220 / 251
第220話 集結する島
しおりを挟むまず、今いる魔物の中で厄介なのは次の三体。
サタンケルウス
LV.118
ATK.184
DEF.133
サタンケルウスは常軌を期した破壊衝動を持つ鹿の魔物で、巨角に蓄えられたエネルギーからの攻撃は斬撃の勢いを殺すほど。
撃技は付加されていないが、それでも俺が放った斬撃を受け切るほど。
ギリギリだったがそれでも俺の斬撃を防ぐのは今では数えられるくらい。
カキア
LV.121
ATK.192
DEF.156
次にカキアというあばら骨が剥き出しで、密集した筋肉部は鋼の強度を持つ魔物。常に黒い煙を纏っており、加えて速さも相当高い。
動くたびに黒い煙が付いてくるのはそれがカキアの身体の一部だからだ。
ヴィペールマミー
LV.115
ATK.129
DEF.179
最後にこいつ。
下半身がヘビの姿をしたマミー。速さはあまりないが強力な毒は同じ魔物でさえ致命傷を与えるほど。
現にヴィペールマミーの吐く毒を喰らってしまったヴラブォスの皮膚が焼け焦げている。
ヴラブォスは推定体重4t、鬼のような角を持ち、尾の太さは直径1.5メートルほど。岩のような皮膚だが、実際のところはそれ以上の強度を持つ。
同じようなレベル、大きさの魔物でさえヴィペールマミーには近寄ろうとしない。
「さて、俺の相手は……」
サタンケルウスを含む、5体の魔物。
まずはサタンケルウスから片付けたいところだが、他の魔物がどうもそれをさせてくれそうにない。
魔物の種類はバラバラ、様子を見ている限り協調性は無さそうだが……認識した敵が同じだとそれも少しは効果を発揮するようだ。
サタンケルウスの巨角から放たれる紅く回転すると球は、アスティオンに触れた瞬間高い摩擦音を出す。
それは真っ二つに斬れ、地面にそれぞれ落ちるとどろりとした爆発を数回繰り返す。
爆風は近くにいた魔物の足元をぐらつかせるほどの威力。
「速いな」
サタンケルウスの突進がアスティオンと接触。突進の威力は俺を2メートルばかり後退させた。
巨角とアスティオンの接触部からミシミシと軋む音がするが、サタンケルウスはお構いなしといった様子で俺を突き飛ばした。
サタンケルウスの巨角に傷跡が入っている。
サタンケルウスはすかさず巨角から紅く回転する球を作り出し、空中にいる俺向かって首を振って撃ち出した。
迅斬波、三。
迅斬波は三つの斬撃をつける。
サタンケルウスがバックステップするが、避けきれなかった巨角にヒット。
さらに、迅斬波の斬道にいた魔物二体が巻き添えを喰らう。
ただ、それを見ても何ら動じないサタンケルウスは凛として突き立っている。
なるほど、久しぶりに手ごたえのある魔物が来た。
サタンケルウスは巨角に傷がつけられた為か警戒したようで、様子を見ているようだ。
「ギュラララララ」
魔虫ドールカルポスは鎌のような6つの脚で移動、鋭い爪で切り付けてくる。加えて前脚の鎌爪は執拗に俺を刺そうとする。
「ギュラ、ララ……」
近寄り過ぎたドールカルポスに斬回風をお見舞い。さらには斬回風による全方位への攻撃は背後から俺を襲おうとしていたスクリロスレパードにも直撃。
そのまま前と後ろに対して攻斬波の烈焔は、圧縮された斬撃に撃技+6以上の解放で出せる剣技。
ドールカルポス、スクリロスレパード共に烈焔に焼かれ倒れる。
「残るは三体……」
と思っていたが、サタンケルウスがアンガーリザードとバルバールコングを巨角で突き刺してどろりとした爆発の餌食にした。
俺と戦う為、協調性を少しでも持ったのかと思っていたがまるで見当違いだった。
まあ無理もないか。
サタンケルウスは悪魔族。
悪魔族は多くの種族の中でも自分たちの種族の繁栄を重視する。
ヘリオスの住人たちの件があってから世界的には数は減少傾向にあるとされるが、それでも悪魔族は他の種族を襲い数を増やそうとしているらしい。
サタンケルウスの目からつうっと紅い涙が伝う。
「シン! あっちはおおかた片付いたわよ!」
「こっちもだ」
が、残るサタンケルウスからは見ても分かるほどに湧き出て来ているのは、勇者でいう撃技にあたる。体内に巡る悪魔の血を奮い立たせ攻撃力を上げ始めた。
悪魔族が厄介と言われているのは、これがある為。
先ほどアンガーリザードとバルバールコングを殺ったのは、悪魔族の血を活性化させる為。
ようは起爆剤的なもの。
「あの魔物、やばい感じね……!?」
メアが咄嗟に分厚い氷の壁を生成した。
氷の壁は中ほどまで貫かれ、溶けていく。
相当の熱量のようだ。
水蒸気が一気に発生する。
「これでどう!?」
メアの氷魔法が氷の壁を突き破ろうとしたサタンケルウスを足元から凍らせた。
「……駄目だ。メア、もう手を出すな」
氷の壁を築き、サタンケルウスを凍らせるなんて標的を変更される恐れがある。
メアが勝てないと言っているんじゃない。
悪魔族だけではなく全ての魔物にも言えることだが、相手の強さをレベルだけで判断してはならない。
メアはただ頷き、俺の背後に下がる。
それを確認した後、撃技+6の解放、攻迅斬波の連続によって漸くサタンケルウスは倒れた。
最後の最後まで避けもせずに攻迅斬波を巨角で受けたのは魔物ながら感服ものだ。
最も避けきれなかったのだろうが。
他の連中もじきに終わる頃か。
「……にしてもあいつ、何者なんだ?」
悪魔族は他にもいた。既に討伐されたようだがカキアはセクゥンド大陸に存在する大森林ディスピアにも生息している。
遭遇したが最後、負ければカキアの体内に閉じ込められゆっくり吸収されていくらしい。
見た目同様にグロテスクな魔物。
が、他の魔物よりも先に討伐されている。
ややあって見える魔物は全て討伐された。
謎の男は長剣を鞘に納め、俺たちの元に来る。
「援軍かと思いきや、また知らぬ勇者……。今日は騒がしい日だ」
白髪の長髪、目を閉じながら話す謎の男。
「テール、この男は誰なんだ?」
俺とメアが来る前に既にいたテールに聞く。
「俺もまださ」
どうやらテールも知らないらしい。ラピスに顔を移しても知らないといった様子だ。
「私が誰か? 魔物撲滅本部、そう言えば分かるだろう」
魔物撲滅本部と言えば、俺がヴィダの街に行った時にも会ったな。
何やらトリトン大陸の魔物を討伐しに来ているらしく、こいつを合わせると4人と会った。
「……まさかとは思うが、魔王の城に?」
「ーー私の他にも同志はこの島に来ている。私はラバラス。勇者の者達よ、同じく魔物を討伐する者として礼を言う」
そう言い残した後、ラバラスは森の方へと1人去って行った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる