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STEP4:作ってみましょう
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家に帰ってミサンガ作りの練習をすること、数日。
「……出来た!」
私はようやく鳴海くんに渡すミサンガを完成させた。
茶、黒、黄色という、一見地味な色合いのシンプルなミサンガ。実は、鳴海くんの飼ってるキジトラ猫の虎徹くんをイメージして作った虎徹ミサンガだ。ちなみに、茶と黒は体のしま模様、黄色は瞳の色を表している。鳴海くんが気付いてくれるかはわからないけど、気付いてくれたら嬉しいなぁ。
試合に勝てますように。シュートを外しませんように。怪我しませんように。そんな願いを込めながら、ひと編みひと編み丁寧に編み上げたミサンガは、自分で言うのもアレだけど上手く出来たと思う。
皐月ちゃんたちバスケ部マネージャーもミサンガ作りは順調だそうで、このままいけば期日までに余裕で間に合うと喜んでいた。ちなみに大会の三日前に渡すのが伝統らしい。あれ……そういえば、私は鳴海くんにいつ渡せばいいんだろう。教室に行って呼び出すのはちょっとハードルが高いし、わざわざ来てもらうのも申し訳ない。その前に、自分から話しかけられるのかっていう問題があるし。
やっぱり一緒に帰る時にこっそり渡すのが一番いいかなぁ。こんなことを普通に考えるくらい、いつの間にか一緒に帰ることが当たり前になっていることに私は気付いていなかった。
*
いつ渡そうか悩んでいるうちに、時間は刻一刻と過ぎていく。
家で宿題をしていると、スマホから着信を知らせるメロディーが鳴り響いた。鳴海くんからの二回目の電話だ。私は慌ててスマホを取る。
「も、もしもし!」
『鳴海だけど。ちょっと報告したいことあって電話した。今時間いい?』
いつもより低めの声が耳をくすぐる。
「うん、大丈夫だよ」
『次の大会、レギュラーになったから』
鳴海くんは珍しく嬉しそうな口調で言った。
「えっ! すごい! おめでとう!!」
『どーも』
「最後の大会なんだよね? 頑張ってね!」
『おー』
なんだか私も嬉しくなって自然と笑顔になった。少し間を開けて、鳴海くんは確認するように切り出す。
『つーか笹川さん、俺との約束覚える?』
「約束?」
私の頭には疑問符が浮かんだ。
『俺がレギュラー獲ったら応援に来てってやつ』
「……あ」
それは確かに言われたような気がする。しかも行けたら行くって言ったような気もする。
『俺、笹川さんが来てくれるのめちゃくちゃ楽しみにしてるから』
「っ!?」
『ってことで応援よろしくな』
見えないはずなのに、頭の中では口角を上げた鳴海くんの顔が浮かんでいた。応援かぁ。あとで皐月ちゃんに場所とか色々聞いておこう。
『あ、それと。大会までは水曜日も練習することになって。しばらく一緒に帰れなくなった』
「え?」
鳴海くんの言葉に、私は一瞬動揺してしまった。
『大会終わるまでだから。ごめんな』
「……あ、うん。わかった。大丈夫」
それから二、三言話して電話を切った。私はスマホの真っ暗な画面を見ながらため息をつく。……そっか。しばらく一緒に帰れなくなるのか。それを聞いて、私はちょっとさみしいと思ってしまった。あと……ミサンガいつ渡そう。
「……出来た!」
私はようやく鳴海くんに渡すミサンガを完成させた。
茶、黒、黄色という、一見地味な色合いのシンプルなミサンガ。実は、鳴海くんの飼ってるキジトラ猫の虎徹くんをイメージして作った虎徹ミサンガだ。ちなみに、茶と黒は体のしま模様、黄色は瞳の色を表している。鳴海くんが気付いてくれるかはわからないけど、気付いてくれたら嬉しいなぁ。
試合に勝てますように。シュートを外しませんように。怪我しませんように。そんな願いを込めながら、ひと編みひと編み丁寧に編み上げたミサンガは、自分で言うのもアレだけど上手く出来たと思う。
皐月ちゃんたちバスケ部マネージャーもミサンガ作りは順調だそうで、このままいけば期日までに余裕で間に合うと喜んでいた。ちなみに大会の三日前に渡すのが伝統らしい。あれ……そういえば、私は鳴海くんにいつ渡せばいいんだろう。教室に行って呼び出すのはちょっとハードルが高いし、わざわざ来てもらうのも申し訳ない。その前に、自分から話しかけられるのかっていう問題があるし。
やっぱり一緒に帰る時にこっそり渡すのが一番いいかなぁ。こんなことを普通に考えるくらい、いつの間にか一緒に帰ることが当たり前になっていることに私は気付いていなかった。
*
いつ渡そうか悩んでいるうちに、時間は刻一刻と過ぎていく。
家で宿題をしていると、スマホから着信を知らせるメロディーが鳴り響いた。鳴海くんからの二回目の電話だ。私は慌ててスマホを取る。
「も、もしもし!」
『鳴海だけど。ちょっと報告したいことあって電話した。今時間いい?』
いつもより低めの声が耳をくすぐる。
「うん、大丈夫だよ」
『次の大会、レギュラーになったから』
鳴海くんは珍しく嬉しそうな口調で言った。
「えっ! すごい! おめでとう!!」
『どーも』
「最後の大会なんだよね? 頑張ってね!」
『おー』
なんだか私も嬉しくなって自然と笑顔になった。少し間を開けて、鳴海くんは確認するように切り出す。
『つーか笹川さん、俺との約束覚える?』
「約束?」
私の頭には疑問符が浮かんだ。
『俺がレギュラー獲ったら応援に来てってやつ』
「……あ」
それは確かに言われたような気がする。しかも行けたら行くって言ったような気もする。
『俺、笹川さんが来てくれるのめちゃくちゃ楽しみにしてるから』
「っ!?」
『ってことで応援よろしくな』
見えないはずなのに、頭の中では口角を上げた鳴海くんの顔が浮かんでいた。応援かぁ。あとで皐月ちゃんに場所とか色々聞いておこう。
『あ、それと。大会までは水曜日も練習することになって。しばらく一緒に帰れなくなった』
「え?」
鳴海くんの言葉に、私は一瞬動揺してしまった。
『大会終わるまでだから。ごめんな』
「……あ、うん。わかった。大丈夫」
それから二、三言話して電話を切った。私はスマホの真っ暗な画面を見ながらため息をつく。……そっか。しばらく一緒に帰れなくなるのか。それを聞いて、私はちょっとさみしいと思ってしまった。あと……ミサンガいつ渡そう。
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