不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です

新川はじめ

文字の大きさ
53 / 53
第三章

50、また報告しますね

しおりを挟む
 ひっそりと婚約が交わされてから、もうすぐ一年。

 アカデミーを卒業した俺は、王国騎士団に入団して独身者専用の宿舎に入所した。休日はもちろんオーティスのもとに帰るんだけど、生霊事件後べったりそばにいれた分、離れて暮らすのは寂しかった。

 初めの数ヶ月は訓練がしんどすぎて倒れるように眠ってしまったけど、眠る前には必ずオーティスや彼の使い魔ぽよぽよズのことを思い出してた。

 そして寂しい思いをしてるのは俺だけじゃないみたいで、ぽよぽよズなんかは俺が屋敷に帰ると暫くくっついて離れないんだよな。
 全身を彼らの柔らかマシュマロボディで包まれるのは最高に癒されるんだけど、嫉妬しちゃったオーティスが例の黒い火の玉を大量に出すから宥めるのがちょっと大変だったりする。

 早く一人前になりたくて入団後一年は結婚しないつもりだったけれど、日々の寂しさに加えナタリーやセガール兄上の結婚、続々と結婚していく騎士団の仲間に触発された俺は…………あっさり翻意しちゃった。

 そんなこんなで今日。爽やかな秋晴れのもと、俺とオーティスは結婚する!!


 ◇◇◇

 王都の教会で挙式後。堅苦しさのないガーデンパーティーを、なんと俺が最も嫌いな離宮で執り行うことになった。ぽよぽよズも王宮の使用人たちに混ざって給仕を頑張ってくれている。

 その可愛い見た目から「可愛い~」「癒されるぅ」の歓声があちこちから上がって早くも人気者だ。

 式のみ臨席された陛下は、昨晩俺たちの屋敷までわざわざ足を運んで一足先にお祝いをしてくれた。式場を華やかに彩る溢れんばかりの花飾りは陛下の贈り物だ。花一輪咲かない殺風景な庭園は見事に作り替えられ、その美しさに思わず感嘆の溜息が漏れた。


「二人共おめでとう。オーティス、フィルを泣かせたら死罪にするから♪」
 セガール兄上、目が笑ってません……。

「おめでとう! あの、フィルを傷付けたら俺奪いますから」
 おいおいランデル。オーティスも顔怖いって。

「お二人共、ご結婚おめでとうございます!!」
 やっぱりガチガチなジェイソン。いつもみたいにリラックスして良いんだよ。

「良かったな」
 ランデルの兄さんとオーティスの仲は良好のようだ。

「ついにこの日が来たのね! 結婚おめでとう!」
「素敵な結婚式だ、おめでとう」
 ありがとうナタリー。ラグベル侯爵。

「おめでとうございます。でも……アナはフィル王子のお嫁さんになりたかったぁぁぁ……」
 ごめんねアナスタシア。俺たちとっても仲良しになったもんね。気持ちは嬉しいよ。こら、オーティス。小さな子相手にドヤ顔しない!

「フィル君、オーティスおめでとう!!」
 サンドリッチ家の皆さん、これからもよろしくお願いします!

