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第16話 初めましてお母さま。
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ニヤニヤと俺を見ている慧ママ。
(捥ぐ? 何を捥ぐの? 怖いんですけど!?)
「そんなに怖がらなくても良いじゃない。ちゃんと後から魔法で治してあげるから。」
無理。治るんだとしても、それは無理。
「……ははは。」
乾いた笑いが出てしまうのも無理はないだろう。
そんな俺の耳元で、色気たっぷりに慧ママは囁く。
でもね…私との浮気なら、怜に殺されたりしないわよ?
こっそりと爆弾発言を落としてくる慧ママ。
(どっちだ? 冗談なのか? それとも本気で……?)
俺は判断がつかず焦る。浮気はしないと誓ったばかりなのだが……慧ママの誘惑にも抗い難い。
(仮に冗談だとしたら捥がれる。だが本気なら……。)
「楠。あなた本当に浮気しそうね。こんなオバサンの誘惑も跳ねのけられないなんて……。」
そう呆れ顔で言う慧ママ。
無茶苦茶言うな!
(どう見てもオバサンに見えねぇぇんだよ! この人の誘惑を簡単に払いのけられる男子高校生なぞ、この世に存在せんわ!)
「慧ママは若いから、正直その誘惑はキツいよ。」
「本当に嬉しい事言ってくれるわね。」
誰にも内緒で筆おろししてあげよっか?
再び俺の耳元で囁く慧ママ。
悩みが一つ解決したと思ったら、明後日の方向から別の悩みがやってきた。
(母さん……。あなたの親友はどうかしてるよ。)
慧ママと怜のキャットファイトが始まってしまった。
ラウンド3。ファイッ!
「楠君の家って凄いね。いつもこうなの?」
「たまにこんな感じ。今日は俺が2人と付き合う事になったから、慧ママと怜がはしゃいでるんだと思う。」
「そうなんだ……。確かに楽しそうだもんね。」
そう……一見、慧ママと怜はケンカをしているように見えるが、楽しそうなのだ。
「家では母が2人って事で、特殊な賑やかさがあるんだけど、幸子も慣れてくれると嬉しい。」
「それは大丈夫。というか母が2人ってのよりも、魔法が使える母娘がいる方が特殊でしょ。」
確かに……。
「慧ママさんや怜ちゃん見てる感じだと、私もこの家に馴染めそうな気がするよ。」
「それは良かった。」
まぁ、幸子の性格を考えれば大丈夫そうな気はしていた。
「ただいま。」
「あ、お帰り母さん。」
母娘のキャットファイトを観戦しながら幸子と話していると、もう一人の母が帰ってきた。
「え? お母さま!? 今度こそお姉ちゃんだと思った……。」
母さんは幸子の発言が余程嬉しかったのか、ニヤニヤしている。
幸子の小さな呟きが聞こえてしまった。
(下品過ぎるだろ…。普通そんな事考えねぇよ。)
「日和井幸子と申します。お邪魔してます。」
「あ、これは御叮嚀にどうも。楠の母です。」
「楠君下さい。」
「え?」
慧ママと怜のドタバタを見て何かを察したのか、俺を見る母さんの視線には険が込められている。
「楠……あんた、怜がいるのに幸子さんに手を出したの? 堂々と怜をないがしろにして浮気報告とは良い度胸してるじゃない。」
完全に勘違いされてしまった。
「母さん、違うんだってば。ちゃんと説明するから。」
「違うんですお母さま。私が楠君を好きになってしまったんです。」
より一層勘違いされそうなセリフである。
幸子はちょっと黙ってて欲しい。
「うんうん。分かってるわよ。幸子さんはきっと悪くない。楠が流されやすいから手を出されちゃったのね。」
そう言って母さんは、幸子の頭を撫でている。
「楠。あっちへフラフラこっちへフラフラ……そういう男を何て言うか知ってる?」
「だから違うん……」
「浮気クソ野郎。」
絶対零度の視線で俺を射抜く母さん。
その視線だけで凍えてしまいそうな程だ。
「だから……」
「浮気クソ野郎。」
「だ……」
「浮気クソ野郎。」
「……」
「浮気クソ野郎。」
一切の反論を許さないと言わんばかりに圧を掛けて来る。ここまで言われれば、怒りが湧いてくるのが普通だ。
しかし、母さんが怖すぎて俺はそれどころじゃなかった。
「あの…お母さま? 浮気じゃないです。」
「……本気だとでも言うつもり?」
(幸子……お前すげぇよ。伝説のスーパー地球人状態の母さんに真っ向から意見出来るんだもんな。)
「私達は本気なんです!」
「へえ?」
俺を虫でも見るような目で見て来る母さん。
(違うんです! 本当に違うんです!)
