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十話 こっちの世界の事わかりません
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詰所から歩いて数分。
こちらは木造の二階建ての建物で、入り口の上には盾をイメージしたシンプルなマークが描かれた大きな旗が貼ってあり、入り口は中に入りやすいように広くとってあります。ギルドが閉まる時間までは常に空きっぱなしで営業されているようですね。
入り口付近の右側から、この街の商店の広告らしきものが並び、その広告を見ながら中に入ると、スポンサーとして数々のお店の名前が並んで記載されているのが見えまして、それを見ながら進んでいくと、冒険者ギルドの受付が見えてきます。
受付には5から6人ほどのスタッフがいまして、広告に沿って並んでいる冒険者を順番に丁寧に案内しているのが見えます。その他にも、並んでいる冒険者に対して簡単な案内をしているスタッフもいるため、一見ずらっと並んでいて時間がかかりそうな受付も、その列はどんどん進み、気が付けば自分の番になっているということは少なくないと、冒険者や依頼人からも、ギルドの受付に対しての評価は高いらしいですよ。
日ノ本の国から来てしまったたえ、下級初心者冒険者のチカ、そして有給をとって面白半分についてきた兵士のガクは、もっぱら美味しい食べ物の事をたえに話すチカを先頭に受付の列に並んでいました。
そこに、列の整理をしていた受付嬢が声をかけます。
「チカちゃんお帰りなさい!初のクエストはクリアできたかな?近場だったし薬草取りだったから大丈夫だとは思ったけど、どうだった?・・・ん?ガクさんお久しぶりね!今日は仕事どうしたの?チカちゃんの事心配でイライラしてたから休んじゃったのかな?」
そうおしゃべりをはじめた受付嬢に、いや~今日はコイツの事でよ・・・とたえを指さすガクは、受付嬢に先ほど詰め所で作った身分証(仮)を渡しました。それを見た受付嬢は応接間が必要と判断したようで、少し時間が欲しいと言い、受付の中で上司と打ち合わせをし始めました。
その間、チカはスポンサーが出している広告の「冒険者は体力勝負!肉肉にくじゅうしー!ハンバーグ祭り!」とか「あーマズイ!でも効き目はばっちり☆青汁マークのポーション」などの飲食関係のうたい文句に目が釘付けになっていて、なにがなんだかわかっていないたえに向かって「ここのジューシーハンバーグ最高なんですよ!」なんて話しています。
そして、ほんの十分くらいで受付嬢が再度声をかけてくれたため、三人はそろって受付嬢に案内され、二階にある一室に通されました。
こちらも詰め所とはあまり変わりなく、長いテーブルに椅子だけのシンプルな部屋。
冒険者ギルドも詰め所もわからないたえにとっては、ただ移動して部屋を変えただけのように思えましたので、思わず「何処もあまり変わらず質素なのでございましょうか?」つぶやいたところ「だな~こんなところで金使うだけ無駄だからな、必要最低限のものがあればそれでいいって思ってるんだよ」と後ろから声がしました。
年は40代くらい。クリーム色の半そでシャツに黒い長ズボン。
胸から膝上くらいまである紺色の作業用エプロンを付けた長身の男が足をひきづりながらやってきました。
「ぉぃぉぃ、副ギルドマスター自ら面接とはこれまた豪勢だな」
「ちげぇよ!優秀な受付嬢達の手が空かないから、一番の出来損ないが来ただけよ」
そんな言葉をかけあいながら、お互い握った拳を合わせてにかっと笑うガンと副ギルドマスターと呼ばれた男は、お互い近くにあった椅子に腰を下ろし話をし始めました。しばらく二人を見ていたチカとたえでしたが、少し疲れてしまったのもあり近くの椅子に腰かけると、ギルド長は本来の役割を思い出したのか?手に持っていた書類一式を広げました。
「まずは、ギルド長の代理として、ギルドメンバーである初級冒険者チカの命を救ってくれて本当にありがとう!ギルドの代表として感謝申し上げる」
そう頭を下げてから、立て続けて申し訳ないがと前置きをし、たえの今後について話をはじめました。
詰め所での取り調べにより、犯罪歴が無い事や異世界人である可能性が高い事を確認した事。冒険者チカによる証言と、ギルドカードから読み取った戦闘ログというシステムから、たえがチカと助けた事や外見とは裏腹に戦闘能力が高い事がわかった事を踏まえ、冒険者ギルドとしては、たえに冒険者ギルドに所属してもらい、町の安全のために働いてほしいというお願いをしました。
ギルドに所属するためにかかる金銭は、チカを助けてくれたお礼としてギルドマスターである自分が立て替える事や、冒険者ランキングも下級からではなく、実力に見合った級の冒険者として採用する旨の話をしていたのですが、たえは困った表情しか出来ませんでした。
その表情を見て、何か不満でもあるのか?とむすっとした表情になってしまった副ギルドマスターに対して、ガンとチカは声をそろえて言いました。
「「たえ(さん)はこっちの世界の事わからないんだ(です)よ」」
と。
