レベル1の俺が死んだらレベル999の最強チート美少女も死ぬらしい~異世界スローライフしたい俺と、帰りたい彼女の命がけバディ生活~

古池ケロ太

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第41話 魔鉱列車起動せよ(2)

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「いたか?」
「ダメ、全然分かんない……」

 酒場を出て、俺と太刀川は人ごみに目を凝らしながらあたりを探し回った。
 だが、昼下がりの大通りは相変わらず人であふれ、怪しいやつなんて見つかるはずもない。

 たぶん、さっき太刀川にぶつかってきたあいつだ。ちらっと見たが、服の色すらはっきり思い出せない。

「ごめん、油断してた……」
「気にすんなって。さっきから何回目だよ、そのセリフ」

 太刀川は、身体の半分くらい血を抜かれたみたいに青ざめていた。
 まぁ、自分で「預かる」って言った直後に盗られたんだから、責任感じるなってほうが無理な話だが……。

「ど、どうしよう……。このままだと、馬車代も、今日の宿代も、ご飯代も……全部……」
「落ち着けって。なんとかなるだろ」 
「そ、そうだね。なるとかなる。なんとかしなきゃ……。アタシが悪いんだから、絶対、絶対にアタシがなんとかしないと……」
「おい!」

 俺は太刀川の両肩をつかんで、振り向かせた。

「しっかりしろよ! なんでも一人で背負い込もうとすんな!」
「で、でも……。ううっ~っ、でもぉ……」

 いつものキリッとした目元は見る影もなく、今にも崩れてしまいそうだ。
 このバカ、必要以上に責任を感じてドツボにはまってやがる。
 これだから根が真面目なヤツは……

「犯人、見つかったかい?」

 酒場の入り口から、黒髪をきっちりなでつけた黒縁メガネのおっさん――この酒場の店主が出てきた。
 俺たちが財布を盗まれたと知って、心配して来てくれたらしい。

 俺は首を横に振った。

「そうか……まいったね。他の客にも聞いてみたけど、誰も見てないって」
「警察に届けられないっスか?」
「ケイサツ? なんだい、そりゃ? 役所ならあるけど、盗難となると……ほとんどが泣き寝入りだね」

 あ~……やっぱ元の世界ほど治安は良くないか。
 しかも、下手にコトを大きくしたら王家の追手に感づかれちまう。
 まいったな。

 そのとき、酒場の奥から、しわがれた声が響いた。

「カ――ッ! ざまあねぇな、クソガキども! そんなマヌケ面ぶらさげて歩いてりゃ、スられて当然よ、カーハッハッハ!」

 ふと見れば、ハの字の形の口ヒゲをたくわえたじいさんが、酒瓶を片手にドアにもたれかかっていた。
 赤ら顔に釣り上がった目、ひねくれ者の魂をそのまま体現したような、見事なまでの偏屈顔だ。

「……なんだよ、あんた?」

 俺が苛立ち混じりに言い返すと、じいさんは唾を飛ばして怒鳴り返してきた。

「べらぼうめ、人に名を聞くときゃ、てめえから名乗りやがれ!」

 酒瓶を一気にあおりながら、大声を張り上げる。
 酔っ払いかよ。あいにくこっちにゃ構ってる余裕はねーんだよ。

「やめなよ、ヨギじいさん。子供にからむなんてみっともない」
「てやんでぇ、若造に説教するのは年寄りの義務ってもんよ! だいたいそこの小娘がボサッとしてるから悪いんだろうが! 天罰だ、天罰!」

 太刀川を指差してなじり倒す。
 太刀川は凍りつき、まるで処刑台に立たされたみたいに立ち尽くした。

 頭に血が上った。
 酔った勢いでも、言っていいことと悪いことがあるだろうが。

「ふざけんなよ、このジジイ……!」
「おうおう、なんだぁ、やんのか?」

 こらえきれず、俺はじいさんの襟元をつかんだ。

「おいおい、店先でケンカは勘弁してくれよ!」
「そうだよ、星野君! アタシは何とも思ってないから! こんなところで騒ぎを起こしたら港に行くどころじゃなくなっちゃうよ!」

 店主と太刀川が間に入り、俺は仕方なくじいさんを突き放す。
 じいさんはフンと鼻を鳴らした。

「港だぁ? マリンナの街に行くつもりか? 一文無しのくせに、どうやってあんな遠くまで行こうってんだ?」
「うるせぇよ、あんたにゃ関係ねえだろ」
「カ――ッ! おめぇら本当にトンチキだな! 俺っちの魔鉱《まこう》列車なら、ひとっ飛びだってのによ! カッハッハ!」

 その言葉に、太刀川がピクリと反応した。

「まこう、れっしゃ……? それ、乗り物ですか?」

 途端、じいさんの顔が誇らしげに輝いた。

「おう、聞きてぇか! 魔鉱列車ってのはな、古代文明の遺物だ。車輪のついた鉄の箱が、どんな峠だろうと、荒野だろうとぶっ飛ばしていく! マリンナの港までなら、三日で着くぜ!」

 自分の武勇伝でも語るみたいに、ヨギじいさんは夢中で話し始める。
 一方、店主は「またその話か……」と呆れ顔だ。

「ホラ話なんスか?」

 この世界観で列車なんてちょっと考えづらい。

「いや、たしかに数十年前まではここと他の街の間を走ってたらしいんだ。古代文明の遺物が再利用されるのは、まれにあることでね」

 マジか。
 すげーな、古代文明。

「ただ、それも昔の話さ。今じゃ動力を失って、ただのでっかいガラクタ。この街で動いてる姿を覚えてるのは、このヨギじいさんくらいだよ」
「べらぼうめ! あいつをガラクタ呼ばわりするんじゃねぇ! 燃料さえありゃあ、また動くんだ! 絶対にな!」
「何十年言ってるんだよ、それ……」
「燃料があれば、本当に動くんですね、その列車?」

 太刀川が真剣な目でじいさんに詰め寄った。

「おいおい、太刀川。本気にすんのかよ?」 
「だって、アタシたち、お金がないんだよ! その列車に乗せてもらうしかないじゃない!」

 責任感が暴走して、完全にスイッチが変な方向に入ってる。
 変な宗教にはまるタイプだな、こいつ……。

 ヨギじいさんは喜色満面の笑みを浮かべ、

「気に入ったぜ、嬢ちゃん! ついてきな! 魔鉱列車のこと、イヤってほど見せてやるからよ!」 
「はい! ぜひお願いします!」

 鼻息荒く答える太刀川は、完全に周りが見えてないご様子。

 俺は店主と一緒にため息をついた。
 どうしてこう、毎回毎回、厄介ごとの方から寄ってくるんだろう。
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