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彼の嫌なことは絶対にしない
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日に日に態度が悪くなるユーレットに、エリシアも当然気が付いていた。
入学式で会場入りしたユーレットに一目惚れして以来、どうやっても彼との接点を見つけることの出来なかったエリシアが取った行動は、単刀直入に本人に告白するという、あまりにも唐突なものであった。
将来、侯爵家を継がなくてはいけないという責任感が彼女から女性の喜びを奪っていたのかもしれない。
広大な領地と領民の生活が自分にかかっているという重圧を受けながらも、その期待に応えるべくエリシアは必死に学んで来た。そのせいもあってか、気付いた時には友人達が好む眩しく煌びやかな世界に自分が全くついて行けていないことを知るのだった。
どんなに人気のある男性も彼女の瞳には特別な人として映らなかった。どんなに綺麗なドレスであっても、どんなに可愛い雑貨であっても真面目なエリシアが優先するのは将来に向けての勉強だった。
もちろん自分だって、それらを見て綺麗だし可愛いとは思う。しかし、どうしてもそれが欲しいかと聞かれれば、答えはやはり 「いいえ」 だった。
なので初めてユーレットを見た時の衝撃は、忘れたくても忘れられない。そして、その日から始まった心躍るような素晴らしい日々をエリシアは全力で楽しんでいた。
唖然とする友人達に向かって大好きなユーレットの話をするのがこんなに幸せなことだなんて知らなかった。
今日の彼はどんな表情だったか、自分は今朝こんなことを言われた。大好きなユーレットの一挙一動を細かく友人に話して、その感想を求めたりもする。今までは女の子の会話に入っていけなかった自分が、今はなんと、皆の会話の中心となりキャッキャしているのだ。お互いの好きな人の話がこんなに楽しいことだなんて思いもしなかった。
それまで唇を噛みしめ、机に噛り付くようにして学んできたものが、将来もしかしたら自分の隣に立つかもしれない大好きなユーレットの為と想像してみたら、まだまだ・・・、いや、もっともっと頑張れると力がみなぎって来るのも驚きであった。
様々な妄想をしながら目をハートにして浮かれているように見えるエリシアであったが、戸惑う彼に爵位をチラつかせて強引に自分の気持ちを押し付けたりは絶対にしない。なによりもユーレットの気持ちを一番大切に思っていた彼女は、本当に友人以上の関係を求めるようなことはしなかったのだ。
エリシアにとってユーレットは、随分と遅れて来た初恋の人であり、それまで恋など経験したことのない彼女には、本当にありがたく尊いものに映っていた。
彼の身長が低かろうと、容姿にそれほど特徴が見当たらなくとも、エリシアには彼の全てが愛おしい。
なので、どんなに自分が彼の全てを欲しようとも、彼の嫌がるようなことは絶対にしないと固く誓っていた。
そして、そんなエリシアの純粋で優しい気持ちをユーレットは全て見ていた。
あえて迷惑そうな態度をとる幼い考えの自分を見ても、エリシアは怒るどころか、いつも申し訳なさそうに気を遣っていた。
「私ったら・・・またこんなに一人で話し続けてしまって。こんな話つまらないわよね。ごめんねユーレット。もう・・・やだな、本当に恥ずかしい・・・。今の話はなかったことにしてね?ちょっとお友達から聞いたものだから、ついね・・・、ふふっ、きっとユーレットと一緒ならとっても楽しいだろうなって想像してしまっただけなの」
そんなエリシアを見た時のユーレットは、決まって心の中で酷く慌ててしまう。
本来、こんな綺麗な女性にこれほどまでの好意を寄せられて気分を害する男なんていない。
なんの取柄もないチビの自分をどうしてここまで大切に想ってくれるのかは分からないが、外見や家柄も良い上に、思いやりに溢れたエリシアをどうしたって嫌いになんてなれる訳がない。
「カフェに行きたいなら、そう言えばいい」
なのにユーレットの態度は、いつだって優しく接したい心の中とは反対の酷いものばかりだった。
伸び悩んでいるのは彼の身長だけではない。ユーレットの心も、まだまだ成長途中なのである。
だが、目も合わさず怒ったような口しか利けない、そんな感じの悪いユーレットに、エリシアは溢れんばかりの笑顔を向ける。
「え?やだ・・・嬉しい。そんなこと言ってくれるの?・・・ユーレットってば本当に優しいのね・・・」
薄っすら涙まで浮かべて幸せそうに微笑むエリシアだが、だからといってこの先二人が一緒に出掛けることにはならない。
