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閑話
閑話2 とある日のお兄ちゃんたち ※フランコ(ランデル兄)視点
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とある日の午後。
アカデミーの裏庭、剪定によって高さが整えられた美しい生垣の向こう側から会話が聞こえてきた。
「今、なんか隠したでしょ。僕にも見ーせて」
「ダメです」
この声は……オーティスとセガール王子。いくつかベンチがある中で、なんでここにきたんだよ、と渋い顔をする。
生垣がパーテーションの役割を果たしていて互いの姿は見えないが、生垣にもたれて読書を嗜んでいた俺は二人のせいで完全に読む気を失ってしまった。
別に俺が移動してもいいけれど、先にいたのはこっちだし……負けたような気がして癪に触る。しかも俺が突然立ち上がってみろ。物音に気付いた二人がどんな反応をするか。そんなの容易く想像できる。
どうせ一人は無愛想にこちらをチラ見して、もう一人は……
「そんな所に隠れてイケナイ子っ」
(って絶対イジってくるんだ。あの猫被り王子めぇ……)
生垣裏側で俺が頭を抱えているとも露知らず、二人の会話は続いていく。
「ケチオーティス」
「はい、ケチです」
「あっさり認めたな。じゃあ触らないから、その白い玉が何か教えてよ」
(白い玉?)
「これは……頬です」
(ほほぉ?)
頬だと言ったのか? 白い玉が?
「なんですか? その『気持ち悪い奴』って顔は」
「やだぁ、顔に出てた? よく聞いてオーティス。それ、変人って言うんだよ。こっち側に戻っておいで」
ここはセガール王子に同感。
「……正式には頬の手触りを再現した使い魔です」
「最初からそう言ってよ。誰の頬? 自分? それとも……もしかしてフィル?」
「…………」
「都合が悪いと無視するー。当たりだな? もしかして触ったの!?」
「無視してません……察しが良いなと思っただけです」
「うわぁ、開き直った。で、あのぽよぽよもちもちのマシュマロほっぺを触ったの!? 解答必須ね」
「………………一度だけ」
「僕の唯一の弟なのにぃぃ……」
「嘘をつかないでください。他にもいらっしゃいます」
「そうだけど、可愛い弟は一人だけなの!」
完全に二人の会話に沼っていた俺はハッと我に返った。オーティスが変人を超えて変態だということは分かった。けど、重要なのはそんな事じゃない。
(オーティスの奴、使い魔なんて作り出せるのか!?)
使い魔はよっぽど魔力の扱いに長けた者でないと作り出せない。時間も労力もかかるから魔法師の多くは使い魔を持たない。
オーティスの言う白い玉がどんなに小さく片手に収まるほどのものだったとしても、たった十二歳で使い魔を作り出した彼の実力は……くそっくそっ! この先は絶対に言いたくない。
「オーティス、やっぱり触らせて。本当にフィルのほっぺと同じか確認させてもらわなきゃ。触らせてくれないなら、もうフィルに会わせてあーげなーい」
(えぇぇ……嫌な言い方)
あの王子にキャーキャー言ってる令嬢たちにこの会話聞かせてやりたいよ。
「……素が出てますよ」
「とにかく、フィルに会いたいなら触らせて。ほらほら早くっ」
「いやらしい性格ですね」
オーティスって無愛想な奴だけど、王太子相手でも無愛想なんだな。ごますりしてないのはほんの少し評価を上げてやるよ。
「…………少しだけですよ」
声の調子からオーティスのうんざりした顔が目に浮かぶ。俺は白い玉の手触りが気になりすぎて、耳に全神経を集中させた。
「これ……フィルのほっぺにそっくり。触ったの本当に一回だけ? それだけでここまで再現できる?」
「はい、一度だけです。あとはひたすら回想と妄想……」
「ひぇぇ……変態」
王太子がどんなに引いてても、涼しい顔をしてるんだろうな。まったく図太い奴だ。
◇◇◇
「ただいまランデル」
「おかえりなさいフランコにぃーさーん!……ふぇ? どうひたの?」
(なるほど、ふわふわもちもちだ)
ランデルの頬を思う存分堪能してから頭を撫でた。
「俺の弟が世界一可愛いと思っただけさ」
「兄さぁぁーん」
俺に抱きついてキャッキャっとはしゃぐランデルが可愛すぎてひしっと抱き締めた。
「そうだランデル、兄さんはこの国一番の発明家を目指すぞ!」
「ええっ! 今も凄いのにもーっと凄くなっちゃうの!? わーい楽しみ!」
見てろよオーティス、俺は必ずお前に負けないものを手に入れてやる!!
