・・。だから、だからたくさんのことから逃げ続けるのです。だっていくら頑張っても、どんなに努力しても、私は誰からも必要とされないんですもの。」

私の目から大粒の涙が一粒零れました。お父様もお母様も目を伏せて苦しそうな顔をしていました。お姉様が優しく背中をさすってくれていますがお姉様の目からも涙が零れていました。

「彼が、唯一、私の心の支えでした。お姉様ではなく、私の方が好きだと言ってくれたのは彼一人でしたから・・・。美しい男爵令嬢の妹じゃなく、バーナーズ家の美人じゃない方でもなく、姉妹の頭の悪い方でもない。彼だけが、出来損ないの私なんかを大切にしてくれたから・・・。でも、それが間違いだと知った時、私の心は壊れてしまったのかもしれません。もう、これ以上傷付きたくない・・・。私はもう、恐いのです。・・・スワルス様、どうしても私は辺境地に行けませんか?お父様、他国でもかまわないのです。私個人を必要としてくれる人が、きっとどこかにいると思うんです。私をただのユニーナとして好きになってくれる人に、私は巡り合いたい・・・。」

「駄目だ!!」

その時、大きな声と同時に勢いよくドアが開いたかと思うと、いきなり婚約者様が飛び込んできました。泣きはらしたような真っ赤な瞳で私の姿を捕らえると、駄目だ!と、何度も言いながら、私を強く抱きしめたのでした。
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