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原作強制力には抗えない⁉︎

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 かくして、子供ながらも家門を継ぐ者としてお父様のお仕事への帯同も許可され、原作にあるような、母親が居なくて可哀想な女の子とはかけ離れた生活を送っていた。

 数年以内に社交界デビューの計画を練らなければならないという頃には、伯父様……父の兄が執り仕切る商会の仕事にも関わらせてもらえるようになった。お父様には商才が無いことを見抜いていた伯父様は、娘の私の方に信頼を寄せてくれていたのだ。
そろそろ次の一手を打たなければ。

「伯父様、実は一つ提案したい商品があるんです」
お父様の実家の商会は手広く商品を扱っている。それに目をつけ、一枚のデザイン画を提示した。
「これは……靴、かな?エラのデザインかい?」
「ええ、そうなんです。今年の社交界シーズンがもうすぐ始まるでしょう?それに合わせて、最新のトレンドをこの商会から生み出してはどうかと思いまして」
「なるほど。ドレスに関しては定番のものが根強い人気だが、靴は新しいものも取り入れ易いかもしれないな……ふむ、なかなか斬新なアイデアだ。ガラス製の透明な靴か」
「商会のガラス職人の腕が有れば、商品化が可能では、と思うのですが……」
「いいね。早速職人たちに掛け合ってみよう」
これで、ガラスの靴が特別な一つでは無くなるだろう。

「ところでエラ。お前に聞いておいて欲しいことがあるんだ。実は、お前の父様に再婚話が持ち上がっていてね」
「あら!そうなんですか⁈」
思わず大きな声で驚いてしまった。てっきり継母が登場する展開はへし折ったと思っていたのに。
「ウチの商会の大得意様なんだが、娘が未亡人になって久しいらしい。お前と同じ年頃の孫娘が二人、だったかな。この先、社交界デビューするのにも後ろ盾が必要だから、とお前の父様との再婚を望まれているんだ」

原作の強制力には抗えないのか……でも、私は既に、可哀想なエラではない。自分の将来への基盤も出来ている。原作と同じ展開にはならない筈だ。いえ、絶対にさせない。
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