アカデミーの裏庭、剪定によって高さが整えられた美しい生垣の向こう側から会話が聞こえてきた。
「今、なんか隠したでしょ。僕にも見ーせて」
「ダメです」
この声は……オーティスとセガール王子。いくつかベンチがある中で、なんでここにきたんだよ、と渋い顔をする。
生垣がパーテーションの役割を果たしていて互いの姿は見えないが、生垣にもたれて読書を嗜んでいた俺は二人のせいで完全に読む気を失ってしまった。
別に俺が移動してもいいけれど、先にいたのはこっちだし……負けたような気がして癪に触る。しかも俺が突然立ち上がってみろ。物音に気付いた二人がどんな反応をするか。そんなの容易く想像できる。
どうせ一人は無愛想にこちらをチラ見して、もう一人は……
「そんな所に隠れてイケナイ子っ」
(って絶対イジってくるんだ。あの猫被り王子めぇ……)
生垣裏側で俺が頭を抱えているとも露知らず、二人の会話は続いていく。
「ケチオーティス」
「はい、ケチです」
「あっさり認めたな。じゃあ触らないから、その白い玉が何か教えてよ」
(白い玉?)
「これは……頬です」
(ほほぉ?)
頬だと言ったのか? 白い玉が?
「なんですか? その『気持ち悪い奴』って顔は」
「やだぁ、顔に出てた? よく聞いてオーティス。それ、変人って言うんだよ。こっち側に戻っておいで」
ここはセガール王子に同感。
「……正式には頬の手触りを再現した使い魔です」
「最初からそう言ってよ。誰の頬? 自分? それとも……もしかしてフィル?」
「…………」
「都合が悪いと無視するー。当たりだな? もしかして触ったの!?」
「無視してません……察しが良いなと思っただけです」
「うわぁ、開き直った。で、あのぽよぽよもちもちのマシュマロほっぺを触ったの!? 解答必須ね」
「………………一度だけ」
「僕の唯一の弟なのにぃぃ……」
「嘘をつかないでください。他にもいらっしゃいます」
「そうだけど、可愛い弟は一人だけなの!」
完全に二人の会話に沼っていた俺はハッと我に返った。オーティスが変人を超えて変態だということは分かった。けど、重要なのはそんな事じゃない。
(オーティスの奴、使い魔なんて作り出せるのか!?)
使い魔はよっぽど魔力の扱いに長けた者でないと作り出せない。時間も労力もかかるから魔法師の多くは使い魔を持たない。
オーティスの言う白い玉がどんなに小さく片手に収まるほどのものだったとしても、たった十二歳で使い魔を作り出した彼の実力は……くそっくそっ! この先は絶対に言いたくない。
「オーティス、やっぱり触らせて。本当にフィルのほっぺと同じか確認させてもらわなきゃ。触らせてくれないなら、もうフィルに会わせてあーげなーい」
(えぇぇ……嫌な言い方)
あの王子にキャーキャー言ってる令嬢たちにこの会話聞かせてやりたいよ。
「……素が出てますよ」
「とにかく、フィルに会いたいなら触らせて。ほらほら早くっ」
「いやらしい性格ですね」
オーティスって無愛想な奴だけど、王太子相手でも無愛想なんだな。ごますりしてないのはほんの少し評価を上げてやるよ。
「…………少しだけですよ」
声の調子からオーティスのうんざりした顔が目に浮かぶ。俺は白い玉の手触りが気になりすぎて、耳に全神経を集中させた。
「これ……フィルのほっぺにそっくり。触ったの本当に一回だけ? それだけでここまで再現できる?」
「はい、一度だけです。あとはひたすら回想と妄想……」
「ひぇぇ……変態」
王太子がどんなに引いてても、涼しい顔をしてるんだろうな。まったく図太い奴だ。
◇◇◇
「ただいまランデル」
「おかえりなさいフランコにぃーさーん!……ふぇ? どうひたの?」
(なるほど、ふわふわもちもちだ)
ランデルの頬を思う存分堪能してから頭を撫でた。
「俺の弟が世界一可愛いと思っただけさ」
「兄さぁぁーん」
俺に抱きついてキャッキャっとはしゃぐランデルが可愛すぎてひしっと抱き締めた。
「そうだランデル、兄さんはこの国一番の発明家を目指すぞ!」
「ええっ! 今も凄いのにもーっと凄くなっちゃうの!? わーい楽しみ!」
見てろよオーティス、俺は必ずお前に負けないものを手に入れてやる!!
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