平安少女は異世界の夢を見る

とうちゃんすらいむ

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十五話 朝3時の出会い

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「おはようございます・・・でございますね」

そうぽつりとつぶやきながら隣を見ると、とても楽しそうな顔をしてすやすや寝ている少女がいました。

これが夢であるのなら、覚まして吉仲様を追うべきなのでしょうが、昨日は心の底から楽しいと思えることが多かったため、夢でないことをほっとししまったことに少しだけ罪悪感を感じながら、そっと少女の顔を見るたえ。

昨日はセントウという湯に入り、そのあとずっと部屋の中でお互いの事を話していた事を思い出していました。

お互い自己紹介からはじめ、好きな色や食べ物、今日見た品物で気になったものなど話は尽きず、気が付けば日も暮れ周りが暗くなって行ったので、火を灯す燃料代が勿体ないと早々に布団に入りながらも、たわいもない話を続け、気が付けばお互い寝ていたようです。

ふと、チカの顔を見て、たえは昨日話していたことを思い出しました。

チカの耳が長いのは何故だろう?と思い聞いてみたところ、少し悲しげな声で生い立ちを話してくれたチカ。

チカはエルフという長寿の女性と人間の男の間に生まれたハーフエルフという存在だそうで、この城塞都市に来るまではずっと母親と一緒に森に棲んでいたそうな。

他種族と交わり子をなした母親は、今まで住んでいた森を追われ、住む場所を探す間に父親がモンスターに襲われ亡くなり、母親もチカが幼いころに同じようにモンスターに襲われて亡くなったとの事。

行き場を失いさまよい、気を失ったチカを救ってくれたのが、城塞都市の外回りをしていたガンだったらしい。

その話をした後すぐに寝てしまったチカなので、その後の話は聞けなかったのだが、好いた者同士が交わり結ばれただけの事なのに、何故にそのように悲しいことが起こるのか?どうしてもわからず、心の隅にもやっとした気持ちが残ったたえは、寝ているチカを起こさないように外に出ます。

まだ日が出るか出ないかの薄暗い中、井戸の近くの水場にちょっとした空き地を見つけ、たえはそこで思うように薙刀を振ります。

巴様から頂いた薙刀を持ち、外に出て上から下に、さらに下から上に返し、また振り下ろす。

ぐるんと一周まわしてから遠くに投げ出すように振ったりと、身体を慣らすようにひとつひとつ丁寧に振っていると、時折、ひゅん!という音とぶんっという音の中間である、たえにとって良い音出て思わずにやりとしてしまいました。

これで少しは肩慣らしが出来たのかな?と感じたたえは、気分転換に城塞都市を散歩することにしました。

首にはチカから必ずつけて!としつこいくらい言われていた冒険者カードをさげ、何となく人のいる場所を求めながら、のんびり歩きます。

宿の周りは比較的静かではありましたが、一歩大通りに出ると、まだ日が昇るかどうかの早い時間にも関わらず、いろいろな作物を積んだ荷馬車が目の前を忙しそうに通り過ぎていきました。

そんな荷馬車が、昨日行った露店通りに向かって行くのを見て、あんなに新鮮なものを食べられるのは、普段見られない方々のおかげなのかと、思わずありがたく思い頭を下げるたえの目の前に、荷馬車から大量に野菜が転がり落ちるのが見えたため、衝動的にそれらを拾い集めます。

その様子に気が付いた荷馬車の主が隣にいた者に声をかけ、たえに向かって走ってきました。

「ありがとう!全く気が付かなかったから本当に助かったよ!」
「いえいえ、少し驚きましたが、お役に立てて何よりでございます」

そう言うと、たえは落ちていた野菜を自分の服でぬぐい、駆け寄ってきた男に渡していきます。

服が汚れるからいいよ!という男に、こんなに新鮮でおいしそうな野菜を泥だらけにしておくのは心苦しいので…と言うたえに好感を持った男は、礼がしたいが仕事中なので申し訳ないと何度も頭を下げて馬車に戻りました。

名前と住んでいるところを聞かれたので答えたたえでしたが、こんな活気のある風景が見れ、少しではありましたが、お野菜の良いにおいを感じる事が出来ただけでも良かったと満足。

どうせ目的もない散歩中ですからと、ちょっとした好奇心からか、先ほどの馬車が向かう方向と同じ道へと足を進めてみました。

しばらく歩くと、丁度先ほどの馬車が見え、先ほどの男性たちが荷下ろしをしているのが見えたので近寄って見ると、相手もこちらに気が付き頭を下げてきました。

丁度体を動かしたいと思っていたたえが、何か手伝えることはないか?と言うと、驚いたような顔をした男性。

明らかに他の女性とは違う衣服を着て、何の目的もないまま歩く少女を見て一瞬不審に思った男でしたが、たえが首からぶら下げている冒険者証を見て、何か思うところがあったのか?品物を店舗に置く手伝いを頼みました。

女性だからと軽いものを頼もうと思っていた男性でしたが、その心中を察することなく、どんどん重い荷物を持ち、声を出しながら指示を仰ぐたえを見て、こいつは良い拾い物をしたとばかりにどんどん指示を出していく男性。

時間が経つにつれ、徐々に従業員が増えてきた事から終了の言葉をかけると

「良い汗がかけました、ありがとうございます」
「あっ!ぉぃ!報酬はいらないんかい!・・・って足はええなぁ・・・ぉぃ・・・」

お礼を言って去って行くたえに、冒険者だから仕事が欲しいのだろう?と思っていた男性は面食らってしまいました。

野菜を拾ってくれた礼もしたいし、働いた報酬も払いたい。

何より一緒に仕事していて気持ちよかったから、継続で雇ってもいいかな?とまで思ってしまっている自分を不思議に思いながら、男はとっとと仕事を終わらすために走り出すのでありました。



※平安時代の貴族の朝は早く、だいたい朝の3時頃から起きてたらしいですね。
お経を読んだりして、朝から勉学などに励んでいたらしいのですが、午前中以降は結構だらだらしてたらしいので、そういう働き方もあるんだと妙に思った自分でした。
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