彼と私のお友達計画

百川凛

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STEP3:一緒に帰りましょう

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「どうだった? ちゃんと会話出来た? 無事に家に帰れた? アイツなんか変なことしなかった?」

 翌日の朝に会ってすぐ、鳴海くんに対して失礼なことを並べる皐月ちゃんはニヤつく顔で言った。

「会話はそこそこで……鳴海くんは家までちゃんと送ってくれたよ。特に変なことはされてない」

 私はじとりと睨みながら、皐月ちゃんに恨み言をぶつける。

「ていうか皐月ちゃんこそひどくない? なんで途中で帰ったの? あんな下手な演技までしてさ!」
「下手な演技ってひどーい!」
「事実でしょ!」
「あははっ! ごめんごめーん!」

 皐月ちゃんは笑って誤魔化す。

「いやね、あたしも最初は一緒に帰る気だったの。でも一緒に居て一花も怖がる様子ないし意外と良い感じに話せてたから。もしかして二人でもいけんじゃない? って思ってさ。読み通りうまくいったみたいで良かったじゃん!」

 ……確かに昨日は「三毛猫ってほとんどがメスって知ってたか? オスは3万分の1の割合でしか生まれないからかなり珍しいんだ」「へぇ、そうなんだ」なんていう猫トークでそれなりに会話が弾み、結局家まで送ってもらった。正直、あんなに長い時間男子と喋ったのは初めての事だった。そのせいか、昨日はものすごく早く寝てしまった。緊張と疲れがたまってたんだろう。

「それに、鳴海なら一花にひどいことしないってわかってたからさ」
「そりゃ……ひどいことはされなかったけど」
「でしょ? だから任せてもいいかなーって思ったの」

 どうやら皐月ちゃんは鳴海くんのことを相当信頼しているらしい。3年間、バスケ部で共に汗と涙を流してきたからだろうか。青春だ。

「まぁあれだ、お詫びに今度ドーナツ奢るからさ! 許して?」
「しょうがないなぁ。ホイップクリーム入ったやつだよ?」
「オッケー!」

 皐月ちゃんはニコニコと笑う。まぁ、悪気はないのはわかってるし、今回は許してあげよう。

「あ、そうそう。うちの部活、毎週水曜はミーティングと軽い筋トレだけなの知ってるよね?」
「え? うん」

 うちのバスケ部は週に一度、体を休める日を作っているそうだ。顧問曰く、成長期に無理をするのは良くないからって理由と、体育館を使う他の部活との兼ね合いがあるため、らしい。だから水曜日は皐月ちゃんと一緒に帰ってたんだけど……何か問題が起きたのかな。

「これから毎週水曜日は鳴海も一緒に帰ることになったから」
「え…………ええっ!?」
「そういうことでよろしく!」

 なんだかんだ言ってまた二人きりにさせられる予感しかしない。……前言撤回。皐月ちゃん許すまじ。
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