俺はもう泣きそうだった。
「楠君とは、怜ちゃん含めて3人で付き合う事になりました。」
すると母さんは……
さっきまでの怒りは何だったのかと思う程、コロっと態度を変える。
「そうだったの? それなら早く言ってよ。勘違いしちゃったでしょ?」
反論を許さなかったのは貴女ですよ? お母さま。
「実の息子をもう少し信じてくれても良かったじゃん。」
少しだけ不満を込めて言う。
情けないが、これが俺の精一杯の反抗である。
「実の息子だからこそ、あんたが流されやすいのを知ってるんじゃない。」
「楠君はそんなに流されやすくありませんよ?」
(幸子ぉ……お前……。)
彼女の発言に俺は感動した。
「私が楠君に跨ってお股を擦りつけても、流されなかったんです!」
(幸子ぉ……お前……。)
本気で黙れと思ってしまった。
「それは……。凄いって褒めるべき?」
母さんは何とも言えない顔をしている。
幸子の衝撃発言に戸惑いを隠せない俺の母。
「褒めてあげて下さい。」
「そ、そう……。じゃあ、ヨーシヨシ。楠はイイコネ。」
そう言って俺の頭を撫でる母さん。
大いなる母の愛を、俺は全く感じ取る事が出来なかった。
(完全な棒読みじゃん。)
(捥ぐ? 何を捥ぐの? 怖いんですけど!?)
「そんなに怖がらなくても良いじゃない。ちゃんと後から魔法で治してあげるから。」
無理。治るんだとしても、それは無理。
「……ははは。」
乾いた笑いが出てしまうのも無理はないだろう。
そんな俺の耳元で、色気たっぷりに慧ママは囁く。
でもね…私との浮気なら、怜に殺されたりしないわよ?
こっそりと爆弾発言を落としてくる慧ママ。
(どっちだ? 冗談なのか? それとも本気で……?)
俺は判断がつかず焦る。浮気はしないと誓ったばかりなのだが……慧ママの誘惑にも抗い難い。
(仮に冗談だとしたら捥がれる。だが本気なら……。)
「楠。あなた本当に浮気しそうね。こんなオバサンの誘惑も跳ねのけられないなんて……。」
そう呆れ顔で言う慧ママ。
無茶苦茶言うな!
(どう見てもオバサンに見えねぇぇんだよ! この人の誘惑を簡単に払いのけられる男子高校生なぞ、この世に存在せんわ!)
「慧ママは若いから、正直その誘惑はキツいよ。」
「本当に嬉しい事言ってくれるわね。」
誰にも内緒で筆おろししてあげよっか?
再び俺の耳元で囁く慧ママ。
悩みが一つ解決したと思ったら、明後日の方向から別の悩みがやってきた。
(母さん……。あなたの親友はどうかしてるよ。)
慧ママと怜のキャットファイトが始まってしまった。
ラウンド3。ファイッ!
