不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です

新川はじめ

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第一章

24、な、何回聞くの!?「運命の人は誰ですか?」

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「お、おい……オーティス……足と手どけろよ!」

 力ずくでこじ開けられていく扉の隙間から、次々となだれ込んでくる黒い火の玉たち。家具はガタガタ揺れ、隙間から見える悪魔を超えて破壊神のようなオーティスの顔面積が徐々に増えてきた。

(怖い怖い怖い怖い。ホラーだってば!!)

「もお、いい加減にしろよ。俺に構うな! 勝手にプロポーズをなかったことにした挙句、乗り換え先はナタリー? 逆ギレすんなよ!」

 突き放すように怒鳴りつけると、扉をこじ開けようとするオーティスの力が少し弱まった。

「……いつ私がプロポーズをなかったことにしましたか?」

(はぁ? いつって記憶にないのか?)
 この期に及んでとぼけるとはますます腹正しい。

「この屋敷に来た日の夜。プロポーズについて覚えてるか聞いただろう? オーティスその時に『すみません』って謝ったじゃん!」
「…………」

「どうしたんだよ、黙っちゃってさ。自分が言った事も忘れたのか?」
 ふんっと思いきり嘲笑って煽ってやる。

「……ナタリー様に乗り換えるとは?」

「俺にそれを言わせる? あの日、馬車の中のナタリーが嬉しそうに顔を赤らめてた。オーティスも乱れた格好で……いやらしい感じで寝てたから……そういう事してたんだろ! この獣めが!」

「フィル様……」

 オーティスが挟んでいた足をスッと引いた。しかも急にドアノブから手を離すものだから、力ずくで引き寄せていた扉がバタンと勢いよく閉まってその反動で俺の体は思いっきり後ろに吹っ飛んだ。

「くそっ……ずるいぞオーティス……魔法使うなんて」

 部屋の中に瞬間移動したオーティスが、扉の前に立って俺を見下ろしている。

「フィル様……貴方の運命の人は誰ですか?」

 どうしてそこにこだわるんだよ。今から俺殺される? じりじりと近付くオーティスに恐怖を覚えて尻餅をついたまま後退る。背中が壁にぶつかった。もう後はない。逃げ場を失った俺はとうとう追い詰められてしまった。

 目の前でしゃがんだオーティスは俺に覆いかぶさるように後ろの壁に手を付いて、もう一度同じ質問を口にした。

「運命の人は誰ですか?」

 もう訳が分からない。頭がパンクして涙がボロボロこぼれ落ちる。

「俺の運命の人は……」

 頭の中で微笑むランデルの顔が消え去った。

「運命の人は、オーティスだよ!」

 怒りに任せて咽び泣く俺にオーティスが顔を寄せる。頬を伝う涙を親指で拭うとその指を俺の唇の隙間に差し込んだ。

「そうです……貴方の運命の人は私ですよ」

 オーティスの舌が俺の唇をなぞる。

「裏切り者のくせにキスするなよ!」
 全力で押し退けようとしてもビクともしない。なんて奴だ。

「フィル様は勘違いをしています。私が謝罪したのは、私から貴方を迎えに行けなかったからです。全ての準備が整ってから貴方をあの離宮から連れ出すつもりでした。まだ返事を頂けていませんが、陛下にフィル様との婚約を願い出ています」

「……陛下に俺との婚約願いを? じゃあナタリーは?」

「詳しくは申し上げられませんが、ナタリー様には心通わせたお相手がいらっしゃいます。私は依頼を受けてお手伝いをしているだけで、昨日は力を使い過ぎて倒れ込むように眠ってしまいました。顔が赤かったのは発熱していたからだと思います。誓ってナタリー様とは何もありません」

「そうだったんだ……俺勘違いばっかり……。熱はもう大丈夫なのか? 気付かなくごめんな、オーティスがつらい時に何もしてあげられなくてごめん」
 俺、自分のことばかり考えてた。情けなくて涙が止まらない。

「熱はもう大丈夫です。プロポーズのことも、私が最初にきちんと答えていたら良かったんです。言葉足らずも度が過ぎると呆れますね。もう泣かないでください」

「信じてもいいんだよな?」
「はい。私の全てが貴方のものです」

 頭を寄せ合ったオーティスから熱気が伝染する。目の前の紫の瞳から目が離せない。

(もぉぉ……嬉しいじゃん!!)
「紛らわしいんだよ、オーティスのバカ」
「はい、とんでもないバカ野郎です」

 俺とオーティスの婚約。飛び上がるほど嬉しい話だけど、一つ確認しなきゃいけない事がある。

「オーティスのご家族は俺との婚約を反対しなかったのか? もしかして一人で勝手に決めたりしてないよな?」
「家族は貴方との結婚に賛成しています」
「本当に!? 挨拶行かなきゃ、いつがい――っ!?」

 これまで交わした中でもっとも深く激しいキス。熱い視線と吐息にクラクラする。

「私のことだけ考えて……話は後でしましょう」
「うん……」

 顔を傾けて、上唇、下唇と順番にキスを交わす。首に腕を回して何度も何度も情熱的に互いの舌を絡める。息が苦しなってきて唇を離した俺は、オーティスを床に押し倒して馬乗りになった。のぼせた目が続きを求めてくる。俺は硬くなったオーティスのモノの上で腰を動かした。

「そうだ……俺を泣かした罰。お仕置きしなきゃ」
「……どんなお仕置きですか?」

(――んっ!)
 布越しに俺のモノをさするオーティスが、これ以上ないくらい艶めかしく微笑んだ。
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