縁の下の能力持ち英雄譚

瀬戸星都

文字の大きさ
18 / 51

0017.新たな目覚め

しおりを挟む

 方向性が決まると何かと動きやすい。なんとなく再スタートを切った気分だ。
 やるべきことはなんだ。やはり魔物を倒せる実力を身につけることが先決か。ついでにお金も稼げるし一石二鳥ではある。

 冷静に自分を分析する。幸運にも能力は二つある。これはアドバンテージのはずだ。しかし武道についてはからっきし。タイマンになったら勝ち目はない。サポート向き、あるいは隠密行動向きだな。

 相手は魔物だしこれは実戦だ。型なんかなくても刃物で斬りつければ致命傷は与えられるはずだ。問題は如何にしてその状況を作り出すか。不意打ち、罠、……頭を使うしかない。逆に罠を仕掛けられた事を考えると、やはりある程度の自衛はできるようになっておきたいが、それは経験を積むしかないか。誰かに師事できればいいんだが。

 思考を巡らせながら、それとなくリッカを見た。

 仲間がいると何をするにも選択肢は一気に広がる。ずっと自分の側に護衛をつけるという手もなくはない。自分に出来ないならやってもらう。それは常套手段だが……

 こちらから視線を送ったものの、何もしゃべらないのでリッカは不審そうな目で見てくる。

 やはり年下のリッカを巻き込むことは出来ないな。リッカの母にも顔向けできないし。
 誰かアタッカーを探す、ということは常に頭に入れておくことにしよう。

 よし、大体考えは整理できたな。

「ヤマトはいつもそうなのか」

「うん?」

「そう、急に黙って……その、ムスッとした顔をし始めるのは」

「ああ、すまない。どうも考え込んでしまう癖があってな」

「ふ、ふんっ、別にいいけど……わりとみられる顔できるじゃねぇか」

「ん?」

 後半は声が小さかった。

「何でもない。ヤマトはこれからどうするつもりだ」

「俺も魔物を倒そうと思っている。だが、碌に剣も振るったことがなければ、そもそも武器すらもっていない」

「ダメダメだな」

「責めてるわけではないが、あのお金で買おうと思ってたんだよ」

「ぐっ……。わかった。あの剣はダメだが家に戻れば、兄貴のお古の剣がいくつかあるはずだ。それなら使っていい」

「助かる。ところでリッカはどうやって魔物を倒すつもりだ?」

「あたしは小さい頃から兄貴の相手をしていたんだ。それなりに腕に覚えはある」

 今も小さいけどな。
 声には出さないが、疑いの目で返しておいた。

「本当にリッカも魔物を倒しにいくのか?」

「ああ」

「どうしてもいくのか? 家族には何て言うつもりだ?」

「何も言わないさ。言ったら面倒なことになる」

 何とか穏便に引き止めたいが、リッカの覚悟は固そうだ。

「なに、狼の一匹や二匹なら問題ない」

 やはりこの辺りで魔物といえばあの森で遭遇した狼か。だが、あいつらはもっと複数で襲ってくる可能性もある。

「わかった。じゃあ俺も同行しよう。もし俺が危なくなっても助けなくていい。足手まといになるつもりはないからな」

「……まあ、別にいいけど」

 リッカの了承は得られた。巻き込みたくはないが仕方ない。少なくとも単独で行かせるよりはマシなはずだ。お金を稼ぐまではついていこう。最悪の場合は俺が囮になって時間を稼げばいい。リッカ母には俺が唆したと思わるかもしれないな。そう苦笑していたときだった。


「……見つけたぜ」


 聞き覚えのある声がきこえた。

「ベルグっ!」

 すぐにベンチから腰を上げ、リッカとともに間合いをとった。

「ふん、妙な格好をしてやがるから助かったぜ。隣りにいるのはさっきのガキだな? まだガキだが服が変わるとまだマシだな」

 ベルグが下卑た笑みを浮かべる。

 迂闊だった。少なくともこの街でジーンズを履いているのは俺ぐらいのようだ。せっかくリッカが着替えても俺と居たんじゃ意味がない。

「気前よく支払ってくれたのかと思ったが、千二百ゼムしかなかったぞ? 俺は二千と言ったよな?」

 ちゃんと拾って数えてきたようだ。体の割に細かい野郎だ。

「拾う手間も面倒だったぞ? でも俺は寛大だ。迷惑料も込みで五千ゼム出すなら許してやる」

 メチャクチャだ。こいつはもともと剣を売る気もない。
 そもそもそんな金を持っていれば逃げやしなかった。

 横目でリッカを見るが緊張した面持ちだ。何か策があるようには見えない。
 能力を使ったとしても逃げ切れるとは到底思えないし、何度も能力を見せて見破られるのも嬉しくない。

 万事休すか。剣を渡せば命まではとられないとおもうが。


 カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!カンッ!


 そう思ったとき、甲高い鐘の音が響き渡った。


 ーー魔物だっ!魔物の群れが街に迫ってきているぞっ!


 どこからかそんな声が聴こえた。

「チッ!こんな時にっ!」

 ベルグが舌打ちする。

「おい!お前らっ!早く剣を出しやがれ!すぐに出せば見逃してやる!」

 ベルグが勢いよく胸ぐらを掴んできた。

「悪いな。生憎だが剣は隠してあるんだ。取りに行くにも時間がかかる」

「この野郎っ!」

 ベルグが右の拳を振り上げ、その拳が

 勢いよく地面に倒れ込む。

「ちっ、探している暇はねぇ。ひとまずギルドに戻るか」

 ベルグは踵を返すと駆け出していった。

「お、おいっ!大丈夫か?」

 緊張が解けるとリッカが慌てて駆け寄ってきた。
 いつもの口の悪さが想像もつかないような心配そうな顔で覗き込んでくる。

「ははっ、リッカもそうしていると……みられる顔してるな」

「おっ、おまっ、さっきの聞こえて……」

 リッカは照れ隠しの一撃を腹にお見舞いしてきた。
 じんわりとした痛みを感じつつ、リッカをからかうのが癖になってきたなあ、と思わないでもなかった。
 危ない何かに目覚め始めているのではない、はずなんだけど。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎ 倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。 栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。 「責任、取って?」 噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。 手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。 けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。 看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。 それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。 そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。 しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの? 優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、 冒険者家業で地力を付けながら、 訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。 勇者ではありません。 召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。 でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

処理中です...