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お兄様ずるい!!
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「お嬢様! お待ちくださいっ」
勢いよく扉が開き、一人の令嬢、それから彼女の侍女とニールが店の中に飛び込んできた。ハーフアップに結い上げられたミルクティー色のふわふわしたロングヘア。クリクリと愛らしい瞳をした小動物のように可愛らしい令様だ。
(淡いブルーの瞳……デリク様と同じ色……)
「デリクお兄様!! ここで何をなさっているんですか!?」
「ミシェル、お前こそどうしてここに!?」
「わたくしが先に質問しました! わたくしの気持ちを知っていながら秘密でこんなこと……絶対に許しません!!」
怒り狂った野良猫のように「シャー!!」と殺意を剥き出しにする令嬢。リリアは彼女に見覚えがあった。しかし彼女はいつも朗らかで、このように怒っているのは初めて見る。
「……ミシェル様ですか?」
「リリア様! わたくしをご存知で!?」
(ん? 『リリア様』……?)
「もちろん存じております。美しいご兄妹だと有名ですから」
「美しいご兄妹……」
デリクとミシェルが口を揃えて同時にポッと赤くなる。
(二人とも同じ反応してる……可愛い)
「で、お兄様はここで何を? リリア様のお仕事の邪魔をしているのですか!?」
再びプリッと頬を膨らませたミシェルがデリクを問い詰めた。
「仕事の邪魔なんてしていない…………監視だ」
「か、かかかか監視!? なんですかそれ。監視とは名ばかりのパラダイス……」
「だぁぁああ!! 余計なことを言うな! シャーロットが変な魔法陣を使おうとしたのは知っているだろう?」
「ああ、リリア様になすり付けたアレですか」
「そう、だからここにいる。お前こそどうしてここに来た」
「わたくしは、リリア様に依頼しに参りました。わたくしが呪われているか確認してもらいたいのです」
(――呪い?)
ミシェルの声色が変わり、淡いブルーの瞳がリリアを射抜くように見据えた。
◇◇◇
シュレイバー伯爵家の令息デリクは美しく聡明。妹であるミシェルは愛らしい容姿だけでなく社交性もあって友人も多い。
彼らが有名なのにはもう一つ理由がある。
デリクは婚約者である公爵令嬢シャーロットが他の男にぞっこんだということ。そして妹のミシェルは、なぜか男性と上手くいかないということだ。婚約破棄をされ続ける彼女は今ではすっかり有名人となってしまっていた。
「ミシェルは本当に良い子なんだ。みんな見る目がない。婚約破棄の理由は何だと思う? 『よく分からないけどどうしても無理』だそうだ。納得できるか?」
「酷いですね」
「リリア様もそう思ってくださいますか? 社交シーズンが始まって、新しい婚約をさせたい母に『婚約はもう嫌だ』とわたくしが反抗しまして……。あーだこーだと言い合っているうちに呪われてるんじゃないかって話になったんです」
「なるほど」
リリアもミシェルと同じ婚約破棄経験者だ。あれを何度も経験するのはつらすぎる。
「タウンハウスから魔術店までそう遠くはないので、わたくし早速お邪魔したというわけです。そしたらなぜか我が家の馬車が止まっていて中にはお兄様がいるし、こちらに来ていたのなら誘ってくださればいいのに」
ミシェルはデリクを恨めしそうに横目で睨みぶつぶつと小言を漏らす。苦虫を噛み潰したような顔をしたデリクは大きく咳払いをした。
「呪いとは考えたこともなかった。俺はミシェルに幸せになってほしい。妹に呪いがかけられているか一度見てくれるか?」
「分かりました。でも、呪われていたとしても解くことができるとは断言できません。あらかじめご了承ください」
「分かった」
「では今から――」
「待ってください!! ここではなく我が家でお願いできますか?」
「え?」
リリアとデリクの声が揃う。
「リリア様をシュレイバー家のタウンハウスにご招待いたします。ぜひいらしてください!!」
ミシェルはキラッキラと瞳を輝かせてリリアを誘う。絶対に「NO」とは言えない圧力が、リリアの肩にのしかかった。
「…………わ、分かりました」
「良かったぁ。では明日の朝、こちらに馬車を向かわせます」
(天真爛漫で可愛らしい方。婚約破棄に繋がる呪いか……あったかな)
考え込むリリアは、隣で「えっ、リリアが我が家に来る!? えっ!? えっ!?」とデリクがそわそわしていることにまったく気が付かなかった。
勢いよく扉が開き、一人の令嬢、それから彼女の侍女とニールが店の中に飛び込んできた。ハーフアップに結い上げられたミルクティー色のふわふわしたロングヘア。クリクリと愛らしい瞳をした小動物のように可愛らしい令様だ。
(淡いブルーの瞳……デリク様と同じ色……)
「デリクお兄様!! ここで何をなさっているんですか!?」
「ミシェル、お前こそどうしてここに!?」
「わたくしが先に質問しました! わたくしの気持ちを知っていながら秘密でこんなこと……絶対に許しません!!」
怒り狂った野良猫のように「シャー!!」と殺意を剥き出しにする令嬢。リリアは彼女に見覚えがあった。しかし彼女はいつも朗らかで、このように怒っているのは初めて見る。
「……ミシェル様ですか?」
「リリア様! わたくしをご存知で!?」
(ん? 『リリア様』……?)
