彼と私のお友達計画

百川凛

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STEP8:彼と私のお友達計画

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 もう、嬉しさと驚きと恥ずかしさでどうにかなりそうだ。真っ赤になっているであろうほっぺを隠すように頬に手をやる。……熱い。目玉焼きでも焼けそうな熱さだった。告白なんて初めてだし、どうしたらいいんだろう。

「な、鳴海くんは、」
「ん?」
「……皐月ちゃんのこと好きなんじゃないの?」

 やっと出た一言がこれだった。

「はああああ!? 誰が!? 俺が!? マネージャーを!? ないないないない絶対ない! 俺が好きなのは笹川さんだから! マネージャーは協力者でありライバルだから!」
「そ、そう……」

 鳴海くんは目を見開いて叫ぶように言った。そして、サラリと言われた告白めいたセリフに私の体温は更に上がってしまった。

「わ、私……」

 絞り出した声はとても小さかったけど、目の前の鳴海くんには届いたらしい。真剣な顔で続きを待っている。

「最初は鳴海くんのこと、やっぱり怖かった。だけど、私に気を遣ってくれたり、すごく優しくしてくれて、飼い猫の話とかもしてくれて……一緒にいて楽しいなって思うようになったの」

 私は、まとまらない自分の気持ちをゆっくり言葉にしていく。鳴海くんはそんな私を急かすことなく、じっと耳を傾けていてくれた。

「男子でも話せる人が出来て嬉しいなって思ってて。だけど、皐月ちゃんと仲良くしてる所を見たり、女の子たちにキャーキャー言われてる鳴海くんを見るとなんだかモヤモヤしたりして……」

 鳴海くんがハッと息を呑んだ音がした。

「……昇降口で友達になりたくなかったって聞いた時はすごく悲しかった。やっぱり男子なんて大嫌いだって。泣いて、二度と関わらないって思ったの」
「っ、ごめん……本当に。傷付けてごめん」

 必死で謝る鳴海くんに向かって、大丈夫だと言うように小さく首を左右に振る。

「だけどあんなに悲しかったのは相手が鳴海くんだったから。他の人に同じこと言われても、たぶんここまで傷付かなかったと思う。それでやっと自分の気持ちに気付いたの」

 私は小さく息を吸う。

「私も、その……鳴海くんのことが好き……です」

 鳴海くんの反応が怖くてすぐに下を向く。だけどなんとか言えた! とりあえずよかった! 頑張ったよ私! 頭の中でそんなことを考えていると、鳴海くんは力が抜けたようにしゃがみ込んでしまった。私も慌ててしゃがみ込む。

「だ、大丈夫!?」

 鳴海くんは右手で口元を覆っていた。耳は私に負けないくらい真っ赤だ。

「…………うれしい」

 ぽつりと聞こえた小さな声。なんだか胸の奥がぽかぽかとあたたかくなった。

「ねぇ鳴海くん。私、来年もバスケの試合、応援に行ってもいい?」

 鳴海くんは一瞬驚いて、それから嬉しそうに笑った。チラリとのぞく八重歯が可愛らしい。

「もちろん。でも、次は彼女として来てくれると嬉しい」

 悪戯っ子のようにそう言われ、私は真っ赤になった。

「ざんねーん。鳴海フられなかったんだ」

 そう言ってドアからひょっこりと顔を出したのは先生に呼ばれたの皐月ちゃんだった。

「皐月ちゃん!」
「げっ」
「ちょっと! げって何よ、げって!」

 皐月ちゃんは文句を言いながら教室に入って来た。

「邪魔すんなよ」
「あらら? 協力者であるあたしにそんな態度とっていいのかしら? ん?」

 皐月ちゃんが詰め寄ると、鳴海くんは不機嫌そうに舌打ちをする。

「なんだかんだ上手くいって良かったわー。でも鳴海、次に一花のこと傷付けたら容赦しないからね!」
「わかってる。もう絶対傷付けない」

 鳴海くんの答えに、皐月ちゃんは満足したように頷いた。

「ふふっ、友達計画も無事終了したことだし、次は恋人計画始動ってとこかな?」

 ニヤニヤ笑みを浮かべる皐月ちゃんの言葉に、私と鳴海くんはただただ顔を真っ赤にさせた。





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