9 / 53
第2章 海辺へ
みづきの朝
しおりを挟む
青く透き通った海の中に、しろいクラゲさんがいました。
くらげさんはとてものんびり屋さんで、いつもふわり、ふわりと漂っていました。
お友達もいるんですよ?
まわりには色とりどりのお魚さんが泳ぎ回っています。
小さくて可愛いお魚さん、大きくてかっこいいお魚さん。
みんなくらげさんと仲良くいました。
でも……ある日。
眩しい日差しが、お空からキラリと差し込みました。
すると、お魚さん達は一斉に、まるで光に導かれるように泳ぎ去ってしまいました。
でも、くらげさんはのんびり屋さんだったので、それに気がつきませんでした。
いつの間にか、くらげさんの周りには誰もいなくなってしまいました。
一人きりは、とても寂しいです。
我慢しても、涙がぽたり、ぽたりと流れてしまいます。
その涙はくらげさんからこぼれて、ふわり、ふわりと降りていきました。
深い海の底へと。
すると、海の底には黒い蝶がいました。
その蝶は羽が裂けて、力も尽きてもう動けませんでした。
まだ飛びたい、お空に帰りたい。
そう思っても、体が思うように動きませんでした。
そこへ、くらげさんの涙の粒が降りていきます。
くらげさんの涙が黒い蝶に降り注ぐと、どうしたことでしょう。ぼろぼろに裂けた羽の傷がみるみるふさがっていきます。
力を取り戻した黒い蝶は、思い切ってひらりと羽をひるがえし、海の中を舞い上がってくらげさんの元へと
「……さん、みづきさん」
「あい。……あぅ……ぁぁ」
「起きてください。……起きてない、ですね。ううん、どうしよう」
「だ、れ」
「私です。凜霞です」
「はぁ……う、ん……ん?」
「みづきさん。あ、よだれ、たれちゃう」
凜霞がティッシュを取り、みづきの頬を垂れようとしているしずくを優しく拭き取る。みづきの安らかすぎる寝顔。凜霞の口元に、自然と優しい微笑みが浮かぶ。
「みづきさん。気持ち悪いところはないですか」
「だいじょ……ぶ。ぁりあと」
「よかったですね。…………って。ああ、すみませんでした」
みづきの頭を何度もなでていた凜霞は、突然驚いた表情に一変し、みづきからさっと手を離す。
異変に気づいたみづきがうっすらと片目を開いた。
「どうした、の?」
「あの……ですね。申し訳ありません。勝手に顔を触ったり、撫でたりしてしまいました」
「いいよぉ、りんかさんなら。触って、も」
みづきが再び目を閉じる。その無防備すぎる姿態にどうしていいかわからず固まっていた凜霞は、ついに意を決してそろそろと手を伸ばしていく。
人差し指で、つん、と頬に触れる。子供特有の瑞々しさのある弾力に、思わず凜霞の口元からため息が漏れる。そして、つつ、と指先で撫で上げていく。
みづきがぴくりと体を震わせて声にならない声を漏らす。それを聞いた凜霞もビクッと体を震わせて手を引っ込める。そして恐る恐るみづきを覗き見てみると、すでに安らかな寝顔に戻っていた。
凜霞はため息をついて、みづきに触れた方の手をみつめながら握ったり開いたりする。そしてそのまま片手をぱたりと降ろし、もう片方の手で黒髪を掻き上げながらみづきの耳元に顔を寄せて、吐息のような声でつぶやいた。
「みづきさん、申し訳ありませんが、時間です。起きてください」
みづきがゆっくりと、嫌がりながらもぼんやりと目を開く。
その目に映るのは、漆黒のカーテン……ではなくて、黒髪。そして、正面には透けるようは白い肌に切れ長の目、蒼く光る瞳。
いつの間にか、凜霞がみづきをほんの間近で覗き込んでいた。
「おはよ、う……ずっと見て、た……?」
「はい。寝顔が可愛いな、って思いました。起こしてしまい、すみません」
「あぅ……みじゅきちゃ……りんかさんにおはよ……う。って」
「おはようございます」
「うー、まだ……ねりゅの」
「時間、大丈夫ですか?」
「いま、なんじ」
「7時半です」
「ちち、ぢ……? ぁぁあさ、ごはんっっ!」
「……!」
凜霞が本能的に身を避けると同時に、みづきが飛び起きた。
くらげさんはとてものんびり屋さんで、いつもふわり、ふわりと漂っていました。
お友達もいるんですよ?
