私の神様はとてもとても面倒臭い人です。

入奈

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序章

秘書の仕事

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カチャッ…


ティーカップを置いた音だけが響く。
何も無いとまでは言わないが、白い空間にテーブルひとつ
椅子ふたつ、テーブルの上にはティーカップとティーポットが
置いてあり、ミルクティーの香りでいっぱいだ。
ひとつの椅子には私が座り、もうひとつの椅子には主が座る。

「ミルクティーは飽きた。」
「でしたら明日はハーブティーにしましょう。」

私はミルクティーの方が好きなんですけどね。

「それも飽きた。」

なんなんですか。

「そのふたつしかありませんよ。」
「買ってくればいいだろう?」




「どこに買いに行けと仰るのですか?」




もう1度言います。
何も無いとまでは言わないけれど、真っ白い空間に私と主のふたりきり。前も後ろも横も上も終わりの見えない白が続いて床と認識出来るものも全てが真っ白。買いに行く?どこへ?

「貴方様はなのですから、貴方様が世界を作ればいい話なのです。いつまで休んでいるおつもりですか?」

本来、神とは人々が作り上げた架空の存在であると認識されていますがもっと身近な存在であるべきなのです。
仲のよかった学生時代の親友がいきなり
「私…神なんだ笑」ってカミングアウトするくらいの存在で。
そんな神様ですが意外にも神は沢山います。
神一人につきひとつ、世界を造れる決まりがあって、神の望んだ
世界は三分もあれば造れてしまう。気に入らなければ壊して造り直したりもできる。

それなのにこの神様は神らしくなく、いつもテーブルと椅子を並べて考え事をしてミルクティーを啜ってている。
世界を造ろうとせずに何年もこうしている。
私の秘書としての仕事はなく、することと言えばこんな主に
付き合ってミルクティーを啜るだけ。流石の私も飽きてきた。


「いつ世界をお造りになるおつもりですか。」
「…神は今のところ何番目までいる?」
「今は62570番目までいます。今のところ世界を造られていない方は貴方様おひとりですよ。」
「マジですか。」

秘書として派遣された私もここまで仕事がないと干からびて死にそうです。神には必ず1人秘書がつく決まりになっていて、私は晴れて秘書育成学校を卒業し、神というまさに憧れそのものの秘書になれたわけですが…その憧れの神様がハズレだなんて誰も思いはしないだろう。

「私の学生時代の友人は皆神様の秘書としてお役にたてているらしいです…、私なんて…はぁ…。」
ため息も何千万回としただろう、消えかけている。

「おいおい、役にたっていないとは言ってないだろう。ため息をつくな、心配するな。」
「だったら私の為に私を解雇して別の神様の元へ行かせてくださいよ。」
「どうしてそうなったんだよ。」

こんな所に長く居れる私は相当すごいと自画自賛できる。
私がこの人の秘書に就任したのは1000年前の話。
そうと考えると千年前から何一つ代わりのないこの部屋に1000年も居ると頭がおかしくなるのも過言ではない…のだが、私は別に頭はおかしくなっていない。むしろ就任前よりも完璧な冷静さを手に入れた。ずっと豆腐を眺めながらミルクティーを飲んでいるみたいなものだ。3時間でギブアップするだろう、私以外。

「お前の気持ちもわかる。仕事大好きなお前のことだ、仕事を裏切るような真似が出来ないから辞職ではなく俺に解雇しろと言ってきた。そうだろ?…でも割とマジでお前に辞められると困る。」
「そう思うなら世界を造ってくださいよ。」
「俺だって何も考えてないわけじゃないんだよ、ただもう少し時間がかかる…。そもそも神が世界を造るのにかかる時間が三分なのに俺は世界ひとつ造るのに1年も…」

「1000年です。」

「…1000年もかかっているんだ。仕事をするのが待ち遠しいお前にどれだけ秘書としての仕事を与えられていないのかもよーくわかる。てか、ここまでくるとお前だってギネス載れるんじゃないかって思うくらい待ってるだろ?」

「恐らくですが余裕でギネス載れます。」

「だろ?そんな耐久性ある秘書はお前しかいないんだよ…、
だからお前を手放すのはちょっと困ると言うかかなり困る。」

しょげてる主を見るのは1000年一緒にいてもこれが初めてだ。
今思えば主のことは笑った顔とつまらなそうな顔しか知らないと
気づいた。1000年も一緒にいてこれだけかと思うと恥ずかしくなる。主はまだまだ沢山顔を持っているのか。
退屈だとは何千万回と思ってきたが主と話すのは嫌いではない。
主の話に付き合いながら飲むミルクティーも嫌いではない。
1000年も主に付き添ってきたんだ、だったらこの際ずっと一緒に居てやろう。主が嫌と言っても居てやろう。1000年も待ったんだもう1000年、待ってやろう。


「そうですか、ではひとつ伺いたいのですが…貴方様の理想の世界造りで何に悩んでおられるのですか?」
秘書として、相談にのることも仕事の内に入るのだろう。
主の悩みは私の悩みです。いくらでも相談してください。
2人で貴方様の理想の世界造りをしましょう。



「あぁ、それなんだが…?」




は?もしかしてそれだけに1000年も悩んできた…?
私の待った1000年がキッチンの有無…?
ふざけないでくださいよ…嘘でしょ…たかがキッチン…


私はふつふつと沸き上がる怒りを我が主にぶつけてやった。

「いりますよ…!!!!!!」

我が主エリオット様はとてもとても面倒臭い御方であられます。
私はそんなエリオット様の秘書

「そんな怒るなよー!悪かったって!」



ライラとは私のことです。
エリオット様に仕えること早1000年…やっと仕事ができます。

「エリオット様!もう悩みはないですね!?いや、あってはいけないのです!!!早く世界を、三分で、造ってください!!!」



私の仕事漬け生活がここから始まるのです。
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