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第2章 海辺へ
顔に書いてある
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巨大なコンクリートの建造物に入場する。
内部は薄暗く、暑くも涼しくもない、いわゆる『ぬるい』環境で、多くの人々が行き交ってはいるものの、埋め尽くす程の混雑ではなかった。
みづきは行き交う人々をチラチラと見回して、はぁ、と胸に手を当てながらため息をつく。
「凜霞さんがいて、よかったよぉ」
「どうしてですか?」
「だって、ほら。あっちはお父さんとお母さん。そこは仲間連れ、あそこは……たぶんお付き合いしてる人、だよぉ。1人で来てたら、うわぁぁあああ? ってなってたかも」
「そう言えば、なぜ1人で旅行を? ご両親は? ……って、突然ですみません。聞いてもいいですか」
「私のこと、聞きたいです?」
「はい。私が勘違いしているだけかもしれませんが……なにか。私にとって、ただ出会っただけには思えなくて。みづきさんにはご迷惑かもしれませんが」
「そんなことないよ! 私、とっても楽しいよ? こんなお姉さんが欲しかったなぁ、みたいな」
「私がお姉さん、ですか」
「あ、わ、私! 凜霞さんに、お姉さんになって欲しい、とか言いたいわけじゃなくって」
「いいえ。こちらこそお姉さんになりたくない、という意味ではなくて」
「うちの家は、っと。どうしようかなぁ……ここで話すとながーくなりそうなので、あとで。お宿に戻ってから、ね」
「そうですか……はい、わかりました。ではこれからどうしますか」
凜霞は少しだけ俯き視線を反らした。
「んー。じゃ、こっちです」
「あ……!」
凜霞は手に違和感を覚えた。それは締め付けられる、あたたかい感触。
驚いて手を持ち上げると、そこには凜霞の手を握りしめているみづきの小さな手があった。その奥に見えるのは、みづきの少し恥ずかしそうな笑顔。
そしてみづきの口が開いて、
「人がいっぱいだから、ついてきてね。迷子になりそうなときは大きな声を出すの。いい?」
と言った。確かにそう言った。凜霞はみづきの言葉の意図がわからず、力の抜けた声で返答した。
「そ、うですね。はい」
「暗いところに勝手に行ってはいけませんよ。知らない人について行っちゃだめ。わかった?」
「あ、はい。わかりました」
「それから、えーっと、もし迷子になったときには交番に行って、お巡りさんに声をかける……とか言っていたような?」
凜霞は表情が一変し、僅かな笑みを浮かべている。
「あ、もしかして。昔、何か困ったことが起きたのですね」
「え。あ、その。なにも! ないです。ないです、ないです……よ?」
「その話も聞きたかったですね」
「聞きたかった……ですか? その、どうしても聞きたければ話せないこともないですけど。でも、何でわかったんですか?」
凜霞はその質問には答えず、静かにお辞儀をする。
「いずれにしても、ありがとうございました」
「ええと。どうしてありがとう、なのですか?」
「みづきさんが、私のことを心配してくれたのがわかるからです。私が寂しくならないように、頑張って教えてくれたのですね」
「あぁぁぁ。顔に何か書いてあるんですか、私」
「そうですね。読めるみたいです、私には」
「本当! ですか」
「そんなに顔を隠さなくても……嘘です」
「ええと、どの話が嘘だったのですか?」
「それは内緒です」
「えー……。んーーーーーーーーーーーーーー」
みづきが背伸びをして、それでも背が届かずに見上げながら凜霞の顔立ちを眺めている。
「顔、すごい近いです……ああ、わかりました。私の顔に、何か書いてありましたか」
「みづきにはわかりませんでした……」
「それでいいんですよ」
「そう、なんですか?」
凜霞はその質問をはぐらかすように、ふふ、と穏やかに笑った。
「案内、よろしくお願いします」
内部は薄暗く、暑くも涼しくもない、いわゆる『ぬるい』環境で、多くの人々が行き交ってはいるものの、埋め尽くす程の混雑ではなかった。
みづきは行き交う人々をチラチラと見回して、はぁ、と胸に手を当てながらため息をつく。
「凜霞さんがいて、よかったよぉ」
「どうしてですか?」
「だって、ほら。あっちはお父さんとお母さん。そこは仲間連れ、あそこは……たぶんお付き合いしてる人、だよぉ。1人で来てたら、うわぁぁあああ? ってなってたかも」
「そう言えば、なぜ1人で旅行を? ご両親は? ……って、突然ですみません。聞いてもいいですか」
「私のこと、聞きたいです?」
「はい。私が勘違いしているだけかもしれませんが……なにか。私にとって、ただ出会っただけには思えなくて。みづきさんにはご迷惑かもしれませんが」
「そんなことないよ! 私、とっても楽しいよ? こんなお姉さんが欲しかったなぁ、みたいな」
「私がお姉さん、ですか」
「あ、わ、私! 凜霞さんに、お姉さんになって欲しい、とか言いたいわけじゃなくって」
「いいえ。こちらこそお姉さんになりたくない、という意味ではなくて」
「うちの家は、っと。どうしようかなぁ……ここで話すとながーくなりそうなので、あとで。お宿に戻ってから、ね」
「そうですか……はい、わかりました。ではこれからどうしますか」
凜霞は少しだけ俯き視線を反らした。
「んー。じゃ、こっちです」
「あ……!」
凜霞は手に違和感を覚えた。それは締め付けられる、あたたかい感触。
驚いて手を持ち上げると、そこには凜霞の手を握りしめているみづきの小さな手があった。その奥に見えるのは、みづきの少し恥ずかしそうな笑顔。
そしてみづきの口が開いて、
「人がいっぱいだから、ついてきてね。迷子になりそうなときは大きな声を出すの。いい?」
と言った。確かにそう言った。凜霞はみづきの言葉の意図がわからず、力の抜けた声で返答した。
「そ、うですね。はい」
「暗いところに勝手に行ってはいけませんよ。知らない人について行っちゃだめ。わかった?」
「あ、はい。わかりました」
「それから、えーっと、もし迷子になったときには交番に行って、お巡りさんに声をかける……とか言っていたような?」
凜霞は表情が一変し、僅かな笑みを浮かべている。
「あ、もしかして。昔、何か困ったことが起きたのですね」
「え。あ、その。なにも! ないです。ないです、ないです……よ?」
「その話も聞きたかったですね」
「聞きたかった……ですか? その、どうしても聞きたければ話せないこともないですけど。でも、何でわかったんですか?」
凜霞はその質問には答えず、静かにお辞儀をする。
「いずれにしても、ありがとうございました」
「ええと。どうしてありがとう、なのですか?」
「みづきさんが、私のことを心配してくれたのがわかるからです。私が寂しくならないように、頑張って教えてくれたのですね」
「あぁぁぁ。顔に何か書いてあるんですか、私」
「そうですね。読めるみたいです、私には」
「本当! ですか」
「そんなに顔を隠さなくても……嘘です」
「ええと、どの話が嘘だったのですか?」
「それは内緒です」
「えー……。んーーーーーーーーーーーーーー」
みづきが背伸びをして、それでも背が届かずに見上げながら凜霞の顔立ちを眺めている。
「顔、すごい近いです……ああ、わかりました。私の顔に、何か書いてありましたか」
「みづきにはわかりませんでした……」
「それでいいんですよ」
「そう、なんですか?」
凜霞はその質問をはぐらかすように、ふふ、と穏やかに笑った。
「案内、よろしくお願いします」
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