もしも、夏休みの課題が「ドラクエのゲーム感想文」だったら…

hotelmo

文字の大きさ
39 / 45
本編

LEVEL36 / お前、結構有名になってるぞ

しおりを挟む
 玉野との電話が終わると、勇斗は受話器を持って1階のリビングへと降りて行った。

 8月の中頃。最近は暑い日が続くこともあり、ここ数日は冷やし中華と素麺そうめん、そしてざる蕎麦そばの「ローテーション」だ。


 そしてざる蕎麦を口にすると、美香は勇斗に対し、不思議そうな表情をする。

 「勇斗、昔は蕎麦嫌いだったよね? 」
 「そうだったっけ? 」
 「年越としこし蕎麦、いつも食べ残してたし……」

 そういえば、勇斗は年越し蕎麦があまり好きではなかった。

 そして、そんな「嫌いな食べ物」を無理矢理食べようと、一緒に出された海老天えびてんを先に食べてしまい。親の分まで欲しいと記憶がある。


 「でも、今はそうじゃないけど」
 「そっかぁ」
 
 勇斗はどうやら大人になり始めたらしい。それは体の成長だけでなく味覚も……美香は息子の成長を感じると少々、感慨かんがい深げであった。

 「そうそう、学校でゲーム感想文の合宿があるんでしょう? 」
 「えっ、何で? 」
 「何でって……佐田君のお母さんから電話があったけど? 」


 何で知ってるんだ? いや、確かに稔には電話をして、そして稔もおそらく佐田には連絡をしただろう。

 でも実際に学校でやることまでは決まっていない。おそらく友達の誰かの家、という内容だったはずだ。

 「何でも勇斗が感想文書けたからって……」
 「何でそうなってんの? 」
 「何でって言われても、ねぇ」

 さっきの玉野からの電話、何となく「おかしい」という感じではあった。

 合宿を学校でやること自体は反対ではない。しかし親や教師の監視の下、補習授業のような感じになってしまうのだけは嫌だ。

 なぜなら自分のゲーム感想文の書き方は学校で教わった内容ではない。もし合宿で、自分ではなく教師が作文を指導するなんてことになれば……せっかくの計画が台無しだ。


 「ごちそうさま」

 昼ご飯を食べ終えた勇斗が2階の部屋に戻ると、そのタイミングを待っていたかのようにスマホが鳴る。相手は稔だ。

 「もしもし、龍崎? 合宿の話だけど」
 「お前、玉野に連絡したのかよ? 」
 「連絡って何? 」
 「さっき玉野から電話があったんだよ」

 そう、稔は合宿の参加者と合宿場所を探すと言っていた。しかし何故か玉野に計画がれ、そしていつの間にが合宿場所が学校になっているではないか。

 「佐田の母ちゃんから連絡があったって言うし」
 「そう、ソレ。俺も佐田からさっき聞いたよ」

 稔の話によれば、佐田の母親が保護者の間で合宿の話をした結果、クラス中にその話が広まっているらしい。そして、保護者の間で連絡を取り合った結果、学校を合宿先に使ってはどうかという話になっているそうだ。


 「お前が感想文終わったって話、結構有名になってるぞ」
 「やっぱ、他の連中も終わってねーの? 」
 「終わってねーよ」

 自分を除き、誰も感想文が終わっていない。当然だが想定そうてい範囲内はんいないだ。

 そして稔の話によれば、感想文を書き終えたという自分が何故か「親や教師の間で」有名人になっているらしい。


 「それが玉野の奴、かなりたたかれてるらしいぜ」
 「叩かれてる? 」
 「ゲーム感想文なんて変な課題出しやがって! って」

 ゲーム感想文を出された生徒達が「課題をやっている」と称してゲームに熱中する。そして他の勉強を全くやらない……

 それどころか課題を免罪符めんざいふにして長時間ゲームをやっているため、他の兄弟に対してゲームをやり過ぎないよう指導することが出来ない。

 あるいは指導をすれば親子喧嘩や兄弟喧嘩になるということで、大いに問題になっているのだそうだ。


 「なるほどな~言われてみれば確かに」

 勇斗は兄弟がいない、即ち「一人っ子」である。だから自分がゲームをいくらやっても怒るのは親だけで、兄弟喧嘩ということはない。

 しかし、他の家はそうではないわけだ。

 「弟がいる家とか、マジでヤバいよな」
 「そうそう。で、学校に苦情が入っているらしいよ」
 「マジかよ? 」
 「マジだって」

 そう言われると、先程の玉野の態度。即ち自分がどういう感想文を書いたかと言う質問にも辻褄つじつまが合う。
 
 つまり自分が「ちゃんと書けてる」かどうかが、ゲーム感想文の正当性を判断する「試金石しきんせき」になる。言い換えれば自分の作文内容によって「玉野の立場がどうなるか」ということに関わってくるわけだ。

 
 「でさ~感想文の内容を言ってみろとかいうし」
 「マジで? で、言ったの? 」
 「言ったよ。そうしないと合宿ダメとか言いやがんの」
 「最悪! 何だよそれ」

 勇斗はてっきり、玉野が親切で「合宿場所を提供」したのだと思っていた。しかし実際はそうじゃない。逆に向こうが「がけっぷちに追い込まれている」というわけだ。

 と、なれば……合宿では自分の意見が尊重そんちょうされるのではないだろうか? 


 「それでさ、何人来るかって聞かれたんだけど? 」

 勇斗は稔に尋ねた。

 そう、ここからが本題だ、自分と稔。そして佐田に加え、あと何人が参加するかだ。

 部活動があると参加しない可能性がある。それと、阪口塾のゲーム感想文講座に参加している。あるいは既に塾生となっている連中も、おそらく参加はしないだろう。

 そして、既に読書感想文が終わっている生徒であれば、そもそも合宿に参加する理由が存在しない。


 「俺と龍崎、あと佐田だろ。それと当間に村中むらなか大橋おおはし。あと龍造寺りゅうぞうじ。今のところ7人だな」
 
 7人。これが多いのか少ないのかは分からない。しかしクラスの男子が20人だから、約3人に1人が参加するといえば多い方なのかもしれない。


 しかし勇斗が気になったのは、参加人数よりもむしろ参加者の面子めんつであった。
 
 「龍造寺? アイツ終わってないの? 」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...