【完結】担任教師の恋愛指導。先生、余計なお世話です。

隣のカキ

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第20話 恋愛? いいえ、騙し合いです。

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 カラオケ店で歌を歌い、俺達は普通に盛り上がった。


「武太先輩凄く上手いです!」

「いやいや、莉々伊ちゃんだって透き通るような声でビックリしたよ。」


 この娘、本当に歌が上手いのだ。もしかしたらアイドルグループに入れるんじゃないだろうか?


「そんな……照れちゃいますよ。」


 莉々伊ちゃんはこうして見ると、本当に今まで恋愛出来なかったのが不思議な程の美少女だ。

 錬蔵に邪魔されてばかりいなければ、もしかしたら猟奇的な性格が育まれる事も無かったかもしれないのに……。


「あっ。」


 思い出した。

 俺は何を普通に盛り上がっていたのだろうか?

 今日のデートでは莉々伊ちゃんに俺を諦めてもらうつもりだったのだ。


「どうしました?」

「なんでもないよ。」


 話をどうもっていこうか。


「武太先輩はやっぱり私とお付き合いしたくはない感じですか?」

「へ?」

「私だって馬鹿じゃありません。気乗りしてないのは接していて分かります。」

「あーっと……莉々伊ちゃんがダメってわけじゃないんだけどね?」

「無理しなくても良いですよ。お兄ちゃんと友達なら、尚更キモイお兄ちゃんの妹とは付き合いたくはないですよね……。」


 見るからに落ち込み顔を伏せる莉々伊ちゃん。

 錬蔵の妹ってのは勿論嫌だが、俺の場合はそれだけじゃないんだよなぁ……。


「……。」


 彼女に目を向ければ、俯きながら目元から数滴の雫が垂れている。

 泣く程想ってくれているのなら、こちらも誠意ある対応をしないとダメだな。

 仕方ない。

 別に隠しているわけじゃないんだから、俺の事情を説明しよう。


「あのさ……まだ言ってなかったんだけど、俺は恋愛に興味がなくなってしまったんだ。」

「え?」

「錬蔵からは俺の話を多少は聞いてるんだろ?」

「……はい。」

「信じられないかもしれないけど、あまりにも恋愛に縁がなさ過ぎて、片想いの経験すらも出来なくて、俺は恋愛そのものに興味をすっかりなくしてしまった。女性に対しての興味もなくしてしまった。」

「男の人が好きと言う事ですか?」


 全然違う。

 あと、涙を含ませながら興味深々の目で俺を見るんじゃない。


「いや、そうじゃなくて。性欲を向ける対象は女性なんだが、恋愛したいとはこれっぽっちも思わなくなってしまったんだ。恋愛的な意味で男女ともに興味はない。」

「えっと……武太先輩は誰とも付き合うつもりがないって言ってましたけど、本当に言葉通りの意味だったと?」

「そういう事。性欲はあるから将来お金で解決しようと思ってる。」

「あぁ……通りで。元々私に興味が薄かったのはそんな事情があったからなんですね。」

「まぁ、失礼な話だとは思うんだけどさ。」

「ホテルに誘っても乗ってこなかったのはどうしてですか? 性欲はあるんですよね?」

「……好きでもない相手にそんな事したら失礼だろ。」

「誘いに乗って、私に乗っても良かったのに……。」


 今真面目な話してんだから、下ネタはやめてくれないだろうか?


「流石にそれは出来ないよ。相手に申し訳ないからね。」

「だったら、私が武太先輩に協力しますよ? 恋愛に興味が湧くよう頑張りましょう。」


 袖をまくり、力コブをつくってやる気を見せる莉々伊ちゃん。

 本来であれば有難い申し出なのだろうが、この提案に同意してしまうとミイちゃんとの事がバレる恐れがある。

 そして、ミイちゃんと莉々伊ちゃんを混ぜると良くない化学反応が起こりそうで正直怖い。

 混ぜるな危険。


「それは必要ない。今の俺は恋愛から解放された事で、面白おかしく過ごす事が出来ているからね。」

「そうですか……。なら、私が勝手に協力する分には問題ありませんね?」


 はい?


「武太先輩は普段通り面白おかしく過ごして下さい。私が勝手に協力して、結果として私に恋愛感情を抱くなら仕方ないですよね?」


 全然仕方なくねぇよ。

 でも、泣きながら言われると俺も弱い。


「まぁ……そうかもね。」

「恋愛に縁がなくて興味をなくしてしまったなら、縁が出来れば興味も戻るんじゃないですか? 負担は一切かけませんので、どうか手助けさせてもらえませんか?」


 ここまで言われてしまっては断り難い。

 莉々伊ちゃんの涙に多少の罪悪感が湧き、つい頷いてしまう。


「……ちょっとだけなら。」


 俺がそう返事を返すと、朗らかな顔でにこりと笑う莉々伊ちゃん。

 普通だったら嬉しくて笑顔を見せたのだと考えられるのだが、しかしなにか、こう……若干の違和感を感じる。

 何だ?

 言っている事は至極真っ当っぽいし、せっかく笑顔を見せてくれたのだから、歓迎するべき場面の筈なのに、今の莉々伊ちゃんからは名状しがたい何とも言えない気持ち悪さを感じる。

 俺が捻くれているだけなのか?


「頑張りますので、よろしくお願いします。」


 ふと何気に彼女の鞄に視線をやると、目薬がひょっこり入口からはみ出している。

 まさか……嘘泣き?


「……。」


 まさか、ね。


「どうかしましたか?」


 俺の視線に気づいたのか、莉々伊ちゃんは慌てて「すみません。これ邪魔ですよね?」と言って鞄を自分の背に移動させる。

 泣き落としで誘導された、のか?


「なんでもないよ。」


 確認してみよう。


「ほら、涙を吹かないと。」


 俺はそう言って莉々伊ちゃんの目元を親指で拭い、自身の鼻を掻くフリをしつつ拭った涙をこっそりと舐め取る。


「ありがとうございます。武太先輩、優しいですね。」


 そう言って笑顔を向けて来る美少女の顔を見ながら、俺は愕然としていた。

 苦い……。

 これは涙じゃない。

 絶対に目薬だ。


「呆けた顔して、どうしたんですか?」


 俺を真っ直ぐ見つめる可愛らしい少女は、まるで一切の邪気も感じさせないかのような自然な顔で問いを投げてくる。

 俺はどうやら泣き落としで誘導されてしまったようだ。


 女って怖えぇ……。



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