「楠君の家って凄いね。いつもこうなの?」
「たまにこんな感じ。今日は俺が2人と付き合う事になったから、慧ママと怜がはしゃいでるんだと思う。」
「そうなんだ……。確かに楽しそうだもんね。」
そう……一見、慧ママと怜はケンカをしているように見えるが、楽しそうなのだ。
「家では母が2人って事で、特殊な賑やかさがあるんだけど、幸子も慣れてくれると嬉しい。」
「それは大丈夫。というか母が2人ってのよりも、魔法が使える母娘がいる方が特殊でしょ。」
確かに……。
「慧ママさんや怜ちゃん見てる感じだと、私もこの家に馴染めそうな気がするよ。」
「それは良かった。」
まぁ、幸子の性格を考えれば大丈夫そうな気はしていた。
「ただいま。」
「あ、お帰り母さん。」
母娘のキャットファイトを観戦しながら幸子と話していると、もう一人の母が帰ってきた。
「え? お母さま!? 今度こそお姉ちゃんだと思った……。」
母さんは幸子の発言が余程嬉しかったのか、ニヤニヤしている。
幸子の小さな呟きが聞こえてしまった。
(下品過ぎるだろ…。普通そんな事考えねぇよ。)
「日和井幸子と申します。お邪魔してます。」
「あ、これは御叮嚀にどうも。楠の母です。」
「楠君下さい。」
「え?」
慧ママと怜のドタバタを見て何かを察したのか、俺を見る母さんの視線には険が込められている。
「楠……あんた、怜がいるのに幸子さんに手を出したの? 堂々と怜をないがしろにして浮気報告とは良い度胸してるじゃない。」
完全に勘違いされてしまった。
「母さん、違うんだってば。ちゃんと説明するから。」
「違うんですお母さま。私が楠君を好きになってしまったんです。」
より一層勘違いされそうなセリフである。
幸子はちょっと黙ってて欲しい。
「うんうん。分かってるわよ。幸子さんはきっと悪くない。楠が流されやすいから手を出されちゃったのね。」
そう言って母さんは、幸子の頭を撫でている。
「楠。あっちへフラフラこっちへフラフラ……そういう男を何て言うか知ってる?」
「だから違うん……」
「浮気クソ野郎。」
絶対零度の視線で俺を射抜く母さん。
その視線だけで凍えてしまいそうな程だ。
「だから……」
「浮気クソ野郎。」
「だ……」
「浮気クソ野郎。」
「……」
「浮気クソ野郎。」
一切の反論を許さないと言わんばかりに圧を掛けて来る。ここまで言われれば、怒りが湧いてくるのが普通だ。
しかし、母さんが怖すぎて俺はそれどころじゃなかった。
「あの…お母さま? 浮気じゃないです。」
「……本気だとでも言うつもり?」
(幸子……お前すげぇよ。伝説のスーパー地球人状態の母さんに真っ向から意見出来るんだもんな。)
「私達は本気なんです!」
「へえ?」
俺を虫でも見るような目で見て来る母さん。
(違うんです! 本当に違うんです!)
俺はもう泣きそうだった。
「楠君とは、怜ちゃん含めて3人で付き合う事になりました。」
すると母さんは……
さっきまでの怒りは何だったのかと思う程、コロっと態度を変える。
「そうだったの? それなら早く言ってよ。勘違いしちゃったでしょ?」
反論を許さなかったのは貴女ですよ? お母さま。
「実の息子をもう少し信じてくれても良かったじゃん。」
少しだけ不満を込めて言う。
情けないが、これが俺の精一杯の反抗である。
「実の息子だからこそ、あんたが流されやすいのを知ってるんじゃない。」
「楠君はそんなに流されやすくありませんよ?」
(幸子ぉ……お前……。)
彼女の発言に俺は感動した。
「私が楠君に跨ってお股を擦りつけても、流されなかったんです!」
(幸子ぉ……お前……。)
本気で黙れと思ってしまった。
「それは……。凄いって褒めるべき?」
母さんは何とも言えない顔をしている。
幸子の衝撃発言に戸惑いを隠せない俺の母。
「褒めてあげて下さい。」
「そ、そう……。じゃあ、ヨーシヨシ。楠はイイコネ。」
そう言って俺の頭を撫でる母さん。
大いなる母の愛を、俺は全く感じ取る事が出来なかった。
(完全な棒読みじゃん。)
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