 お祝いの言葉が次々送られてくる。「結婚式はもっとド派手にすれば良いのに」なんてアドバイスをもらったけど、俺たちが心を許せる人たちだけにして正解だった。

 つらかったこの場所が、温かい記憶に塗り替えられていく。俺には十分過ぎるくらい幸せな結婚式だ。


「なあオーティス。疲れてない?」
「大丈夫ですよ」

「じゃあさ、屋敷に帰ったら俺の用事に付き合ってくれる?」
「ええ……もちろんです」

 オーティスはどんな用事なのかと微かに首を傾げたけど、いつものように穏やかに笑ってくれる。その後結婚式は無事に終わり、日が暮れる前に俺たちは屋敷へ帰った。



 ◇◇◇

「ただいま!!」

 俺とオーティス、それからぽよぽよズ。みんなの声が揃って思わずクスクス笑い合う。

「今日はお疲れ様。お手伝いありがとう」
 両手を大きく広げて、ぽよぽよズをむぎゅう~と抱き締める。

「ポックス、ポミィ、ポル、ポム、ポニ。みんなに頼んであったアレ。オーティスも手伝ってくれるって。今からいいかな」

「はい、やりましょう!」

 いいね、気合いの入ったガッツポーズ。俺は彼らにあることを任せて、オーティスの手を引っ張って屋敷の裏側へ向かった。

 この裏庭も離宮同様に花が無い。垣根と芝生のみの味気ない庭。オーティスはチューリップの花が切り落とされたあの日の出来事を知っているから、俺に気を遣ってくれていることくらい分かっていた。でも、もう気遣う必要はない。


「聞いてオーティス。今からここに花壇を作りたいと思います!」

 ぽよぽよズがカゴいっぱいの球根を運んできて「じゃ~ん!」とオーティスに見せる。

「フィル……これは」

「うん、チューリップの球根。婚約が決まった時ふと思ったんだ。もう一度、花を育ててみたいなって。ここは咲けない場所じゃない。オーティスやみんながいて、大切に育てることができる。一緒に綺麗な花を咲かせよう」

 オーティスはグッと眉を下げて静かに俺を抱き寄せた。

「はい……きっと美しい花が咲きます。春が楽しみですね」


 ――俺、凄く幸せだ。


 母さん。俺の周りは賑やかでいつも笑いが絶えません。今から植える球根は寒さに絶え、春には鮮やかで美しい花を咲かせてくれるでしょう。

 そして、その頃には騎士として更に成長した俺の雄姿も見せられるかな。自分のため、みんなの平和のためにより一層励んでまいります。


「――コホン! お二人共、いつまで抱き合っていらっしゃるおつもりですか? 日が暮れてしまいますぞ」
「あ……すまない」
「ごめん、ポックス」

 もう会うことはできないけど、これからもこうやって報告していくので俺のことを天国から見ていてくださいね。

「みんな、春が楽しみだな!」



 おわり

―――――――――――――

これで完結になります。
閲覧、応援してくださってとても感謝しています。ありがとうございました!!
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

嫌われた暴虐な僕と喧嘩をしに来たはずの王子は、僕を甘くみているようだ。手を握って迫ってくるし、聞いてることもやってることもおかしいだろ!

迷路を跳ぶ狐
BL
 悪逆の限りを尽くした公爵令息を断罪しろ! そんな貴族たちの声が高まった頃、僕の元に、冷酷と恐れられる王子がやって来た。  その男は、かつて貴族たちに疎まれ、王城から遠ざけられた王子だ。昔はよく城の雑用を言いつけられては、魔法使いの僕の元を度々訪れていた。  ひどく無愛想な王子で、僕が挨拶した時も最初は睨むだけだったのに、今は優しく微笑んで、まるで別人だ。  出会ったばかりの頃は、僕の従者まで怯えるような残酷ぶりで、鞭を振り回したこともあったじゃないか。それでも度々僕のところを訪れるたびに、少しずつ、打ち解けたような気がしていた。彼が民を思い、この国を守ろうとしていることは分かっていたし、応援したいと思ったこともある。  しかし、あいつはすでに王位を継がないことが決まっていて、次第に僕の元に来るのはあいつの従者になった。  あいつが僕のもとを訪れなくなってから、貴族たちの噂で聞いた。殿下は、王城で兄たちと協力し、立派に治世に携わっていると。  嬉しかったが、王都の貴族は僕を遠ざけたクズばかり。無事にやっているのかと、少し心配だった。  そんなある日、知らせが来た。僕の屋敷はすでに取り壊されることが決まっていて、僕がしていた結界の魔法の管理は、他の貴族が受け継ぐのだと。  は? 一方的にも程がある。  その直後、あの王子は僕の前に現れた。何と思えば、僕を王城に連れて行くと言う。王族の会議で決まったらしい。  舐めるな。そんな話、勝手に進めるな。  貴族たちの間では、みくびられたら終わりだ。  腕を組んでその男を睨みつける僕は、近づいてくる王子のことが憎らしい反面、見違えるほど楽しそうで、従者からも敬われていて、こんな時だと言うのに、嬉しかった。  だが、それとこれとは話が別だ! 僕を甘く見るなよ。僕にはこれから、やりたいことがたくさんある。  僕は、屋敷で働いてくれていたみんなを知り合いの魔法使いに預け、王族と、それに纏わり付いて甘い汁を吸う貴族たちと戦うことを決意した。  手始めに……  王族など、僕が追い返してやろう!  そう思って対峙したはずなのに、僕を連れ出した王子は、なんだか様子がおかしい。「この馬車は気に入ってもらえなかったか?」だの、「酒は何が好きだ?」だの……それは今、関係ないだろう……それに、少し距離が近すぎるぞ。そうか、喧嘩がしたいのか。おい、待て。なぜ手を握るんだ? あまり近づくな!! 僕は距離を詰められるのがどうしようもなく嫌いなんだぞ!

