二年後、可愛かった彼の変貌に興ざめ(偽者でしょう?)

岬 空弥

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突然の告白

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 少し腰を屈めたエリシアが、艶やかな黒髪をさらりと揺らしながらユーレットの顔を嬉しそうに覗き込んだ。

「おはよう!」

いつもと同じようにベンチで本を読んでいたユーレットがその声に顔を上げると、長すぎる前髪で顔の半分を隠した自分の姿が、彼女の黒い瞳に映り込んでいた。

白く透き通った肌に、この国では珍しい黒曜石の瞳。洗練された仕草は美しく、女性にしては少し高めの身長が彼女のスタイルの良さを引き立てていた。一見すると、どこか近寄りがたい雰囲気を持つ美人令嬢の彼女であったが、自分に向ける微笑みは殊更に甘い。

あえて無表情を取り繕い 「うん」 とだけ返事をするも、そんなことはどうでもよいとばかりに、彼女はユーレットに体を寄せてベンチに座ると細く長い指先でユーレットの前髪をスッと横に流してその薄茶色の瞳を覗き込んだ。

「今日も良い天気ね!うふふっ、今日も朝から大好きなユーレットに会えて嬉しいわ。きっと良い一日になるわね!」

そう言って頬を染め上げてにっこり微笑むエリシアは、当たり前のようにユーレットの手を取った。

16歳になったばかりのユーレットは、未だ成長期の真っ最中だった。ほっそりとしたエリシアの両手に包まれた自分の手が彼女よりも小さいことにチクリと胸が痛むのを感じる。

「もう教室に行く」

乱暴に手を離したユーレットは、彼女に目を向けることなく立ち上がると背を向けて歩き出した。

「あっ、待ってユーレット。途中まで一緒に行きましょう」

慌てて後を追いかけるエリシアが、ユーレットの隣に並んで歩き出す。
残念なことに、未だ成長途中であるユーレットの身長は、二歳年上のエリシアの肩までしか届いていなかった。



『突然ごめんなさい。でも・・・もう、我慢できないくらいあなたが好きなの。迷惑かけないようにするし、絶対邪魔するような真似もしないから、どうか・・・あの、・・・お友達になってはいただけませんか?』

そう言って、一人ベンチに座って本を読んでいたユーレットを驚かせたのは、彼が学園に入学してまだ一週間の頃だった。

その言葉通り、彼女はどんなユーレットも大好きな様子であった。彼女に言わせれば、この国にありふれている自分の茶色い髪と瞳は、どんな高価な宝石よりも価値があるらしいし、成長期ならではのすぐに裏返ってしまうガラガラ声に両手で口を押さえ 「ゾクゾクするわっ!」 と、一人で身悶えていたりもする。
寝癖が――、などというミスをおかしでもすれば、あらゆる角度から 「かわいい!」 と、30回ほど唱えた上で直さないでしばらくそのままでいてほしいと涙目で懇願される始末であった。

そんな一方的な愛情をぶつけてくるエリシアに対しユーレットの態度はというと、まるで興味がないような感情のこもらないものが大半であった。

 取り立てて人の目を引く容姿でもないユーレットは、アルゴーツ伯爵家の次男でしかない。幼い頃より文武両道で優れた容姿の兄と比べられ過ぎたせいもあってか何事に対しても関心や興味が持てなくなっていた。やる気のないユーレットに人より秀でた所は見当たらない。

そんな自分が、昔からの名家であるコットワール侯爵家の一人娘にこれほどまでの好意を寄せられる理由がどうしてもわからない。

そしてそれは、ユーレットの周りの人間から見ても理解しがたいことの一つであった。

 何一つ努力せずにコットワール侯爵家への切符を手に入れてしまったユーレットを爵位が用意されていない次男、三男である友人達は当然良く思わなかった。

「騙されているんだろ? お前をからかって陰で友人と笑ってるとかさ」

「身長差がすごいな。姉弟どころか親子みたいだぞ。 彼女は美人だけど、俺は小さくて可愛らしい女の子が好みだなぁ」

「この国では珍しい髪色だけど、やはり黒って暗い印象を与えるよな・・・。俺はやっぱり金糸のような眩しい髪色に目が行ってしまうよ」

ユーレットも馬鹿ではない。これがモテない男のやっかみであることくらい知っている。
しかし、分かっていながらも年若いユーレットの気分を悪くすることに、彼らは少なからずも成功していたのだった。
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