小国の若き王、ラスボスを拾う~何気なしに助けたラスボスたるダウナー系のヤンデレ魔女から愛され過ぎて辛い!~

リヒト

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鍛冶屋

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「おっちゃん。やっている?」

 シルクを連れて王都の外れた鍛冶屋へとやってきた僕は扉を開け、元気に声をあげる。

「おぉ!国王陛下。わざわざありがとうございます」

 そんな僕を出迎えるのは一人の小柄な男性だ。
 彼の名前はゴードン。かつては東にあるルーシ帝国でその腕を振るっていた敏腕の鍛冶屋であった人物だ。
 どれくらい凄い人かと言うと、ゲーム本編に出てきて、鍛冶屋として主人公陣営の武具防具の作成を一手に担っていたほど。世界一の鍛冶師と言っても過言ではなく、そんな彼はこの国唯一の作中キャラだ。
 彼はハッピーエンド後の世界で勇者が醜い世界中の国々の政争に巻き込まれ、人類の敵として処刑される様を見て世界に失望。面倒なしがらみから外れてただ鍛冶に没頭できる環境を求めてうちの国へと流れついていた。

「仕事を頼んだのは僕だからね。こちらからお伺いするのは当然だよ」

「いやいや、突然何も持たずこの国へとやってきた俺の為にこんな立派な鍛冶屋を建ててくれた国王陛下の頼みとあれば、全力でこなすのが当然ってものですよ」

「ははは!立派って言ってくれるのは嬉しいね」

 全然立派なの作れていないけどね。
 大工の数が圧倒的に足りていない。最低限のものを作るので精いっぱいだった。

「それで、どうだろう?僕の頼んだものってもう出来ている?」

「あぁ、元々構想は聞いていたし、その試作品は幾つも作っていましたから。しっかりとしたものが作れましたよ!……こいつですわ」

「おぉ!」

 ゴードンがこちらへと差し出してきた鉄製の首輪を見て僕は歓声をあげる。

「ちゃんと頼まれた通り、魔力をこいつが吸収するように作りました。問題なく機能することは実験済みです」

「完璧だね。ありがとう」

「それで……?ずいぶんヘンテコなものを作るよう頼まれましたが、これは一体何なんです?」

「あぁ、これはあれだね。一つの産業案だね」

「産業案……?」

「産業と言えるかは微妙なところだけど、これを使って刑務所ビジネス出来ないかと思って」

「け、刑務所ビジネス?」

「そう。ほら、色々な国で凶悪犯罪者の収容方法に頭を悩ませているでしょう?」

「あぁ……」

 この世界の凶悪犯罪者は一人で街を一つ落とすような、そんな化け物ぞろいだ。
 処刑しようものなら最後の自爆で大惨事を引き起こすから殺すに殺せない……そんな事例も多く、僕はそこに目をつけたわけだ。

「この首輪で魔法を封じた上で、我が国の厳しい環境下に作った監獄内に犯罪者を閉じ込めるんだよ。魔法を使わずにこの国で生きるのは不可能だから」

「まぁ、確かにそうですね。この国で火の魔法はあまりに重要ですからね」

「これで一儲け出来ないかと。まぁ、あくまで出来ないかなぁ?っていう期待程度ですけど。まず、監獄を建てられません。とはいえ、期待するだけならいいでしょう?それにほら、これを作る原材料はいっぱいあるから」

「確かにそうですね」

 大した資源のない我が国ではあるが、この鉄製の首輪の原材料となる吸魔鉱であれば幾らでも取れる鉱山がある。
 魔力をただ吸ってその分だけ硬くなるこいつは基本的に使用道がない。その使用道にならないかとこの首輪を作ってもらったのだ。
 あの刑務所ビジネスはともかくとして、この魔力を吸って相手に魔法を使わなくさせる首輪は普通に価値高いでしょう。

「結構納得できる話でしたけど……ですが、今回作ったのは、というか、国王陛下から頼まれていたのは魔法を使えなくさせるほど強力なものじゃないですよね?これで、先ほど言っていたことが出来るとは思えないんですけど」

「いや、いきなり魔法を封じるのは厳しいかな、って思って。とりあえず小規模のものでも形になった方がいいかなと思って」

「なるほど。でしたら、これから魔法を封じるレベルのものの開発をすれば?」

「あぁ、うん。そうだね。余裕があれば」

 全然、余裕があればでいい。
 なんか色々話したけど、これは普通に魔女であるシルクを拾えた時の為に作るようお願いしたものだ。この魔力漏れを無くす程度の一品でも十分だ。

「うぅん……でも、ちょっと、武骨かなぁ?」

 とはいえ、これを女の子であるシルクにつけてもらうのはちょっと抵抗感があった。
 隣に立つシルクに首輪を重ねる僕は首をかしげる。
 こう、何とかならないものか。

「何だ?その嬢ちゃんにつけてもらおうとしているのか……?さっきの、話からするにもしかして彼女は……」

「あぁ、全然そんなことはないよ?ただ、シルクは魔力漏れが酷いみたいなので、それ用」

「なるほど!そういうことですかい!それなら、安心してくだせぇ!相手が魔女だったとしても何の問題もなく魔力をピタリと止めてみせますぜ!」

「へぇ……それは興味深いね」

「そうだな。確かに嬢ちゃんにつけるには武骨過ぎるな。少し可愛くしようか。それと、ちゃんと大きさも合わせるか」

「あっ、出来る?」

「もちろんですよ!俺を信じてくだせぇ!」

「……別に、私はそれでも良いよ?」

「駄目だよ。こんなのシルクに似合わないから!ちゃんと似合うのにしてもらって!それじゃあ、お願いします。ゴードンさん」

「あぁ、任せてくだせぇ!」

 何でも良さそうなシルクの言葉は却下。
 僕はゴードンさんに首輪の調整を頼むのだった。
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