美形しかいない乙女ゲームの中の悪役令嬢に転生してしまったのですが誰か助けてください…。

魔法の授業スタートですっ！

どうやらやはり第二王子殿下は臆病な様です…。

　「久しぶりー、リズリ。」

「お久しぶりです。第二王子殿下。」

授業が行われる部屋に向かう途中、第二王子と鉢合わせてしまう。とりあえずドレスの裾を持ち上げ、お辞儀をした。
正直思う。第二王子殿下はパーティーなどにおいて最も必要何かを今までの人生のどこかで落としてきてしまっているんじゃないか、と。
そうでもなければまだ顔見知り程度の女性の名前を呼び捨てで呼んだりしない。
まあ、相手が相手だから何も言わないけど…。

「リズリは楽しみだった？魔法の授業。」

「ええ、とても。昨晩は楽しみすぎて寝れませんでしたわ。」

そう、と第二王子殿下はあまりうかない顔をする。
何か失礼な事でも言ったかしら？

「ずっと廊下で話すのもあれだし、向かいながらにしようよ。」

「はい。」

その後は色々と雑談で盛り上がっていたが、部屋が近づいてくるにつれ、殿下の口数がだんだんと減ってくる。
どうされたのかしら？
そう思っているうち、部屋の前へ着く。
ノックをして失礼します、と部屋に入った。

「初めまして。魔術師のレヴィー・ルイスです。」

そういってニコッと笑う。
前々から思ってたけどほんとにこの乙女ゲーム、ゲームに出てくるキャラだけみんな美形なのね…。
第一王子のリオン、第二王子のレイズ、三人目は…確か…いや、ここは伏せておこう。
ていうか誰に喋ってんだ？私。

「初めまして。リズリ・ヘレン・セインドと申します。」

軽く挨拶をして、さっきから私の後ろに隠れている第二王子殿下を見た。
今にも死にそうな絶望に満ちた顔でカタカタと震えていた。
魔術師様がニコニコと笑いながらこっちに歩いてくる。
違う。笑顔の裏側にとんでもなく黒いオーラを感じる。

「殿下？そのようなところで何をされていらっしゃるのですか？」

「い、いや…。」

ずんずん歩いてくる魔術師様を見て、ここはもう安全ではないと判断したのか、殿下が後ずさる。
すぐ後ろは壁だ。さあ、どう切り抜けるか…。

「いや…何ですか？」

魔術師様は最初の笑顔を崩すことなく歩いてくる。
ヤバい、とんでもなくヤバい。私の身体じゅうの細胞が生命の危機を叫んでいる。
殿下…どうか死なないでください…！