なぜなら、ユーレットの嫌がることをエリシアは絶対にしないからだ。
入学式で会場入りしたユーレットに一目惚れして以来、どうやっても彼との接点を見つけることの出来なかったエリシアが取った行動は、単刀直入に本人に告白するという、あまりにも唐突なものであった。
将来、侯爵家を継がなくてはいけないという責任感が彼女から女性の喜びを奪っていたのかもしれない。
広大な領地と領民の生活が自分にかかっているという重圧を受けながらも、その期待に応えるべくエリシアは必死に学んで来た。そのせいもあってか、気付いた時には友人達が好む眩しく煌びやかな世界に自分が全くついて行けていないことを知るのだった。
どんなに人気のある男性も彼女の瞳には特別な人として映らなかった。どんなに綺麗なドレスであっても、どんなに可愛い雑貨であっても真面目なエリシアが優先するのは将来に向けての勉強だった。
もちろん自分だって、それらを見て綺麗だし可愛いとは思う。しかし、どうしてもそれが欲しいかと聞かれれば、答えはやはり 「いいえ」 だった。
なので初めてユーレットを見た時の衝撃は、忘れたくても忘れられない。そして、その日から始まった心躍るような素晴らしい日々をエリシアは全力で楽しんでいた。
唖然とする友人達に向かって大好きなユーレットの話をするのがこんなに幸せなことだなんて知らなかった。
今日の彼はどんな表情だったか、自分は今朝こんなことを言われた。大好きなユーレットの一挙一動を細かく友人に話して、その感想を求めたりもする。今までは女の子の会話に入っていけなかった自分が、今はなんと、皆の会話の中心となりキャッキャしているのだ。お互いの好きな人の話がこんなに楽しいことだなんて思いもしなかった。
それまで唇を噛みしめ、机に噛り付くようにして学んできたものが、将来もしかしたら自分の隣に立つかもしれない大好きなユーレットの為と想像してみたら、まだまだ・・・、いや、もっともっと頑張れると力がみなぎって来るのも驚きであった。
様々な妄想をしながら目をハートにして浮かれているように見えるエリシアであったが、戸惑う彼に爵位をチラつかせて強引に自分の気持ちを押し付けたりは絶対にしない。なによりもユーレットの気持ちを一番大切に思っていた彼女は、本当に友人以上の関係を求めるようなことはしなかったのだ。
エリシアにとってユーレットは、随分と遅れて来た初恋の人であり、それまで恋など経験したことのない彼女には、本当にありがたく尊いものに映っていた。
彼の身長が低かろうと、容姿にそれほど特徴が見当たらなくとも、エリシアには彼の全てが愛おしい。
なので、どんなに自分が彼の全てを欲しようとも、彼の嫌がるようなことは絶対にしないと固く誓っていた。
そして、そんなエリシアの純粋で優しい気持ちをユーレットは全て見ていた。
あえて迷惑そうな態度をとる幼い考えの自分を見ても、エリシアは怒るどころか、いつも申し訳なさそうに気を遣っていた。
「私ったら・・・またこんなに一人で話し続けてしまって。こんな話つまらないわよね。ごめんねユーレット。もう・・・やだな、本当に恥ずかしい・・・。今の話はなかったことにしてね?ちょっとお友達から聞いたものだから、ついね・・・、ふふっ、きっとユーレットと一緒ならとっても楽しいだろうなって想像してしまっただけなの」
そんなエリシアを見た時のユーレットは、決まって心の中で酷く慌ててしまう。
本来、こんな綺麗な女性にこれほどまでの好意を寄せられて気分を害する男なんていない。
なんの取柄もないチビの自分をどうしてここまで大切に想ってくれるのかは分からないが、外見や家柄も良い上に、思いやりに溢れたエリシアをどうしたって嫌いになんてなれる訳がない。
「カフェに行きたいなら、そう言えばいい」
なのにユーレットの態度は、いつだって優しく接したい心の中とは反対の酷いものばかりだった。
伸び悩んでいるのは彼の身長だけではない。ユーレットの心も、まだまだ成長途中なのである。
だが、目も合わさず怒ったような口しか利けない、そんな感じの悪いユーレットに、エリシアは溢れんばかりの笑顔を向ける。
「え?やだ・・・嬉しい。そんなこと言ってくれるの?・・・ユーレットってば本当に優しいのね・・・」
薄っすら涙まで浮かべて幸せそうに微笑むエリシアだが、だからといってこの先二人が一緒に出掛けることにはならない。
なぜなら、ユーレットの嫌がることをエリシアは絶対にしないからだ。
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