レベル1の俺が死んだらレベル999の最強チート美少女も死ぬらしい~異世界スローライフしたい俺と、帰りたい彼女の命がけバディ生活~

古池ケロ太

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第27話 メッセージ

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「ねぇヤン君、ジュンちゃんのときみたいに場所の目星はつかないの?」
「無理ですね。レベル1の人間など、どこにでも監禁できますから」
「そうよね~。なんだったら、そのへんの箱に詰めとけばいいもんね」
「お二人とも、さすがにひどすぎませぬか……?」
 
 そのときだった。
 突然、左腕に鋭い痛みが走った。

「いっ! った……!」
「どうしました、主君?」
「わ、分からない。いきなり引っ掻かれたみたいに……いっ、痛っ!?」

 痛みはさらに続いた。
 何もされていないのに、左ヒジから先に、赤い線のような傷が走ってゆく。 

「ヤン君、これ、何かの攻撃?」
「いえ、待ってください。………ジュンさんの腕をよく見て」
 
 ひとりでについた傷は、ヒジから手首にかけて伸び、曲がり、途切れながら、何かの形をかたどってゆく。
 これって、もしかして――。

「まさか……文字?」

 そうだ。
 しかも、これは――この世界の人たちには読めない文字だ。
 
「ひ………ひらがな、です。日本語――アタシたちの国の文字です」

 全員が息を呑む気配が伝わった。

「もしかして……」
「ええ、タクミさんです。自分の腕に爪か何かで傷をつけて、ジュンさんに転写させたんです。――何かを伝えるために」
「な、何て書いてあるの? ジュン!」

 やがて傷は手首のあたりで止まった。
 描かれた五文字のひらがなを、アタシは震える声で読み上げた。

「た か い と う」

 ラウラさんたちは顔を見合わせた。

「たかいとう……高い、塔?」
「タクミが、塔の上にいるってこと?」

 ヤンさんがハッと声を上げた。

「グラマン塔です。この王都の端にある、王族や貴族のための監獄塔……あそこなら確かに、幽閉するにはうってつけです」
「なるほど。ずいぶん贅沢な牢屋ね」
「しかし、そうなるとタクミさんを監視しているのは……」
「え?」
「……いえ、なんでもありません。とにかく場所は判明しました。のんびりしてはいられません」
「そうね。行きましょう、みんな」

 ラウラさんの言葉を合図に、全員が一斉に動き出した。

 ただ一人を除いて。

「……主君?」

 足が、動かなかった。

 うつむいたまま、アタシはその場に立ち尽くす。

 頭では分かってる。行かなきゃって。でも――
 体と心が、どうしても前に進むことを拒んでいた。

 その先に、星野君がいる。

 会いたい。会って、助けたい。
 でも――怖い。

 もし、星野君がアタシに失望してたら。
 夢みたいに、軽蔑する目で見られたら――

「ジュンちゃん………」

 ラウラさんの声にも、顔を上げることができなかった。

 そのとき。

 アタシの視界に、誰かの靴が飛び込んできた。

 顔を上げた瞬間――

 パァン!

 頬に鋭い衝撃が走った。

 ロキシィが、アタシを平手打ちしていた。

「ロキシィ………」
「いい加減にしなさいよ! いつまでもウジウジウジウジ! あんたたちの関係って、そんな程度なわけ!?」

 彼女はそう怒鳴ってから、アタシの手首を掴み、傷跡を突きつけてきた。
 星野君が痛みをこらえて刻んだ、あの文字を。

「見なさいよ! いったい誰が――他の誰がこんな方法で言葉を伝えられるっていうのよ!」

 ロキシィの琥珀色の目に、涙がにじんでいた。
 
「タクミが今待ってるのは、誰だと思う!? わたしじゃない! 悔しいけど………きっとわたしじゃないの!」

 張られた頬がじんじんと痛い。
 強くなったアタシのカラダは、平手打ちなんかで傷ついたりしない。
 でも――どうしようもなく痛かった。

 そのとき。

「うっ……?」

 また、あの引っ掻かれるような感覚が走った。
 今度は右腕だ。

「! ジュンちゃん、もしかして、また?」
「新しい情報でしょうか?」

 右の手首からヒジに向かって、また傷文字が伸びてゆく。
 でも、どうしてだろう。
 その文字の刻み方は、さっきと違って勢いがなかった。
 ためらうように――あるいは恥ずかしがるように。

 やがて、傷はヒジの前で止まった。

「あ……」

 その文字を見た瞬間、胸の奥が熱くなった。
 堰を切ったように、涙があふれ出す。

「えっ、な、なに? ジュン、なんで泣いてるの?」
「主君、なんと書かれていたのですか?」

 二人が驚いて問いかけてくる。
 でもアタシは、口元を手で押さえて、ただ首を振るしかできなかった。
 こみ上げる想いが胸を詰まらせて、言葉にならない。

 どうして、アタシはこんなところで立ち止まっているんだろう。

 ロキシィ、アイギスさん。
 ラウラさん、ヤンさん。
 そして――星野君。

 みんなが、こんなアタシに手を差し伸べてくれている。

 応えなきゃ。
 みんなの想いに。
 そして、自分自身の気持ちに。

「……みんな、心配かけてごめんなさい」

 涙をぬぐい、まっすぐ顔を上げる。

「アタシ、行きます。星野君を助けに」
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