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五章 化身の正体
力の代償
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紗英は目を剥いた。何故なら、これまで紗英は、散々言い聞かされ、散々見せられてきた。
海神様がどれほど、偉大か。そしてその化身であった静香が、どれほど集落の者たちに重宝がられていたか。当然、呪われているなど、考えるにも及ばないことだ。
氏神、海神、何のことだかさっぱりわからない。紗英は震える声をしぼってでも、反論せずにはいられなかった。
「うそ、だって……海神様の力を借りて、海を視て、それを伝える海神様の化身は、いつも有り難がられていて、漁師さんたちはみんな事故もなく、いつも笑顔で……呪い?そんなのおかしいべさ」
言葉にしながら浮かぶのは、静香の告げを聞きながら頭を垂れる男。海視の通りに船を進めたら大漁だったと山ほどの魚を裾分けにくる家族。息子を海で亡くして心を病んだ者が、静香の口寄せで息子と話せたと涙を流して喜ぶ姿……静香は愛されていた。
いくつもの集落にとってそれこそ神のような存在だった。呪われている者が、誰かのあんな笑顔を引き出せるわけがない。
紗英の拳は、震えた。その理由は、怒りかもしれない。押し寄せる悲しみかもしれない。わからないことへの恐怖かもしれない。はたまた、静香を悼む気持ちからかもしれない。
「笑顔……か」
イチは、紗英の言葉を馬鹿馬鹿しいとでも言うように鼻で笑う。
「何がおかしいの」
紗英はかちんと来て、言い放ち、イチを見上げた。するとイチは、実に悲しそうな目で、紗英を見つめている。面食らった紗英は、口をつぐんだ。
「化身が手にする力は……それによってもたらされる人々の繁栄や笑顔は……呪われた化身が、食らった男子の命と引き換えだ」
涙声で辛そうに語られたイチの言葉に、紗英の体から血の気が引いていく。
「え……それって、どういう、こと」
「知らぬなら、聞かせてやろう、この因果の始まりを」
そう言うとイチは、紗英の目の前に腰をおろして
「ずっと、ずっと、昔の話だ」そう、前置き、語り始めたのだ。イチの時代よりずっと昔の忌々しい出来事を。
海神様がどれほど、偉大か。そしてその化身であった静香が、どれほど集落の者たちに重宝がられていたか。当然、呪われているなど、考えるにも及ばないことだ。
氏神、海神、何のことだかさっぱりわからない。紗英は震える声をしぼってでも、反論せずにはいられなかった。
「うそ、だって……海神様の力を借りて、海を視て、それを伝える海神様の化身は、いつも有り難がられていて、漁師さんたちはみんな事故もなく、いつも笑顔で……呪い?そんなのおかしいべさ」
言葉にしながら浮かぶのは、静香の告げを聞きながら頭を垂れる男。海視の通りに船を進めたら大漁だったと山ほどの魚を裾分けにくる家族。息子を海で亡くして心を病んだ者が、静香の口寄せで息子と話せたと涙を流して喜ぶ姿……静香は愛されていた。
いくつもの集落にとってそれこそ神のような存在だった。呪われている者が、誰かのあんな笑顔を引き出せるわけがない。
紗英の拳は、震えた。その理由は、怒りかもしれない。押し寄せる悲しみかもしれない。わからないことへの恐怖かもしれない。はたまた、静香を悼む気持ちからかもしれない。
「笑顔……か」
イチは、紗英の言葉を馬鹿馬鹿しいとでも言うように鼻で笑う。
「何がおかしいの」
紗英はかちんと来て、言い放ち、イチを見上げた。するとイチは、実に悲しそうな目で、紗英を見つめている。面食らった紗英は、口をつぐんだ。
「化身が手にする力は……それによってもたらされる人々の繁栄や笑顔は……呪われた化身が、食らった男子の命と引き換えだ」
涙声で辛そうに語られたイチの言葉に、紗英の体から血の気が引いていく。
「え……それって、どういう、こと」
「知らぬなら、聞かせてやろう、この因果の始まりを」
そう言うとイチは、紗英の目の前に腰をおろして
「ずっと、ずっと、昔の話だ」そう、前置き、語り始めたのだ。イチの時代よりずっと昔の忌々しい出来事を。
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