もしも、夏休みの課題が「ドラクエのゲーム感想文」だったら…

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本編

LEVEL35 / チッ、うっせーな!

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 別に自分は悪いことなどしていない。それどころか課題を終えている。

 それも、多くの男子生徒が終わらずに苦しんでいる中、現在までに課題を終了させた「模範生もはんせい」である。


 「だが、断る」
 
 ――と言いたいとこではある。しかし母親の手前、そうはいかないだろう。

 「もしもし、龍崎ですけど」
 「龍崎か、玉野だ」
 「何か用ですか? 」
 「お前、課題が終わったそうじゃないか」

 ちょっと待て。何でそれを知っているのだ。一瞬、勇斗の頭の中に不安がよぎった。

 「いや、佐田のお母さんがそう言ってたからな」
 「佐田が? 」

 一体どういうことなのだ。自分が課題を終わらせたことを何故、学校に報告する必要があるというのだろうか? 


 「それでな、学校を合宿場所に使わせてくれないかという問い合わせがあったんだが……」

 マジかよ! 佐田の奴、余計な事言いやがって。

 いや、待て。確か稔は合宿OKしてくれそうな家を探していると言っていた。だとすれば、広い家である佐田の家は「候補地の一つ」だ。

 おそらく稔は佐田の家にも打診だしんをかけたのだろう。そして、その母親が合宿場所の相談を玉野に持ちかけたとすれば……


 「で、使えるんですか? 」
 「、とは何だ! 」

 いちいち人の言葉のあしを取りやがって。だから生徒から嫌われてんだよ。

 そんな言葉がのどから出かかったが、ここは我慢した方が賢明けんめいだ。


 (チッ、うっせーな! )

 本音はそうだ。しかしここは「大人の対応」ってやつで。

 「すみません……」

 とりあえず謝っておく。どうだ、素直でいい生徒だろう? ああ、龍崎勇人、なんじ聡明そうめいなる模範生徒よ。お前の服従ふくじゅうに教師は心の底からくれないの涙を……流さねぇよ! 


 「それでな、学校の合宿については校長の許可が出ているんだが」

 これは果たしていい報告なんだろうか? それとも悪い報告なんだろうか? 

 確かに、合宿場所はまだ決まっていない。勇斗自身はゲーム感想文を既に書き終えているとはいえ、それを「じゃあうちで合宿をぜひ」なんていう親が実際存在するだろうか? 

 それを考えれば学校という場所は確かに「いい場所」なのかもしれない。


 (でも、玉野が監視役かんしやくってどうなんだよ……)

 せっかく自分自身が仕上げた感想文を頭ごなしに否定され、玉野の「補習ほしゅう授業」みたくなってしまわないだろうか? 

 だとしたら、せっかくの合宿が台無しだ。なぜなら、あのゲーム感想文は「教師が教えられない内容」なのだから。


 「それでお前、どういう内容を書いたんだ? 」
 「どういう内容、といいますと? 」
 「感想文の内容を説明してみろ」

 ちょっと待て。そもそもまだ夏休みは終わっていない。なのに何故、自分だけ感想文を「提出」するようなことをしなければならないのか? 

 「いや、まだ夏休み終わってないですよね? 」
 「その感想文がダメなら合宿は中止だ」
 「どういうことですか! 」

 どうもこうもない。学校の宿泊を「人質ひとじち」に取られてしまっては厄介やっかいだ。もし稔や佐田に、既にこのことが知られていたとしたら……合宿中止は自分の責任だとも言われかねない。


 「簡単な説明だけでいいですか? 」
 「ああ、それでいい」
 
 納得できないが、ここは玉野に従わざるを得ないだろう。

 「つまりドラクエの勇者が俺だとしたら、他の仲間に該当する奴はどんな連中か? って」

 この感想文のきもは、おそらく「自分と勇者の違い」だ。だとすれば、この発想自体は間違っていないはず。現に杉田だって「80点は取れる」と太鼓判を押した内容だ。

 「どんな連中とは? 」
 「例えば野球部だと武器の扱いが上手いんじゃないかって」
 「それはどういうことだ? 」
 「つまり、自分が魔王を倒すならどんな仲間と一緒がいいかって」

 ダメなのだろうか? いや、東大生である杉田が言うのだから間違いないはず。

 それとも、玉野は別の感想文の書き方とやらを要求しているのだろうか。

 「龍崎、それをどこで覚えた? 」
 「どこって、塾ですよ」
 「どこの塾だ? 」
 「学進ゼミナールです」
 「学進ゼミナール? 」

 勇斗は「しまった! 」と思った。

 玉野の尋問に対してつい、事実を言ってしまった。実はこの話、適当に誤魔化ごまかしておいた方がよかったのではないか。

 いや、待てよ。「どこで覚えた? 」ってことは、これはとみていいんじゃないのか……

 「先生、この内容でいいんですか? 」
 「確かに、それで問題はない」
 「じゃあ何で、塾名なんか聞くんですか? 」
 「言ったのはお前だろうが! 」

 いや、ちょっと待て。確かに塾名を言ったのは自分だ。しかし、それはそっちが尋問じんもんみたいな態度だったからじゃないか! 

 「じゃあ、合宿は許可するから。それで何日がいい? 」
 「23日~25日くらいがいいです」
 「何日で感想文は書ける? 」

 
 一体何なんだろう。何でこう、「根掘ねほ葉掘はほり」聞こうとするのだろうか? 

 「1日あれば書けます。でも、2日あった方が「」書けます」

 面白く、というのは咄嗟とっさに思いついた「言い訳」だ。確かに自分は2回の授業。合計4時間で終わった。

 実際の合宿にどのくらいの時間がかかるかは分からないが……

 やはり1日では心もとない。どうせやるなら、それも学校が使えるのであれば2日は欲しい。

 「分かった。じゃあ23日でいいな? 」
 「ちょっと待ってください。まだ参加者も決まってませんし」

 合宿に学校が使えるのはいいとして、問題は参加者だ。

 学校ならば人数には問題ないだろう。だが、問題はスケジュールだ。


 「何人参加できるかわからないんですよ。連絡も来てないし……」

 夏休みの終盤しゅうばん。それも稔が連絡している先であれば、スケジュールが合わないというのは考えにくい。

 とはいえ、学校で合宿。しかも玉野が監視しているということが分かった上で、果たして何人が参加するだろうか? 


 「そうか、じゃあ人数が分かったら連絡してくれ」
 「分かりました。あ、えっと……どこに連絡するんですか? 」
 「学校に連絡してくれ」
 「分かりました」

 とりあえず合宿は出来そうだ。あとは何人、参加者が集まるかだな。
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