TS転生した悪役令嬢は主人公を押しのけて世界最強へと至り、作中の女の子を集めて百合ハーレムを築くそうですよ

成功

　婚約破棄。
　僕がドラゴンを倒す理由であり、目的として定めていた婚約破棄という待望は見事果たされることとなった。
　父上は『そこまで嫌であれば最初から破棄しておる。そんなドラゴンを倒すなどという危険を冒さずとも』なと言いながら婚約破棄を認め、国王陛下のほうからも許可を取り付けてくれた。
　それで八歳のころのパーティーで正式に婚約破棄を宣言。
　無事に豚王子との縁は切ることができた。

「婚約破棄は主人公からじゃなくて悪役令嬢からですの」

　無事に独り身となった僕はその後も実力で多くの実績を上げながらも多くの教育を受け、様々なことを学びながら成長していった。
　そして、僕は八歳から十五歳へと成長していた。　

「……」

　十五歳。
　それはゲーム本編の開始年齢であると共に、我が国に存在するすべての貴族の子女が学園へと通う必要が出てくる年齢である。
　例にも漏れず、十五歳へと成長した僕も学園へと通うことになる。

「君と、再び会える日を待っていた」

　そして、学園への入学の日。
　制服に袖を通して学園のほうにやってきた僕へと声をかける一人の少年の姿があった。

「……誰ですの？」

「何を言うか。君の元婚約者であるクルース・アーンクラだとも」

　豚王子。
　その面影は何処へやら。
　自分の前にいる彼はゲームに出てくるようなやせ細ったイケメンモードで僕の前に跪いていた。

「あの日から、私はこれまでの自分を振り返ってその多くを反省したのだ。今の和紙はこれまでの私とは違う。大きく成長した。しっかりと痩せ、多くのことを学び、ドラゴンを殺した君には及ばないだろうが、力だってつけてきたつもりだ。そして、当然匂いにだって気を使っている！もう臭いとは言わせない！」

　豚王子、もといイケメン王子へとジョブチェンジしていたクルースは堂々たる態度で僕へとそうアピールする。

「だからどうか！再び私と婚約してはくれないだろうか？私の愛は永久に変わることはない！」

　そして、そのままクルースは自身のポケットから取り出した箱を開けて自分へと指輪を見せてくる。

「すぅ」

　そんな彼を前に僕はそっと息を吸う。

「……っごく」

「一昨日来るですの。私は貴方と婚約なんてありえないですわ！もう生理的に無理ですわぁっ！！！」
　
　そして、告げるのは拒絶の言葉である。

「なぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああっ！！！」

　自分の言葉を受けて崩れ落ちるクルースを横目に、僕は学園の中へと入っていくのだった。