「もちろん存じております。美しいご兄妹だと有名ですから」
「美しいご兄妹……」
デリクとミシェルが口を揃えて同時にポッと赤くなる。
(二人とも同じ反応してる……可愛い)
「で、お兄様はここで何を? リリア様のお仕事の邪魔をしているのですか!?」
再びプリッと頬を膨らませたミシェルがデリクを問い詰めた。
「仕事の邪魔なんてしていない…………監視だ」
「か、かかかか監視!? なんですかそれ。監視とは名ばかりのパラダイス……」
「だぁぁああ!! 余計なことを言うな! シャーロットが変な魔法陣を使おうとしたのは知っているだろう?」
「ああ、リリア様になすり付けたアレですか」
「そう、だからここにいる。お前こそどうしてここに来た」
「わたくしは、リリア様に依頼しに参りました。わたくしが呪われているか確認してもらいたいのです」
(――呪い?)
ミシェルの声色が変わり、淡いブルーの瞳がリリアを射抜くように見据えた。
◇◇◇
シュレイバー伯爵家の令息デリクは美しく聡明。妹であるミシェルは愛らしい容姿だけでなく社交性もあって友人も多い。
彼らが有名なのにはもう一つ理由がある。
デリクは婚約者である公爵令嬢シャーロットが他の男にぞっこんだということ。そして妹のミシェルは、なぜか男性と上手くいかないということだ。婚約破棄をされ続ける彼女は今ではすっかり有名人となってしまっていた。
「ミシェルは本当に良い子なんだ。みんな見る目がない。婚約破棄の理由は何だと思う? 『よく分からないけどどうしても無理』だそうだ。納得できるか?」
「酷いですね」
「リリア様もそう思ってくださいますか? 社交シーズンが始まって、新しい婚約をさせたい母に『婚約はもう嫌だ』とわたくしが反抗しまして……。あーだこーだと言い合っているうちに呪われてるんじゃないかって話になったんです」
「なるほど」
リリアもミシェルと同じ婚約破棄経験者だ。あれを何度も経験するのはつらすぎる。
「タウンハウスから魔術店までそう遠くはないので、わたくし早速お邪魔したというわけです。そしたらなぜか我が家の馬車が止まっていて中にはお兄様がいるし、こちらに来ていたのなら誘ってくださればいいのに」
ミシェルはデリクを恨めしそうに横目で睨みぶつぶつと小言を漏らす。苦虫を噛み潰したような顔をしたデリクは大きく咳払いをした。
「呪いとは考えたこともなかった。俺はミシェルに幸せになってほしい。妹に呪いがかけられているか一度見てくれるか?」
「分かりました。でも、呪われていたとしても解くことができるとは断言できません。あらかじめご了承ください」
「分かった」
「では今から――」
「待ってください!! ここではなく我が家でお願いできますか?」
「え?」
リリアとデリクの声が揃う。
「リリア様をシュレイバー家のタウンハウスにご招待いたします。ぜひいらしてください!!」
ミシェルはキラッキラと瞳を輝かせてリリアを誘う。絶対に「NO」とは言えない圧力が、リリアの肩にのしかかった。
「…………わ、分かりました」
「良かったぁ。では明日の朝、こちらに馬車を向かわせます」
(天真爛漫で可愛らしい方。婚約破棄に繋がる呪いか……あったかな)
考え込むリリアは、隣で「えっ、リリアが我が家に来る!? えっ!? えっ!?」とデリクがそわそわしていることにまったく気が付かなかった。
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