不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です

新川はじめ

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第三章

32、騎士科の学生たち

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「やっぱり避けられてる気がするんだよな」

 なかなか承認されない俺とオーティスとの婚約。結婚の意思があることを手紙に記して俺からも陛下に伝えてみた。

 ところがまさかの無視!

 それならばと先日のアカデミー休校日に王宮に出向いてみれば、陛下とは会えず側近から「暫くは予定が立て込んでいるため面会できません」と断られる始末。

 忙しいのは本当なんだろうけど、あの親父が何を考えてるのかさっぱり分からない。

「――フィル、どうした?」

 いけない、今はランデルと放課後練習の真っ最中だった。

「よそ見してたら怪我するよ」
「うん、ごめん……。あのさ……父親ってよく分かんないよな」

「ああ……確かに。仲が悪いわけじゃないけど、特に話したりはしないし。俺もよく分かんないかな。なんかモヤモヤすることがあったなら、思いっきり打ち合ってスッキリしようぜ!」

「そうだな」
 模擬剣を構えた時、ランデルの向こう側で一人の学生がふらふらしているのに気が付いた。

「ちょっとごめん」
 模擬剣を置いてその学生のもとに駆け寄る。男爵令息のジェイソン・ヘズル。話したことはないけどとても真面目な学生で、練習熱心な彼に俺も感化されていた。

「おい、大丈夫か?」
「お、王子!? 大丈……夫です……」

 おでこに手を添えると思ったとおり熱がある。無理をしたせいで一気に体調が悪化したのかもしれない。

「顔色が悪いし熱もある……医務室で薬をもらった方がいいな。練習も大事だけど、自分の体が一番大事だから」

「なっ」と同意を求めるとジェイソンは「げ、元……気です!」と一生懸命両手を振って健康アピールをする。……が、余計な動きをしたせいでぐらっと大きく体が傾いた。

(ああほら、悪化してるじゃん)
「ジェイソン、毎日早く来て遅くまで頑張ってるよな。もう少し練習したい気持ちもよく分かる。でも今日は休もう」
「……おーじぃ……」

 泣きそうなジェイソンに肩を貸すと、「俺も行く」とランデルも一緒に彼を支えながら医務室まで付いてきてくれた。


 ◇◇◇

「季節の変わり目って体調崩しやすいよな」
「ランデルも? 俺もしんどい時ある」

 医務室から練武場に戻ってきた俺たちの前に、騎士科の別の学生が立ち塞がった。


「フィル王子」

(俺……?)
 一つ上の兄たちが卒業して、嫌がらせはだいぶ落ち着いた。目立たず迷惑をかけずアカデミー生活を送っているつもりだけど、向こうからの攻撃に備えてつい構えてしまう。

「何?」

「よろしければ、私とも打ち合いの練習をしていただけませんか?」

 まさかの申し出に目が点になる。

「私も王国騎士団への入団が決まっています。強い相手と練習したくて……。ランデルも頼めるか?」

 ランデルは言葉の出てこない俺を軽く小突くと、いつものようにふにゃっと笑った。

「あ……うん。いいよ」
「ありがとうございます」

「………………あの、フィル様」
 今度は横から声が聞こえる。

 この時、周りの金属音が鳴り止んでいることに俺は気付いていなかった。振り向いた俺を更なる驚きが襲う。やり取りを見ていた他の学生たちがわっと集まってきたのだ。

「私もお願いしたいです」
「俺もよろしいですか?」

 俺を取り囲むこの中には一つも嫌悪の目がない。多くの貴族が通うアカデミーの中で、少なくともこの者たちは俺を悪く思っていないのかも……そう思うと胸がいっぱいになる。

「こちらこそ……よろしく頼む」

 彼らと友達にはなれなくても、仲間として輪の中に入れたことが嬉しい。ほんの些細なキッカケから人と人とが繋がるんだ。

『ありがとう』の思いを慣れない笑顔に乗せた。
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