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3 二度目の高校生活
しおりを挟む学校に行くと、私の記憶通り恵奈は席が隣ですぐに仲良くなれた。
(最初は凄く仲が良かったのに、私が空気読めないせいでダメにしちゃったんだよね…。)
三人で生活する事で、私は二人の様子を気にかけるようになり、そのお蔭で二人と会話する時は空気が読めるようになっていた。
(前回の高校生活では本当にバカだったって思うよ…。)
始業式も終わり、私は恵奈と二人でカラオケに行く。例の話をする為には人が居ては邪魔だ。カラオケに行きたいと私から誘い出したのだ。
「実はね。真面目な話があるの。」
恵奈はキョトンとした顔を見せ…
「え?なになに?もしかして告白?」
とクルクルと表情を変えて茶化してきた。
「えっと…。恵奈の事は好きだけど、そういうんじゃなくて真面目な話。」
「あ、好きなんだ。照れるなぁ~。」
「あのね…。私、未来から来たの…。今日恵奈と席が隣になるのも分かってた。」
「ん?そういう設定から始まる感じ?」
彼女は全く信じていないようだ。
(当然か…。信じさせられるような話をしないと。)
「渡辺樹君。」
「え?」
驚いた表情で口をあける恵奈。
「誰から聞いたの?いや、でも……」
この時点での恵奈は彼の事をまだ誰にも話していない。
「まだ誰にも話したことないでしょ?恵奈がずっと好きな幼馴染。」
なんで? と困惑する彼女。
「恵奈から聞いたよ。正確には、そう遠くない未来で親友になった私に恵奈が話してくれた。」
「もしかして…本当に…?」
信じられない…
そう言う恵奈は既に私を信じかけていた。
「私は恵奈と樹君が不幸になる未来を変える為に来たの。」
「不幸?」
「恵奈と樹君は大学入学で一人暮らしを始めるんだけど、偶然同じアパートだったの。」
「え?何それ?そしたら不幸になる訳ないじゃん!幸せじゃん!」
恵奈は幼馴染との再会の話が出た途端、有頂天になってしまっている。
「そこは良かったんだけど、私と恵奈の仲が拗れたせいで大変な事になってしまって…。」
これまで私が体験してきた事を彼女にざっくりと説明した。
私が樹君と体を重ねた事や、病気の彼を二人で支える為に三人で付き合って一緒に住んでた事等は伏せる。
これを話してしまえば、恵奈はきっと怒り狂ってまた関係が拗れてしまうだろう事が、今の私にはわかっていた。
「ありがとうね。でもそれを言う為にわざわざ過去に来たの?」
重要な部分を誤魔化して伝えている為、彼女にはいまいち伝わりきらないようだ。
「本当はね。もっと伝えたい事があるんだけど、今それを言ってしまうと流れが確実に変な方向にいっちゃうから話せないの…。」
「そっか。過去に戻った時のお約束的な奴ね?」
「そういう事。」
その後、私達はカラオケを楽しんでそれぞれ帰路についた。
二度目の高校生活は楽しくて、今回は恵奈とずっと仲の良いまま過ごす事が出来ていたので、既に問題を解決した気になっていた私は些細なミスを犯していた。
私は演技が得意なわけではない。樹君を好きだという気持ちが洩れていたようで、何度も会話を重ねた恵奈にそれを察知されてしまった。
恵奈は人の機微に敏い。忘れていた訳ではなかったが、完全に油断していた。
真面目な話がある。
恵奈と二度目の初対面を経験したあの日、私が言った事と同じことを彼女は言ってきた。
センター試験前で色々と悩んでいるような発言もあった為、その事だと思っていた私は、彼女から告げられた一言に動揺していた。
「慧ってさ、いっくんの事好きでしょ?」
「え?」
「親友だし、分かるよ。以前から引っかかってはいたけど、最近確信した。」
「えっと…。」
「ねえ。もしかして前に言ってた話せない部分ってのと関係ある?」
恵奈は何となく勘づいている。私と樹君の関係にも引っかかりを覚えているようだ。若干だが、敵意のようなものまで含まれた視線でじっと私を見ている。
それでも私を親友だと思ってくれているお蔭か、彼女の敵意は極めて薄いものだった。
「話せないわけじゃないけど…。出来れば樹君と恵奈が付き合ってしばらくしてから、いえ…もしかしたら一生言わなかったかもしれない。」
「……。」
「それだけ今後に影響のある重要な事だけど、取り乱さないで聞く覚悟はある?」
「…大丈夫。」
「先に前置きしておくと、私は恵奈と樹君どちらも愛しているという前提で聞いて。話の途中で逃げたり、怒って話を聞かないというのは無しだよ?」
「わかった…。」
今まで曖昧に伝えていた真実を彼女へ告げる。恵奈は黙って聞いていた。私はここでも油断していたのだ。
「結局は私達のいざこざに彼を巻き込んだ形になった。だから私と恵奈の関係の改善が最も良い解決策だと思って今までは話せなかったの。」
「そっか。確かに私たちのせいだね。」
でも…と彼女は続ける。
「だからと言っていっくんは私の大事な親友に手を出したんだ?」
恵奈は零れるような嫉妬心を声に乗せて言った。
彼女は樹君と私、どちらにも嫉妬しているようだ。
「待って!それでも私たちは最後、仲良く三人で付き合えていたの!」
「そっか…。」
何とも言えないような表情で彼女はそれ以上言葉を発しなくなった。
私たちはぎこちないながらも残りの高校生活を過ごし、今日から一人暮らしを始める。
(何とかここまで来た…。)
やっと、ここまで辿り着いた。
(今回、イレギュラーはあったけど何とかなりそうで良かった。)
私は二度も失敗していながら、些細な異変に気付いていなかった。
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