※2018/8/10 ギルドマスター(ギルド長)を、副ギルドマスターに変更しています。
こちらは木造の二階建ての建物で、入り口の上には盾をイメージしたシンプルなマークが描かれた大きな旗が貼ってあり、入り口は中に入りやすいように広くとってあります。ギルドが閉まる時間までは常に空きっぱなしで営業されているようですね。
入り口付近の右側から、この街の商店の広告らしきものが並び、その広告を見ながら中に入ると、スポンサーとして数々のお店の名前が並んで記載されているのが見えまして、それを見ながら進んでいくと、冒険者ギルドの受付が見えてきます。
受付には5から6人ほどのスタッフがいまして、広告に沿って並んでいる冒険者を順番に丁寧に案内しているのが見えます。その他にも、並んでいる冒険者に対して簡単な案内をしているスタッフもいるため、一見ずらっと並んでいて時間がかかりそうな受付も、その列はどんどん進み、気が付けば自分の番になっているということは少なくないと、冒険者や依頼人からも、ギルドの受付に対しての評価は高いらしいですよ。
日ノ本の国から来てしまったたえ、下級初心者冒険者のチカ、そして有給をとって面白半分についてきた兵士のガクは、もっぱら美味しい食べ物の事をたえに話すチカを先頭に受付の列に並んでいました。
そこに、列の整理をしていた受付嬢が声をかけます。
「チカちゃんお帰りなさい!初のクエストはクリアできたかな?近場だったし薬草取りだったから大丈夫だとは思ったけど、どうだった?・・・ん?ガクさんお久しぶりね!今日は仕事どうしたの?チカちゃんの事心配でイライラしてたから休んじゃったのかな?」
そうおしゃべりをはじめた受付嬢に、いや~今日はコイツの事でよ・・・とたえを指さすガクは、受付嬢に先ほど詰め所で作った身分証(仮)を渡しました。それを見た受付嬢は応接間が必要と判断したようで、少し時間が欲しいと言い、受付の中で上司と打ち合わせをし始めました。
その間、チカはスポンサーが出している広告の「冒険者は体力勝負!肉肉にくじゅうしー!ハンバーグ祭り!」とか「あーマズイ!でも効き目はばっちり☆青汁マークのポーション」などの飲食関係のうたい文句に目が釘付けになっていて、なにがなんだかわかっていないたえに向かって「ここのジューシーハンバーグ最高なんですよ!」なんて話しています。
そして、ほんの十分くらいで受付嬢が再度声をかけてくれたため、三人はそろって受付嬢に案内され、二階にある一室に通されました。
こちらも詰め所とはあまり変わりなく、長いテーブルに椅子だけのシンプルな部屋。
冒険者ギルドも詰め所もわからないたえにとっては、ただ移動して部屋を変えただけのように思えましたので、思わず「何処もあまり変わらず質素なのでございましょうか?」つぶやいたところ「だな~こんなところで金使うだけ無駄だからな、必要最低限のものがあればそれでいいって思ってるんだよ」と後ろから声がしました。
年は40代くらい。クリーム色の半そでシャツに黒い長ズボン。
胸から膝上くらいまである紺色の作業用エプロンを付けた長身の男が足をひきづりながらやってきました。
「ぉぃぉぃ、副ギルドマスター自ら面接とはこれまた豪勢だな」
「ちげぇよ!優秀な受付嬢達の手が空かないから、一番の出来損ないが来ただけよ」
そんな言葉をかけあいながら、お互い握った拳を合わせてにかっと笑うガンと副ギルドマスターと呼ばれた男は、お互い近くにあった椅子に腰を下ろし話をし始めました。しばらく二人を見ていたチカとたえでしたが、少し疲れてしまったのもあり近くの椅子に腰かけると、ギルド長は本来の役割を思い出したのか?手に持っていた書類一式を広げました。
「まずは、ギルド長の代理として、ギルドメンバーである初級冒険者チカの命を救ってくれて本当にありがとう!ギルドの代表として感謝申し上げる」
そう頭を下げてから、立て続けて申し訳ないがと前置きをし、たえの今後について話をはじめました。
詰め所での取り調べにより、犯罪歴が無い事や異世界人である可能性が高い事を確認した事。冒険者チカによる証言と、ギルドカードから読み取った戦闘ログというシステムから、たえがチカと助けた事や外見とは裏腹に戦闘能力が高い事がわかった事を踏まえ、冒険者ギルドとしては、たえに冒険者ギルドに所属してもらい、町の安全のために働いてほしいというお願いをしました。
ギルドに所属するためにかかる金銭は、チカを助けてくれたお礼としてギルドマスターである自分が立て替える事や、冒険者ランキングも下級からではなく、実力に見合った級の冒険者として採用する旨の話をしていたのですが、たえは困った表情しか出来ませんでした。
その表情を見て、何か不満でもあるのか?とむすっとした表情になってしまった副ギルドマスターに対して、ガンとチカは声をそろえて言いました。
「「たえ(さん)はこっちの世界の事わからないんだ(です)よ」」
と。
※2018/8/10 ギルドマスター(ギルド長)を、副ギルドマスターに変更しています。
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