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第一章
第16話
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「千尋、何ボーッとしてんだ?」
この日、千尋は大学の食堂で一人昼食を取っていた。
いつもは春華と一緒に食べるのだが、この日は春華が課題が終わらないからそちらを済ませたいということで、一人で食べることになった。
果穂と瑞穂の中学であった出来事を考えていてぼーっとしていた千尋に、大輔が声をかけてきたのだった。
「大輔。」
「お前が元気ないと気持ち悪りぃーな。」
「失礼ね、私だっておセンチになることだってありますー!」
食べていたハンバーグをフォークで刺して、思いっきり口に入れる。
それを見た大輔が、「少しは女らしくしろよ。」と苦笑しながら隣に座った。
湊の前では絶対にこんなことはできないが、なぜか大輔の前ではしてしまう。
男として意識をしていない相手だからこそもあるだそうが、そういう意味でも大輔は気楽に接することができる存在だ。
「今日は春華は一緒じゃないのか?」
「うん、春華は課題が終わってないからって。もしかしたら課題が終われば来るかも。」
「そっか。」
少し残念そうに、大輔は肩を竦めた。
その顔を見た千尋は意地悪く唇の端をニッと上げた。
「残念だったね、愛しの春華ちゃんがいなくって。」
「なっ!そんなんじゃ……ねぇよ。」
「あれー?もしかしてバレてないとでも思ってたの?そんな顔真っ赤にして言っても全然説得力ないんですけどー」
「はぁっ?バッカじゃねーの!」
「春華は鈍感だから、ちゃんと言葉にしないと伝わらないよー?」
「だから!そんなんじゃねーって!!」
「はいはい。」
必死に否定をしようとする大輔に思わず笑みが零れる。
大輔は、おそらく出会った時からずっと春華に好意を寄せている。
本人はこれでも隠しているつもりらしいが、春華を見る大輔の目で一目瞭然だ。
千尋もだが、湊もそのことにはとっくに気づいている。
当の本人である春華はというと、鈍感で大輔の気持ちにはまったく気づいていない。
たまに大輔が可哀そうになるほどだ。
大輔は見た目はこんなんだが、根はとてもいい奴だ。
春華と上手くいってくれれば嬉しいのにな、なんて千尋は密かに思っていた。
そして顔を上げた瞬間、千尋はまたもや意地悪く笑って大輔に耳打ちした。
「ほら、噂をすればだよ。」
「えっ?」
辺りをきょろきょろと見回しながら食堂に入ってきたのは春華だ。
千尋達に気付くと春華はぱぁっと笑顔になり、駆け寄ってきた。
「やっと課題終わったから来ちゃった。あぁ、もう疲れちゃったよ~…ってあれ?大輔くんもいたの?」
「いたよっ!どんだけ影薄いの、俺。泣いちゃうよ?!」
「ごめんごめん!ちぃちゃんしか目に入ってなかった!」
「あははは!春華、ナイス!」
「ナイス!じゃねーよぉ。」
本当に泣き出しそうな目をしている大輔を見て、千尋はくすりと笑った。
どうやらいじめすぎてしまったらしい。
千尋は食べ終わったトレーを持って椅子から立ち上がった。
「じゃあ、私は用事があるから退散しますかねー」
「えー。ちぃちゃん行っちゃうの?せっかく来たばかりなのにー」
「ごめんね、春華。私も次の授業の予習できてなくってさ。当てられそうだし、次の先生答えられないと怖いんだよ。」
「そっか、それなら仕方ないね。」
「うん、じゃあまたね!春香!大輔!」
まだしゅんとなっている大輔に心の中で「がんばれ!」とエールを送りながら、千尋はその場を後にした。
この日、千尋は大学の食堂で一人昼食を取っていた。
いつもは春華と一緒に食べるのだが、この日は春華が課題が終わらないからそちらを済ませたいということで、一人で食べることになった。
果穂と瑞穂の中学であった出来事を考えていてぼーっとしていた千尋に、大輔が声をかけてきたのだった。
「大輔。」
「お前が元気ないと気持ち悪りぃーな。」
「失礼ね、私だっておセンチになることだってありますー!」
食べていたハンバーグをフォークで刺して、思いっきり口に入れる。
それを見た大輔が、「少しは女らしくしろよ。」と苦笑しながら隣に座った。
湊の前では絶対にこんなことはできないが、なぜか大輔の前ではしてしまう。
男として意識をしていない相手だからこそもあるだそうが、そういう意味でも大輔は気楽に接することができる存在だ。
「今日は春華は一緒じゃないのか?」
「うん、春華は課題が終わってないからって。もしかしたら課題が終われば来るかも。」
「そっか。」
少し残念そうに、大輔は肩を竦めた。
その顔を見た千尋は意地悪く唇の端をニッと上げた。
「残念だったね、愛しの春華ちゃんがいなくって。」
「なっ!そんなんじゃ……ねぇよ。」
「あれー?もしかしてバレてないとでも思ってたの?そんな顔真っ赤にして言っても全然説得力ないんですけどー」
「はぁっ?バッカじゃねーの!」
「春華は鈍感だから、ちゃんと言葉にしないと伝わらないよー?」
「だから!そんなんじゃねーって!!」
「はいはい。」
必死に否定をしようとする大輔に思わず笑みが零れる。
大輔は、おそらく出会った時からずっと春華に好意を寄せている。
本人はこれでも隠しているつもりらしいが、春華を見る大輔の目で一目瞭然だ。
千尋もだが、湊もそのことにはとっくに気づいている。
当の本人である春華はというと、鈍感で大輔の気持ちにはまったく気づいていない。
たまに大輔が可哀そうになるほどだ。
大輔は見た目はこんなんだが、根はとてもいい奴だ。
春華と上手くいってくれれば嬉しいのにな、なんて千尋は密かに思っていた。
そして顔を上げた瞬間、千尋はまたもや意地悪く笑って大輔に耳打ちした。
「ほら、噂をすればだよ。」
「えっ?」
辺りをきょろきょろと見回しながら食堂に入ってきたのは春華だ。
千尋達に気付くと春華はぱぁっと笑顔になり、駆け寄ってきた。
「やっと課題終わったから来ちゃった。あぁ、もう疲れちゃったよ~…ってあれ?大輔くんもいたの?」
「いたよっ!どんだけ影薄いの、俺。泣いちゃうよ?!」
「ごめんごめん!ちぃちゃんしか目に入ってなかった!」
「あははは!春華、ナイス!」
「ナイス!じゃねーよぉ。」
本当に泣き出しそうな目をしている大輔を見て、千尋はくすりと笑った。
どうやらいじめすぎてしまったらしい。
千尋は食べ終わったトレーを持って椅子から立ち上がった。
「じゃあ、私は用事があるから退散しますかねー」
「えー。ちぃちゃん行っちゃうの?せっかく来たばかりなのにー」
「ごめんね、春華。私も次の授業の予習できてなくってさ。当てられそうだし、次の先生答えられないと怖いんだよ。」
「そっか、それなら仕方ないね。」
「うん、じゃあまたね!春香!大輔!」
まだしゅんとなっている大輔に心の中で「がんばれ!」とエールを送りながら、千尋はその場を後にした。
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