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九章 静香の日記
清三との出逢い
しおりを挟む*こっちゃこ……こっちにこい
*いっぺっちゃ……いるんだよ
*こんぺ……頭
*あばいん……おいで
***
しょうわ十三ねんしちがつなのか。おてんき はれ
きょうは、うみがみのばばさまから、わらしっことおともだちになれといわれた。なまえはせいぞう。おいより、ふたつうえのぼうずあたま。しずか。
「シズ、こっちゃこ」
縁側で祖母の禎子が手招きをしながら静香を呼ぶ。静香は母に繕ってもらった布製のお人形を抱いて、禎子の前におずおずと出ていった。
「ばば様なんだべ」
「めにな、会わせねばなんね、男子童子がいっぺっちゃ」
「おら……男の子やんだ。乱暴だあもん」
静香はいやいやと首を振り、口を尖らせる。禎子は静香の肩に触れ、たしなめるような厳しい口調で言いつけた。
「いいかシズ、おいの言うこたあ、こんぺの先からケッツまで聞くだど。んでねば、許さねど」
禎子は、恐ろしい人だった。禎子は人を操ることが好きだったし、人からの賞賛を何より喜び、そういう輩をとても大事にしていた。
その反面、自分に意を唱えるような人間あらば、よく怨み節を語り、人をけしかけては陥れたりもした。静香はこどもながらにそんな禎子を浅ましく思い、わずかばかり嫌煙していた。
しかし、ひとつ屋根の下で暮らす以上、そんなことばかりも言ってはいられない。自然とうまく立ち回る術を覚えた。
蛇のような眼光にとらえられた静香は、うんうんと涙目で頷いた。すると、気分をよくしたのか、禎子の表情は一転して柔らかくなる。
「んでば、一緒にあばいん」
腰の曲がった禎子に連れられて、がんがら崖の下の浜にやってきた。ザンザンと、荒れた海がそこらの岩めがけて、波打つ。そこへ、坊主頭の男児が現れた。男児はじっと、静香を見つめている。穴があくほどというのは、こういうことかもしれない。
静香は、変な男の子もいたものだと、首を捻った。
「おお、おお。よう来たな。清三こっちゃこ。」
禎子は、波音に負けないよう声を張り上げて、清三という男児を呼ばる。清三は、口をへの字に結んで、静香の前へゆっくりと歩み出た。
「さ、清三、シズに挨拶せねば」
禎子がこう語尾を強めれば、清三はするどい三白眼を静香に向けて、小さく口を動かした。
「海平……清三言いす」
「おらは瀬尾……静香」
これが、清三と、静香の出逢いだった。
「仲良くしらいよ。いい友仲でいてけらい。そう、いい友仲でなあ」
禎子は含んで笑う。その言葉通り、清三と静香は、よい遊び友達となっていった。
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