婚約破棄された俺の農業異世界生活

深山恐竜
BL
「もう一度婚約してくれ」 冤罪で婚約破棄された俺の中身は、異世界転生した農学専攻の大学生! 庶民になって好きなだけ農業に勤しんでいたら、いつの間にか「畑の賢者」と呼ばれていた。 そこに皇子からの迎えが来て復縁を求められる。 皇子の魔の手から逃げ回ってると、幼馴染みの神官が‥。 (ムーンライトノベルズ様、fujossy様にも掲載中) (第四回fujossy小説大賞エントリー中)

【本編完結】最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!

天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。 なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____ 過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定 要所要所シリアスが入ります。

誓いを君に

たがわリウ
BL
平凡なサラリーマンとして過ごしていた主人公は、ある日の帰り途中、異世界に転移する。 森で目覚めた自分を運んでくれたのは、美しい王子だった。そして衝撃的なことを告げられる。 この国では、王位継承を放棄した王子のもとに結ばれるべき相手が現れる。その相手が自分であると。 突然のことに戸惑いながらも不器用な王子の優しさに触れ、少しずつお互いのことを知り、婚約するハッピーエンド。 恋人になってからは王子に溺愛され、幸せな日々を送ります。 大人向けシーンは18話からです。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

うそつきΩのとりかえ話譚

沖弉 えぬ
BL
療養を終えた王子が都に帰還するのに合わせて開催される「番候補戦」。王子は国の将来を担うのに相応しいアルファであり番といえば当然オメガであるが、貧乏一家の財政難を救うべく、18歳のトキはアルファでありながらオメガのフリをして王子の「番候補戦」に参加する事を決める。一方王子にはとある秘密があって……。雪の積もった日に出会った紅梅色の髪の青年と都で再会を果たしたトキは、彼の助けもあってオメガたちによる候補戦に身を投じる。 舞台は和風×中華風の国セイシンで織りなす、同い年の青年たちによる旅と恋の話です。

BLゲームの展開を無視した結果、悪役令息は主人公に溺愛される。

佐倉海斗
BL
この世界が前世の世界で存在したBLゲームに酷似していることをレイド・アクロイドだけが知っている。レイドは主人公の恋を邪魔する敵役であり、通称悪役令息と呼ばれていた。そして破滅する運命にある。……運命のとおりに生きるつもりはなく、主人公や主人公の恋人候補を避けて学園生活を生き抜き、無事に卒業を迎えた。これで、自由な日々が手に入ると思っていたのに。突然、主人公に告白をされてしまう。

処理中です...