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2話

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エリーは水晶を触る。

すると


「こっ、これは・・・」

僧侶は驚く。


「これは適職がある兆候・・・!!」

水晶が光り輝く姿を見て、彼は言う。


「「 おおっ!! 」」

それを聞き、周りの人は声をあげた。


「でました!!

 彼女の適職は、魔法使いです!!」

僧侶は高らかに宣言した。

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人々は村に戻り、お祭り騒ぎになった。


才能持ちが村から出るのは、4,5年に1度。

才能持ちが出るたびに、村は祭りをしていた。


ということで、才能持ちが出た今、祭りをしているのだが・・・


「・・・」

喜んで騒いでいる村民とは裏腹に、エリーは黙っている。


「まぁ、元気だせよ」

「うん・・・」

元気の無い彼女に俺は声をかける。


なぜ、彼女がこんな気持ちになっているかを、俺は知っている。

(ゲームで説明されているからな)


才能持ちは、都で働くことができるが、逆にいうと、働かなければならない。

権利もあるが、義務もあるということだ。

この村に戻ってくることは、なかなか難しいことになる。


(だけど・・・)

これから彼女は、都に行って、充実した生活がスタートする。

苦しいこともあるが、楽しいこともある。

寂しさなんて、あっという間に吹っ飛ぶだろう。


(ゲームの説明では、笑顔が絶えなかったらしいし)

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後日


「それでは行ってきます」

「お前さんは、我々の光じゃ。
 行ってらっしゃい!!」

「「 行ってらっしゃい!! 」」

彼女は都へ出発する。

それを村民全員で、見届けた。


「・・・」チラッ

(エリーが俺のことを見た気がするけど、気のせいだよな・・・?)

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彼女が出発し、背中が見えなくなる。

「この村も寂しくなるわね・・・。

 あなたが一番そう感じるじゃない?」

「そうだね」

母親に話かけられた俺は返す。


正直、こういう展開になることは分かっていたので、あまり心のダメージは無かった。

まぁ、寂しいっちゃ、寂しいけど。


(って、それより・・・)

俺にはやらないことがある。


この後に起きるイベントは、ゲームの根幹を成すものである。

主人公エリーの成長には必須のものとなるが・・・


(しょうがねえよな)

俺は、このイベントを潰す。


なぜかって?

このイベントは、俺たちの村が滅亡することになるからだ。

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数日後

俺は、とある洞窟に来ている。

びっくりするぐらい、ゲームと同じなので、すぐに分かった。


(今なら引き返せるけど・・・)

このイベントが起きれば、主人公エリーは更なる才能を覚醒させる。


物語の進行上、不可欠だ。

だが、村は滅亡する。もちろん、そこに住んでいる人は死ぬ。

心を鬼にして、イベントを見届けることも考えたけど


(そんなこと・・・)

村のみんなをを思い出す俺は、このイベントを潰すことを決心した。

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「誰だ・・・?」

洞窟の奥に進んだ俺は、とある人物に話しかけられる。


「名乗りはしない・・・。

 ただ、お前のやろうとしていることを止める者だ」

「っ!?」

俺が言っていることに、そいつは驚く。

まぁ、自分しかしらない場所に俺がいたら、そうなるよな。
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