まわりには色とりどりのお魚さんが泳ぎ回っています。
小さくて可愛いお魚さん、大きくてかっこいいお魚さん。
みんなくらげさんと仲良くいました。
でも……ある日。
眩しい日差しが、お空からキラリと差し込みました。
すると、お魚さん達は一斉に、まるで光に導かれるように泳ぎ去ってしまいました。
でも、くらげさんはのんびり屋さんだったので、それに気がつきませんでした。
いつの間にか、くらげさんの周りには誰もいなくなってしまいました。
一人きりは、とても寂しいです。
我慢しても、涙がぽたり、ぽたりと流れてしまいます。
その涙はくらげさんからこぼれて、ふわり、ふわりと降りていきました。
深い海の底へと。
すると、海の底には黒い蝶がいました。
その蝶は羽が裂けて、力も尽きてもう動けませんでした。
まだ飛びたい、お空に帰りたい。
そう思っても、体が思うように動きませんでした。
そこへ、くらげさんの涙の粒が降りていきます。
くらげさんの涙が黒い蝶に降り注ぐと、どうしたことでしょう。ぼろぼろに裂けた羽の傷がみるみるふさがっていきます。
力を取り戻した黒い蝶は、思い切ってひらりと羽をひるがえし、海の中を舞い上がってくらげさんの元へと
「……さん、みづきさん」
「あい。……あぅ……ぁぁ」
「起きてください。……起きてない、ですね。ううん、どうしよう」
「だ、れ」
「私です。凜霞です」
「はぁ……う、ん……ん?」
「みづきさん。あ、よだれ、たれちゃう」
凜霞がティッシュを取り、みづきの頬を垂れようとしているしずくを優しく拭き取る。みづきの安らかすぎる寝顔。凜霞の口元に、自然と優しい微笑みが浮かぶ。
「みづきさん。気持ち悪いところはないですか」
「だいじょ……ぶ。ぁりあと」
「よかったですね。…………って。ああ、すみませんでした」
みづきの頭を何度もなでていた凜霞は、突然驚いた表情に一変し、みづきからさっと手を離す。
異変に気づいたみづきがうっすらと片目を開いた。
「どうした、の?」
「あの……ですね。申し訳ありません。勝手に顔を触ったり、撫でたりしてしまいました」
「いいよぉ、りんかさんなら。触って、も」
みづきが再び目を閉じる。その無防備すぎる姿態にどうしていいかわからず固まっていた凜霞は、ついに意を決してそろそろと手を伸ばしていく。
人差し指で、つん、と頬に触れる。子供特有の瑞々しさのある弾力に、思わず凜霞の口元からため息が漏れる。そして、つつ、と指先で撫で上げていく。
みづきがぴくりと体を震わせて声にならない声を漏らす。それを聞いた凜霞もビクッと体を震わせて手を引っ込める。そして恐る恐るみづきを覗き見てみると、すでに安らかな寝顔に戻っていた。
凜霞はため息をついて、みづきに触れた方の手をみつめながら握ったり開いたりする。そしてそのまま片手をぱたりと降ろし、もう片方の手で黒髪を掻き上げながらみづきの耳元に顔を寄せて、吐息のような声でつぶやいた。
「みづきさん、申し訳ありませんが、時間です。起きてください」
みづきがゆっくりと、嫌がりながらもぼんやりと目を開く。
その目に映るのは、漆黒のカーテン……ではなくて、黒髪。そして、正面には透けるようは白い肌に切れ長の目、蒼く光る瞳。
いつの間にか、凜霞がみづきをほんの間近で覗き込んでいた。
「おはよ、う……ずっと見て、た……?」
「はい。寝顔が可愛いな、って思いました。起こしてしまい、すみません」
「あぅ……みじゅきちゃ……りんかさんにおはよ……う。って」
「おはようございます」
「うー、まだ……ねりゅの」
「時間、大丈夫ですか?」
「いま、なんじ」
「7時半です」
「ちち、ぢ……? ぁぁあさ、ごはんっっ!」
「……!」
凜霞が本能的に身を避けると同時に、みづきが飛び起きた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
名もなき春に解ける雪
天継 理恵
恋愛
春。
新しい制服、新しいクラス、新しい友達。
どこにでもいる普通の女子高生・桜井羽澄は、「クラスにちゃんと馴染むこと」を目指して、入学早々、友達作りに奔走していた。
そんな羽澄が、図書室で出会ったのは——
輝く黒髪に、セーラー服の長いスカートをひらりと揺らす、まるで絵画から抜け出したような美しい同級生、白雪 汀。
その綺麗すぎる存在感から浮いている白雪は、言葉遣いも距離感も考え方も特異で、羽澄の知っている“普通”とは何もかもが違っていた。
名前を呼ばれたこと。
目を見て、話を聞いてもらえたこと。
偽らないままの自分を、受け入れてくれたこと——
小さなきっかけのひとつひとつが、羽澄の胸にじわりと積もっていく。
この気持ちは憧れなのか、恋なのか?
迷う羽澄の心は、静かに、けれど確かに、白雪へと傾いていく——
春の光にゆっくりと芽生えていく、少女たちの恋と、成長の物語。
義姉妹百合恋愛
沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。
「再婚するから」
そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。
次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。
それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。
※他サイトにも掲載しております
ほのぼの学園百合小説 キタコミ!
水原渉
青春
ごくごく普通の女子高生の帰り道。
帰宅部の仲良し3人+1人が織り成す、ほのぼの学園百合小説。
♪ 野阪 千紗都(のさか ちさと):一人称の主人公。帰宅部部長。
♪ 猪谷 涼夏(いのや すずか):帰宅部。雑貨屋でバイトをしている。
♪ 西畑 絢音(にしはた あやね):帰宅部。塾に行っていて成績優秀。
♪ 今澤 奈都(いまざわ なつ):バトン部。千紗都の中学からの親友。
※本小説は小説家になろう等、他サイトにも掲載しております。
★Kindle情報★
1巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B098XLYJG4
2巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B09L6RM9SP
3巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B09VTHS1W3
4巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0BNQRN12P
5巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0CHFX4THL
6巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0D9KFRSLZ
7巻:https://www.amazon.co.jp/dp/B0F7FLTV8P
Chit-Chat!1:https://www.amazon.co.jp/dp/B0CTHQX88H
Chit-Chat!2:https://www.amazon.co.jp/dp/B0FP9YBQSL
★YouTube情報★
第1話『アイス』朗読
https://www.youtube.com/watch?v=8hEfRp8JWwE
番外編『帰宅部活動 1.ホームドア』朗読
https://www.youtube.com/watch?v=98vgjHO25XI
Chit-Chat!1
https://www.youtube.com/watch?v=cKZypuc0R34
イラスト:tojo様(@tojonatori)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる