【完結】担任教師の恋愛指導。先生、余計なお世話です。

隣のカキ

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第28話 恋愛? 全肯定しとけばうまくいくよ?

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 今日も今日とて放課後の活動を開始する。

 俺は帰宅部。

 帰宅部は帰宅するまでが帰宅活動だ。

 つまり何が言いたいのかと言えば、帰宅するまでに起こった全てが活動内容とも言える非常に包括的なバリエーションに富んだ部活動という事だ。


「ねえねえ。武太君ってば。」

「何だい零子ちゃん?」

「錬蔵君ったらさ、最近私の家の玄関前に捨てられてるんだけど、意味がわからなくて困ってるんだよね。男の子ってそういうものなの?」


 大丈夫だ零子ちゃん。俺も未だにちゃんと理解してないから。


「さ、さぁ……。」

「零子ちゃん先輩。お兄ちゃんは絶対零子ちゃん先輩が好き過ぎて捨てられてるんだと思います。」


 これが帰宅部である本日の俺の活動内容だ。

 莉々伊ちゃんが俺を待ち伏せし、零子ちゃんは相談があると言って俺を待ち伏せし、結果的に鉢合わせた二人と帰路を共にしている。


「そう、なのかな? 人が捨てられてるってあまり聞いた事がないんだけど。」

「そうです。絶対にそうですって!」


 そりゃ聞いた事ある訳ないよね。

 特殊なプレイだとしても、ちょっとくらいは耳にした事があるプレイなんていくらでもある世の中なのに、玄関に彼氏が捨てられてるプレイなんて聞いた事もない。

 莉々伊ちゃんに至っては、これが正解だと言わんばかりに捨てられプレイを肯定し始める始末。

 そんなんで兄の恋愛が上手くいくと思ってる所が最高にヤバイ。


「私って元カレとしか付き合った事がないから、男の子についてまだ詳しくないんだよね。」

「大丈夫です。私は男の子と付き合った事はありませんが、兄の生態についてはそれなりだと自負しています。間違いありません。兄は零子ちゃん先輩を思いっきり愛しているんです。」

「そ、そお? 何だか思いっきり愛されてるとか言われると照れちゃうな。」


 え? 零子ちゃんはそれで納得すんの?

 これが全肯定ヒロインの力だとでも言うのだろうか。


「ですよね。武太先輩?」


 俺に振るんじゃない。


「う、うん。どちらかと言えば……どことなく?」

「ほらほら。やっぱり!」

「本当だ……。私、錬蔵君を信じてみるよ。」


 人様の玄関で妹に捨てられてるような男のなにを信じる気だ?


「愛されるって嬉しいものだね。元カレは全然私の事見てくれなかったし。」

「え? 酷いです。零子ちゃん先輩を見ないだなんて信じられません。」

「私が元カレの前で武太君を褒め過ぎちゃったからかなぁ……。」


 それだよそれ!

 誰がどう聞いてもそれしか原因ないんだって。


「えぇ? 元カレさん小さくないですか? 武太先輩凄く良い人だから褒めちぎっても仕方ないと思いますよ?」

「だよねだよね? 莉々伊ちゃんってば話が分かる! こんなに良い後輩なかなかいないよ。」


 なんでだよ。

 俺だったら嫌だぞ? 他の男ばかり褒める彼女なんて。


「クラスの友達に相談してもね、微妙な顔ばかりされてたから私が悪いのかと思ってたんだ。」


 大正解!

 つーか、零子ちゃん既に答え教わってるじゃねーかよ。


「お友達の方はなんておっしゃってたんですか?」

「えっとね。『彼氏の前で他の男褒めまくったらダメだよ』って。」


 ド直球! ど真ん中ストライクの答えだよそれ!


「一般論としては合ってますけど、誰を褒めてるかによりません? お父さんとか兄弟を褒めるんだったらありですよね?」

「幼馴染とか限りなく夫婦に近い親戚みたいなものなんだからありだよね?」

「ですです。完全にありですね。」


 おい待て莉々伊ちゃん。

 せっかく零子ちゃんが普通の方向に行こうとしているのに、なぜ変な道を進ませようとするんだ。

 後、幼馴染は夫婦に近い親戚ではない。

 しかし凄いな。

 間違った事でも全肯定してくれる人って、こんなにも人間関係を円滑にするものなんだな。

 こりゃあ権力者が周りにイエスマンを置きたがるわけだ。

 社会の闇を見た気がする。

 流石にこれは看過できない。

 元々変な二人が化学反応を起こして、更にぶっ飛んだ方向へ行ってしまうのだけは止めなければ。


「心の中で褒めると良いんじゃないかな。わざわざ他の男を褒めると角が立つでしょ。俺だったらちょっと嫌かなーって。」


 言ってやった。言ってやったぞ!


「流石武太先輩! そうですよね! 他の男を褒め過ぎるとやっぱり良くないですよね!」

「だよねだよね! 武太君ってば冴えてる! 流石私の幼馴染! 今度からは心の中で褒める事にしようっと。」


 あれ? 思った反応と違う。

 てっきり反対意見を言ってくるのだと思っていたが……全肯定ヒロインがもう一人増えてしまうというまさかの事態になってしまった。


「零子ちゃん先輩、こんな素晴らしい幼馴染に恵まれて羨ましいです!」

「なかなか気付けなかった私って馬鹿だなぁって思うよ。」

「そんな事ないです! 素晴らしい人が近くにいたもんだから、他の人も無条件で武太先輩と同じくらい素晴らしい人だと思ってしまったんですよきっと! だから零子ちゃん先輩は悪くありません。」

「成る程。確かに莉々伊ちゃんの言う通りだ! 私、武太君と同じレベルの安らぎとか元カレにもあると思ってたもん。」


 この二人、どこまで本気で言ってんだ?

 全肯定ヒロインってヤバいな。これは甘い毒だ。

 仮に毎日こんな調子でもてはやされたとしたら、自信だけが肥大化し、己の間違いに気付けない人間になってしまいそうだ。

 ここまで持ち上げられると嘘くさいと感じる俺はまだ正常な部類だろう。

 しかしこれが続いてしまったとしたら、どこかで俺はダメになる気がする。


「一応言っておくけど、俺は凡人だ。人に誇れる何かに秀でているとかないから。」

「武太君ってこんな感じで昔から謙虚なのよ。俺凄いんだぜ? みたいな事は絶対言わないの。」

「分かります! 謙虚さって大事ですよね! お兄ちゃんに爪の垢を煎じて飲ませたいくらいです。」


 もう何言ってもダメだなこりゃ。

 ただでさえ単独でダメンズ製造機なのに、この二人を一緒にするとダメンズ製造の性能が爆上がりしてしまう。

 後、爪の垢はキモいからやめてくれ。


「莉々伊ちゃん、お願いがある。錬蔵を呼んでくれ。」

「え? 急にどうしたんですか?」

「今急に錬蔵に用事が出来た。」

「そこまで言うなら呼んでみますが……。」

「その必要はない。既にいるからな。」


 は?


「お兄ちゃん。いつの間に……。」

「錬蔵君。居たなら話に参加してくれれば良かったのに。」


 こいつ、マジでどこから生えてきやがった。

 莉々伊ちゃんが呼べばすぐに来るとは思っていたが、呼ばなくても来るとは考えもしなかった。


「錬蔵。済まないが俺はお前にここを任せて先に帰らねばならん。」

「そうか友よ。美少女二人は俺に任せて、お前は先に行け。」


 敵を足止めして味方をサポートする奴みたいな雰囲気出しやがって。

 女の子侍らせたいだけだろコイツは。


「あぁ、頼んだぞ。莉々伊ちゃん、兄を応援してやると良い。」

「任せて下さい!」

「零子ちゃんは彼氏と仲良くな。」

「それなら得意だよ!」


 本当かよ。得意じゃないから破局したんでしょうに。


「ではさらばだ諸君!」


 なんとか脱出出来た。

 錬蔵ならダメにはならんだろうし、後はあいつに任せておこう。

 悪いが付き合いきれん。
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